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2000.7.9
 
 


シンガポールはIT先進国…

 シンガポールの経済的飛躍の話しを始めると、話を聞こうともしない人が多い。その理由を尋ねると、政治形態、都市国家、華人文化など、様々な特殊性を並べたて、検討の意味無しと言う。勿論、日本との違いは大きい。それなら、日本との違いは決して小さいとは思えない、米国について、じっくり検討するのは何故なのかと聞きたくなる。
 「先進国の教訓」といえば、欧米の動きを調べるという習慣が抜けないのだ。

 「シンガポールはIT先進国」とは夢にも思わないのであろう。

 もちろん、現実のIT産業状況から見れば、先頭を走っているのは米国だ。違和感を感じる人もおられよう。

 しかし、政治の観点では明らかに先頭を走ってきた。
 シンガポールがIT2000-インテリジェント・アイランド構想を発表したのは1991年のことだ。これは、クリントン・ゴア政権が本格的に動く相当前のことである。
 光と無線で広帯域情報インフラを整備し、この基盤をもとに経済発展を目指すと、明確に宣言した。国家レベルでインフラを整備する世界初の国になるという野心的なものだった。そして、その路線に忠実に政策を進めて来た。

 といって、シンガポール政府は、ケーブル網を施設することを優先してきた訳ではない。NCBが情報技術をどのように取り入れていくかのマスタープランを作成したのが、85年のことだ。これに沿って、政府機関にコンピュータが入ると同時に、民間が導入しやすいようなサポートの仕組みを整備していったのである。これが、現在の産業基盤形成に繋がったといえよう。
 シンガポール現地で活動するビジネスマンに聞けばわかるが、零細企業も、コンピュータを利用しているという。コンピュータを導入していない企業は少ないという印象を持つようだ。コンピュータ・ネットワークはすでに日常のビジネスのなかに組み込まれている。

 この他、規制撤廃についても、政府としては当然の手を打ってきた。

 といったことをいくら並べても、画期的なことは見つからないかもしれない。当然と思えそうなことを、早くから着々と進めてきたという印象が強い。

 そのなかで、秀逸なのは、トップの提起といえよう。

 90年に新首相が就任した際の方針提起は以下の3段階に分けた歴史観を披瀝したものだったという。
 ・過去については、発展途上国としての急速な経済成長と総括
 ・21世紀までに先進国の仲間入り
 ・その後は技術・情報・知識で戦う
 そして、先進国間の熾烈な競争に勝たなければならないと、強調したという。

 ちなみに、米ドルでの一人あたりGDP(PPP:購買力平価ベース)は、日本が$23,480、米国が$31,469、シンガポールは$27,740である。シンガポールの平均寿命は77歳であり、日本の80歳とそう変わらない。(データはAsianweek, March 17, 2000)シンガポールは計画通り先進国の仲間入りを果たしている。


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