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2003.3.26
 
 


構造改革特区推進派の正体…

 構造改革特区がどうやら走り始めた。2003年年初には全体像が決まり、3月に入り具体的な動きも始まった。 (http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kouzou2/kettei/030124kihon.html)

 この施策を誉めそやす人達は、この構想が一点突破全面型の展開に繋がる、と語っていた。確かに、手のつけようもなかった、医療/学校/農業といった分野の規制緩和/撤廃が、限定地域であっても、始めることができれば大きな成果だろう。そうなれば、特区を突破口に、規制緩和/撤廃が全国に広がる、との「夢」にも現実感がでてくる。
 しかし、政府が関与し始めた途端、こうした説明が全く意味を持たないことが明らかになった。
 小泉政権は、構造改革特区を、政権支持率向上に寄与できるパフォーマンスと位置付けているのだ。名目だけの規制緩和の特区を作り、「とりあえず大きな一歩」と喧伝できれば、政治的大成功という訳だ。

 総合規制改革会議の改革派メンバーが規制撤廃を目指していることを否定する人はいないが、こうした状況を見る限り、改革はほとんど進んでいないと言わざるをえまい。
 このような組織を作っても、成果が得られないことが、はっきりしたといえよう。

 と言うより、実務家が予測した通りになっただけ、とも言える。もともと、現場で苦闘している人達にとっては、構造改革特区への期待感はゼロに近い。
 中小企業の経営者にたずねればわかるが、ほとんどの人は、政府が規制緩和に動くとは思っていない。それは、現政権の問題というより、政治家全体の問題だ。どの政党も、総論賛成、各論反対だから、本気で規制緩和に動くことはあるまい、との見方である。

 実際、2003年3月に発表された商工中金の調査結果を見ると、中小企業の冷徹な見方がはっきりわかる。
 「国内産業の空洞化対策として重要だと思われること」のなかで、TLO、構造改革特区、産業クラスター育成、知的所有権・知的財産権保護は、ほとんど注目されていない。
 政府が、競争力向上の目玉として打ち出してた施策への期待感は極めて低い。(「中小製造業の海外進出動向等に関する調査」http://www.shokochukin.go.jp/pdf/cb03other02.pdf)

 厳しい競争にさらされながら、苦闘する中小企業から見れば、こうした目玉施策はマスコミ受け狙いに映る。急遽始めた物真似施策が効果をあげるとは思えないのは当然だ。
 誰が考えても、効果が期待できる施策とは、法人税率引下げ、規制緩和/撤廃、新産業育成支援、円滑な資金調達である。ところが、政府は、どれについても、抜本的な対応を避け続けている。というより、このような声には応えない、との方針を堅持していると言った方が正確だ。

 一般に、抜本的な対応ができない時、少しでもプラスになりそうな部分から動き始めると事態は悪化する。改革は早まるどころか、遅れる。改革したいなら、できない理由を考え、その原因を取り除くしかない。大変だが、それが一番の早道である。
 従って、土台から揺さぶるような施策と、サラミ戦術的な反改革派崩しを、同時に進めるのが普通である。今のところ、こうした動きは微々たるものだ。

 ということは、改革派リーダーが考えている「改革」は、抜本的な変革とは異なるものと見て間違いない。
 おそらく、既成勢力のコントロール下での「改革」を目指すのである。
 だからこそ、「特区」にこだわる。・・・既成勢力を温存しながら改革に成功した、独裁的な社会主義国の政策を真似たいのだろう。


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