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2003.3.14
 
 


恒例となった株式市場対策…

 2003年3月に入り、TOPIXが700台で推移するようになった。ここまで下落して、投資家が逃亡しないのが不思議な位だ。
 毎年3月に近くなると、「日本経済は大丈夫」と訳のわからぬ主張を展開し、その場しのぎの株価対策を続けてきたのだから、来るべきものが来ただけといえよう。

 驚いたことに、ここに至っても、反省ゼロ。今年も、その場しのぎで切りぬけるつもりらしい。
 株式市場を見れば、「骨太の方針」が効果を生むと考える人がいないことは明らかだ。政策のメリットを市場が理解するのには遅れがある、というレベルを越えて久しいが、なんの対応もとらない。常軌を逸している。
 「骨太の方針」にとらわれず、時間がかかっても、グランドデザインを練らない限り、日本経済復活はあり得ないのは明らかだろう。

 残念ながら、そのような旗振りがさっぱり登場しない。耳にするのは、まともな提言とは思えない批判や、出鱈目な反「骨太の方針」論ばかりだ。
 これでは、基本路線を貫こうとする現政権の方が良質だ。

 といっても、良質とは相対評価であり、絶対評価なら悪質そのものだ。
 2003年3月13日、今まで隠れていた本質が、ついに露になった。金融庁の施策を読めば、何を考えているかすぐにわかる。
 しかも驚いたことに、金融相によれば、この施策は「株価対策ではない」そうだ。(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030313-00000414-reu-bus_all)
 ・・・それでは一体何なのだろう。

 今回の金融庁の緊急施策の圧巻は、自社株購入規制の大幅緩和を図る特例措置だ。政府「指導」による自社株購入で株価低下を防ぐ目論みらしい。こんな場当たり的な施策しか考え付かないレベルにまで落ちたのである。(http://www.fsa.go.jp/news/newsj/14/sonota/f-20030313-2.html#01)
 株式市場全体が世界的に沈没している時、自社株を市場から引き上げたところで、株価へのインパクトは限定的だ。自社株購入とは、現時点では投資余地無し、とも言えるから、意味ある施策ではない。
 にもかかわらず自社株購入を始めれば、政府と一体化した企業か、将来を考えない企業、と見なされる。
 従って、優良企業が次々と自社株購入に走れば、株価上昇どころか、株式市場からの逃避が発生してもおかしくない。

 ここまで株価が下がれば、自社株購入でなく、企業買収に動くのが企業経営の鉄則である。手持ちキャッシュがあるなら、今は、まさに「買い時」だ。
 マネジメント力が弱体で不調な企業/事業を買収すれば、自社の力で立て直したり、シナジー効果で自社事業の一層の成長を図ることができる。これは、千載一隅の飛躍のチャンスだ。

 ところが、このようには進まない。これこそが、日本の問題なのだ。
 自発的に産業構造を変えるダイナミックな動きはタブーなのである。


 それにしても、今年の3月対策の中身は驚くほど薄い。(http://www.fsa.go.jp/news/newsj/14/sonota/f-20030313-1.pdf)
 風説流布や相場操縦を阻止する姿勢と、空売り規制の徹底化が中心である。これだけで、効果があがる、と考えているのだろうか。昨年と同じく、海外ヘッジファンドの動きを止めれば、株価反撥が生まれると、期待しているのだろう。
 確かに、急激な変化の抑止効果はある。しかし、周囲の状況は、1年前とは全く違う。
 これだけ株価が下降すれば、相場操縦が何時発生してもおかしくない。生き残りのための「なんでもあり」派の発生は阻止できない。これは、「貸し株自粛」や、健全な取引維持を叫んで解決できる問題ではない。

 そもそも、相場操縦が簡単にできるのは、企業が「粉飾」し易い状況を放置し続けてきたからだ。ヘッジファンドビジネスとは、市場の矛盾をついて儲ける商売であり、問題がある限り、このような動きに対抗しても無駄である。
 日本市場は矛盾だらけである。存立困難と思われる企業がいつまでも市場に残っているし、どうして黒字なのか理解できない企業もある。このような市場を健全と考える人がいるだろうか。
 大メーカーの損益計算書でさえ、実態を反映しているか疑問なものがある。もしも、売上が水増しされていれば、資金繰りに窮しかねないのでは、と見ている人もいるのである。
 これで、健全な取引が成立する筈がない。

 株価下落を本当に止めたいなら、売り手が誰で、どのような状況か、考えることが出発点だ。
 現に、株を大量に売らざるを得ない企業が存在していることを皆が知っている。強烈な売り圧力がある。この状態で、空売り規制で株価が反転するとは考えにくい。
 企業なら、この状況に乗じた利益捻出策を考える。従って、市場監視をいくら強化したところで、株価上昇に繋がる見込みは薄い。
 その観点では、確かに「株価対策ではない」。

 竹中路線が始まったが、金融庁の実態はほとんど変わっていないのである。


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