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2003.3.9
 
 


イラク戦での同床異夢(2)…

 米国が、OPEC諸国を、「国際コモディティ商品」提供姿勢に転換させる戦略を採用したとしても、驚きではない。
 1980年代に、米国はソ連邦の国内体制を一変させることに成功している。中東地域の国家体制変革を21世紀の課題と考えることは、極く自然といえる。

 問題は、米国がこうした動きを始めた場合、日本が、全体の構図のなかで、どのようなポジションを占めるかだ。

 過去を振り返れば、日本は、米ソの冷戦体制構造のお蔭で恩恵を受けてきた。少額の防衛費と米国市場の全面開放だけでも、類稀なるメリットだったといえる。
 一方、中東地域の国家体制変革は、日本にメリットをもたらすだろうか。

 体制変革が成功した際に、混乱が予想されるのが、原油調達の仕組みである。
 日本だけは、石油が「国際コモディティ商品」になっても、原油の大半を長期供給契約で調達してきたからだ。
 ミクロで眺めれば、長期契約が安定調達を実現しているに見える。しかし、市場全体で見れば、これは例外的な動きでしかない。一般に、このような取引は、市場に歪みを与えるから、健全性を損なう動きともいえる。
 しかも、契約当事国の政権は、独裁暴政だったり、腐敗政権かもしれない。そうなると、長期契約取引は、中東地域の国家体制変革とは逆行する動きにも映りかねない。

 従って、日本にとっては、リスクを張った体制変革より、現状体制維持の方がメリットが大きいのである。

 米国はリスクを張れば、それだけのメリットがある。石油産業の上流側に市場原理が導入されれば、ビジネスチャンスが大きく膨らむからだ。
 ところが、この分野では、日本にはチャンスが巡ってこない。市場原理が貫徹されれば、競争力がシェアに直接反映するからだ。(石油探鉱ビジネスには、莫大なリスク資本の調達と、高度な技術と蓄積された知識の活用が不可欠だが、後発たる日本企業の競争力は低い。既存油井の活性化技術でも、差は大きい。)

 どう考えても、中東地域の国家体制変革は、日本にとってはプラスには働かない。米国とは利害が異なるのである。

 イラク戦争では、日米の利害は一致しない。


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