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2002.11.3
 
 


輸入野菜産業の革新的役割…

 2001年〜2002年は、輸入野菜産業の激動期だった。輸入量急増で大騒ぎし、その後、農薬の安全性問題でおおいにもめた。日本の政治勢力は、輸入野菜産業の基盤を崩す動きを試みたが、輸入野菜の地位は揺らがなかった。
[政治家は種苗企業に直接圧力をかけた。「日本の種子が無ければ、外国での日本向け野菜は出来ないと聞いている。日本のタネの流出問題は、しっかり調査補足すべき深刻な問題だ。」(http://www.jimin.jp/jimin/discussion/01_3/130330.html)]

 政治勢力が意気軒昂なのに比し、産業界のリーダーはこの問題には関心が薄かった。貿易規制とその対抗措置という悪循環発生を恐れ、自由貿易擁護スローガンを打ち出す以外に、目だった動きはない。---これでよいのだろうか。

 輸入野菜産業といえば、安い中国野菜を買い付け、運んでくるだけに映る。しかし、グローバル化が可能で、知恵で付加価値を産む、新産業の芽生えだった可能性もある。もしそうなら、競争力強化のために支援すべき産業だった可能性が高い。

 但し、知恵で付加価値を産むとはいうものの、産業構造自体は単純だ。
 種は日本企業が提供し、栽培は日本側が指導する。収穫物の選別・パッケージングも日本の指示仕様。もちろん、輸出入は日本の商社扱いだ。
 中国が提供しているのは、ほぼ労働力と土地だけといってよい。日本の「知恵」を活かした、新しいビジネスの仕組みだ。(今後、台湾や華人資本との熾烈な競争に突入する可能性が高い。)
 単純な仕組みだが、これが革新的な動きを伴う。

 例えば、ネギを例にとろう。小売価格は市況で変わるが、国内産がキロ400円位、中国産なら半額の200円といったところだ。
 それでは、出荷価格はどうなっているだろう。国内産は値が通れば200円を切る程度。これに対応する中国産のCIF価額は100円を切る。(大阪丸促青果といった商社が輸入)ここでの両者の価額差は100円以下だ。ところが、小売での差額は200円にもなる。両者の差100円は、「農業にぶるさがる産業」にかかる経費といえよう。
 輸入野菜産業はこの100円をカットしたのである。中国でも、安いとはいえ農家収入は20円近くになる。国内農家の手取りはせいぜいが100円だから、この差額を越える。
 農業労働の賃金差は確かに大きいが、「農業にぶるさがる産業」のコストの方が大きいことがわかる。「農業にぶるさがる産業」がもたらす不経済性は目に余る。輸入野菜産業は、ここに手を加えたのである。

 労働力と土地提供だけの産業は、先進国では衰退が必然である。
 一方、農業といっても、知恵で収益をかせげるなら、成長産業に転身できる可能性がある。ソフト勝負だから、勝てば、当然高収益化する。
 薔薇の生花は典型だ。航空輸入されたオランダ産が日本市場で競争している。労賃が日本より高くても、1本30円で戦っている。日本の農家が頑張っても、現在の仕組みでは歯が立つまい。

 農業も、知恵で戦う時代が到来したのである。輸入野菜産業はそうした動きの尖兵となる可能性がある。


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