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2000.7.22
 
 


次世代インターネットと政争…

  インターネットが、これからどのようなネットワークになって、どのような問題を抱えそうのかについて語る記事を余り目にしない。米国でどのようにインターネット網が形成されたという過去について、多くのジャーナリストが語っているのと好対照だ。
 過去の歴史を学べばそれなりの教訓が得られるだろうが、将来について、目を開くことのほうが重要ではないか。

 米国が進めている、次世代ネットワーク「Internet 2」基幹網は2つある。

 1つは、NSFの「vBNS(very high-speed Backbone Network Service)」である。これは、基本的に国内のスパコンを利用するための研究機関用のネットワークといえよう。といっても、トラフィック余剰があるので、オープンに利用させる訳だ。
 もう1つは、Qwestが大陸横断鉄道沿い敷設した光ケーブル(SONET)を利用するもの。(インディアナ大学を本拠地とする「Abilene」)当然ながら、私企業だから、商用発想の設備投資が行われる。IP-over-SONETのルータ網により、既存の電話網よりコストを1桁下げる方向にいく。NSFと協調することで、接続点を確保し、インターネット基盤事業を進める算段といえよう。

 この2本とアジア、欧州をどう繋げるかは、当然ながら米国側の意志次第である。このネットワークは米国の財産なのだから、当然と考える人も多いだろう。しかし、本来は米国に直接関係無い、アジア・欧州間の接続も米国のコントロール下にある。といっても、アジアと欧州の通信を、米国の幹線経由にする訳ではない。米国内が混雑するから、接続ポイントをシカゴにおいたのだ。
 このポイントが有名なSTARTAPだ。勿論、米国内の他の、NASAやDoDのネットワークとも接続されている。
 海外からも、欧州EUNET、シンガポールSingAREN、日本が主導するAPAN等が接続する。
 まさに、世界の臍を米国が管理している。

 こうなると、米国外で、新しくネットワークを作ろうというプロジェクトは、STARTAP接続が必要条件となる。STARTAPが「親」であり、ここに直接接続するのが「子」、その「子」がつくるネットワークに繋がるのが「孫」という階層構造ができてしまった。
 通信の基幹部分が「親」に握られてしまったのである。今の構造上、「子」たる、日本のネットワークの自立性は失われるといえよう。
 しかも、アジア各国が日本と協調してネットワークを作り上げる意義は、大きなものではない。他のネットワークでも問題ない。ということは、日本のネットワークが孤立する可能性はゼロではない。

 政争に、ネットワーク資源が用いられない保証はない。次世代インターネット網が確立してしまうと、STARTAPを使えば、世界を牛耳ることはいとも簡単にできる。歴史の教訓を生かせば、「武器」があれば、使おうと考える者は何時か必ず登場する。「武器」にできないような施策を早めに打つことが、政治家のつとめではなかろうか。


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