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2002.11.19
 
 


設備投資減税は改革に繋がるか?…

 2002年6月、経済財政諮問会議と政府税制調査会が税制改革方針を打ち出した。予想された通り、すぐに百家争鳴状況に突入した。

 マスコミは、設備投資減税の実施固まる、とのトーンで報道。同時に、財務省は大きな効果は期待薄と見ている、との観測記事も流された。
 要するに、規模や対象を絞り込んだ設備投資減税しかできまい、との予測である。

 この動きに対するエコノミストの態度は様々だが、ネガティブな意見が多い。1998年の総合経済対策の際に導入された「中小企業投資促進税制」の効果を見れば、当然の態度ともいえる。  しかし、本音は、「一部を対象とする減税反対」だ。全企業に対する一律の恩恵を求めているのである。典型的な現状維持派の考え方といえよう。
 ところが、こうした人達は、絞り込んだ投資減税は産業構造変化を歪めかねない、と主張する。そのため、自由市場を信奉する改革派と思ってしまう。

 こうした混乱が生じる限り、改革派のベクトルはいつまでも揃わない。これでは、力を発揮するどころではない。まずは、この混乱解消から始めるべきだろう。

 といっても、解決策は簡単だ。改革派が、強靭な企業への支援策構築に徹すればよい。日本の将来を託せそうな企業に経済の牽引車の役割を担ってもらうのだ。
 この観点を明確にすれば、守旧派を巻き込んだ無意味な論議を避けることができよう。

 金融政策論議では、効果がすぐに現われよう。
 強い企業のキャッシュフローは潤沢だ。新興企業でも資金調達は難しくない。従って、強い企業にとっては、金利水準など末梢的な問題に過ぎない。投資は市場や技術のタイミングを図って、戦略的に決めるものである。政府の金融政策に促されて動く訳ではない。
 金融緩和で助かるのは、官製産業と借金漬けの企業である。金融緩和の議論より、強者の飛躍支援策を考えた方がましなのは明らかだ。

 大量の不良債権を抱える企業への対応策の見方も変わろう。
 没落必至の産業や腐敗した企業を助けるなど言語道断だが、衰退産業や問題企業の市場からの退出促進政策を改革と考えるのもおかしな風潮だ。退出促進策とは、実は、生き残り企業を選ぶ政策でしかない。一見、改革策に見えるが、実態は、守旧派による弱体企業の生き残り支援策に他ならない。
 弱体企業に選別的に生き残りチャンスを与えるのは、強者にとっては迷惑な話しである。弱者を完全に退出させるか、一部を自社に取り込んで発展を図るかは、強者が自社の戦略に応じて決めるべきものだ。
 設備過剰産業での弱者救済政策は、強者への弱体化強要と同義だ。強者の利益水準を下げ、戦略的自由度を減らし、飛躍のチャンスを奪う悪政策である。

 TOPIXが850を切ったということは、日本企業には成長余地無しとの判断が下されたことに他ならない。経済の血流たる証券市場が縮小一途では、新産業勃興など夢物語である。ここまできたら、抜本的な改革無しに産業再生など無理である。本気で、強い企業の創出・支援に取り組まなければ、現在の優等生までも弱体化しかねない。

 11月に入り、ようやく設備投資減税案が見えてきた。「実証第1号機税制」と呼ぶらしい。(自前技術の新製品か、生産性大幅向上が可能となる総額10億円以上の設備投資に対して、投資年に全額償却可能)(http://www.nikkei.co.jp/sp1/nt5/20021117e000y55217.html)

 この動きが、強者創出政策への転換ならよいのだが。


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