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2003.5.25
 
 


団塊の世代の危機感とは…

 2003年5月24日、「団塊世代、将来に強い危機感」という報道が流れた。(http://www.jiji.com/cgi-bin/content.cgi?content=030524143210X465&genre=eco)

 この世代は、どちらかといえば、一番危機感が薄い層と考えていたので驚いた。このニュースは財政制度等審議会の国民アンケート調査結果に基づいたものだが、ミスリーディングなタイトルである。
 50〜59才の考え方は他の年代と相当違うのは間違いないが、調査結果を見渡しても、この年代に危機感ありとの十分な証拠は見当たらない。そもそも、危機感などという用語は調査には無いのである。(http://www.mof.go.jp/singikai/zaiseseido/goiken15/kekka2.htm)
 
年齢 不安を感じない人の
割合
消費抑制者数の
未対応者数に対する倍率
20才代以下 4.1% 1.07
30才代 2.9% 1.07
40才代 6.1% 0.92
50才代 2.6% 2.06
60才代以上 5.0% 1.11

 この報道の根拠となったデータを見てみよう。

 財政の現状を見て、「不安を感じない」人の割合は年代で変わっているだろうか。(この調査では、「不安を感じる」人とは、「不安を感じない」人以外に該当する。)
 表に示すように、ほとんど変わらない。50才代は2.6%と、確かに一番少ないが、30才代が2.9%である。誤差範囲に近い。

 しかし、確かに現実に50才代だけが突出している点がある。不安に対応して行動した人の割合が跳び抜けているのだ。
 「消費を減らしている(貯蓄を増やしている)」人と、「特になにもしていない」人は他の世代で見ると、ほぼ半々の割合だが、50才代だけは、消費抑制/貯蓄に動いている人が圧倒的な多数派だ。
 このため、団塊世代に「将来に強い危機感」と見なしたのだ。

 しかし、この数字を、危機感の現われと解釈してよいのだろうか。危機感はより若い世代にもあるが、貯蓄に励むのはもう少し先と考えている人が多いというだけのことと見ることもできる。若年層に、老後に備えた貯蓄に励む人の割合が低いのは極く自然な現象である。収入が少ない層が消費抑制したところで、なんの対処策にならないからだ。それでも、もしかしたら、若年層の貯蓄志向が以前より大幅に増えているかもしれないのである。若年層は団塊の世代より、危機感が薄いとの証拠など無い。対処の仕方が、消費抑制や貯蓄でないだけの話しかもしれないのである。
 
年齢 高齢者福祉給付
水準向上要求者
高齢者福祉給付
水準維持要求者
20才代以下 3.1% 32.3%
30才代 1.5% 49.5%
40才代 4.9% 54.7%
50才代 18.2% 63.6%
60才代以上 0.0% 35.0%

 何故、このような指摘をするかというと、この調査結果から、50才代は身勝手さが目立つ、とも読めるからだ。
 どちらが正しいかは、このデータだけでは結論は出せないのである。

 将来の給付水準問題に対する質問に対する回答データは世代間の態度の違いをより鮮明に示している。50才代を除くと、どの世代も、若い世代の負担が増える動きに対しては冷淡である。すでに恩恵を被っている老人達にいたっては、若い世代の負担増になる位なら給付を減らしてもよいという態度を示している。
 これに対して、給付増を望んだり、若い世代の負担が増えてもかまわない、という態度を示したのが、50才代だ。
 この数字を見れば、この世代に将来の危機感が広がっているとは言い難い。他の世代がどうなろうと、自分の生活レベルを守りたいだけの人達だ、とも言えるのである。

 同じ世代でも、内部格差が広がっているから、十分注意してデータを解釈しないと、状況判断を間違いかねない。


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