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2003.6.6
 
 


解決の目処がつかない農業問題…

 世界貿易発展の最大の阻害要因は農業問題だ。2003年3月に開催されたWTO農業委員会特別会合では「各国の立場の隔たりは大きく、現段階において、これだけ離れた立場から何らかの進展を見ることはできない」との認識だけで終わった。合意できないことを合意して、満足した国ばかりである。もちろん、日本政府もそのなかに含まれる。(http://www.maff.go.jp/www/press/cont/20030401press_4.html)

 もっとも、これは日本だけの姿勢ではなく、先進国共通である。米国にしても、農民への補助金ばら撒きを止める気など全くない。

 今のところ、農業委員会での議論の中心は関税引下げだが、これだけでも動きようがないのに、さらなる難題が登場しそうだ。GMO規制問題である。GMO規制の議論が始まると、もしかすると、収拾がつかなくなるかもしれない。

 バイオテク企業は20世紀末に巨大な研究開発投資を行った。そして、米国農民はこの成果を享受すべく、GMO植付け面積を増やした。すでに耕地面積は1億エーカーレベルだ。ところが、欧州は1998年にGMO規制を始めたのである。米国から欧州へのコーン輸出が、この規制によりほとんど消滅してしまった。1997年に6,000万トンを越えていたのだから、とてつもない衝撃である。
 この状態がずっと続くなら、輸出依存型の米国農業にとっては深刻な問題になる。

 それ以上に大変なのは、ブッシュ政権だ。今のままなら、大統領選で、ファーム・ベルト地帯の有権者の支持を得られない可能性がある。(http://www.nytimes.com/2003/05/29/business/29BIOT.html)
 もし、農民票をあてにするなら、ブッシュ政権は、欧州との蜜月状態を続ける訳にはいかなくなる。
 ブッシュ大統領は、エビアン・サミットでこの問題を取り上げると言われていたが、とりあえずは穏便にすませたようだ。しかし、早晩、WTOにこの問題が回ってくるのは間違いない。

 といって、動いたところで、欧州の怒りを呼ぶだけで、成果が得られる見込みは薄い。そうなると、米国政府は、新たな競争力強化策を打ち出すしかあるまい。

 その一環と思われるプロジェクトが、2003年5月30日、米国農務省から発表された。
 NASAのリモート・センシング技術の農業分野への活用プログラムを開始するという。農地と農作物の生育状況が簡単に読める仕組みを目指すのである。成功すれば、農事暦による作業から、農作物の状態に応じた農作業に変わり、防除や収穫作業の質も高まる。(http://www.usda.gov/news/releases/2003/05/0175.htm)
 要するに、ハイテク化で農業の生産性向上を図る訳だ。

 米国農業は生き残りに必死であるから、本気になってハイテクを活用すれば、競争力が飛躍的に向上するかもしれない。

 ところで、日本政府は、生産性の低い農業をどうするつもりなのだろうか。


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