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2003.7.19
 
 


朝鮮戦争は不可避か…

 米国・北朝鮮間の戦争は避けられないかもしれない。・・・2003年7月15日付Washington Postに掲載された記事は衝撃的である。
 William Perry元国防長官の見方が、2003年当初と大きく変わったという。現在の状態なら、年末までに戦争突入もあり得る、とのことだ。
 (http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/articles/A56019-2003Jul14.html)

 米国政府の動きを見ていると、この感覚は正しそうだ。

 U.S. News & World Report7月21日号によれば、Rumsfeld長官の指示で、2ヶ月をかけて新たな対北軍事作戦「OP 50-30」が策定されたそうだ。驚くのは、作戦のコンセプトである。北朝鮮の不足資源の枯渇を促したり、緊張によって軍部内の混乱を誘起させる行動を、米軍司令官が自発的に進める計画だ。米軍の挑発行為とも見なされかねない、ハイリスクな動きが始まる。
 (http://www.usnews.com/usnews/issue/030721/usnews/21korea.htm)

 実際、7月に入ってから、急速に緊張が高まっている。

 7月17日には、非武装地帯内で北朝鮮軍監視所から韓国側監視所に向け発砲がなされたという。
 (http://edition.cnn.com/2003/WORLD/asiapcf/east/07/16/koreas.firing/index.html)

 7月12日にも、CNNは、Yongbyonの施設の排ガスから、再処理で発生するクリプトン85が検出された、との政府高官発言を引用している。プルトニウムが抽出されれば、兵器は小型化できるから、米国が恐れるテロリストへの核兵器譲渡可能性が現実化することになる。
 (http://edition.cnn.com/2003/WORLD/asiapcf/east/07/12/nk.nuclear/index.html)

 しかも、NYTimesの7月1日の報道によれば、北朝鮮がYoungdoktong地区にミサイル搭載可能な小型核弾頭の実験場を持っていることを、CIAが衛星で確認したという。
 (http://query.nytimes.com/gst/abstract.html?res=F00E10F63E5E0C728CDDAE0894DB404482)

 この状態は、クリントン政権時代なら、「危険ライン」を超えている。米軍が、核関連施設の破壊行動を始めてもおかしくないレベルだ。・・・実際、1994年には、対北軍事作戦「OP 50-27」開始直前だったとされている。
 (http://edition.cnn.com/2003/WORLD/asiapcf/east/05/12/nkorea.us/index.html)
 カーター元大統領の外交が奏効し、クリントン政権の妥協で戦争勃発は回避されたが、今度はそのようなシナリオが成立しそうにない。「OP 50-27」が何時発動されても、おかしくないのである。

 もともと、1994年10月の米朝合意は、玉虫色だ。平和を目指した動きと言われているが、問題先送り合意に過ぎない。
 そもそもエネルギー不足解消に軽水炉建設が持ち出されること自体が、奇妙な理屈だ。国内調達可能なウランを使えるからといって、建設に長期間を要する発電設備を設置する論理には無理がある。しかも、黒鉛減速炉は、核兵器大量製造に一番向いているのだ。米国が稼動を許す筈が無い。目論みが異なる両者の、「外交ショー」が行われただけである。

 米朝合意は、米国政府の金政権容認ともいえるから、軍事政権基盤強化が実現できた訳だ。北朝鮮にとっては、大成功だった、といえよう。
 一方、クリントン政権が合意に応じた理由も自明だ。稼動させるつもりがない軽水炉を建設し、時間稼ぎを図ったのである。脅迫に屈したというより、軽水炉完成前に、ソ連同様に自壊するか、中国型変身を始める、と考えたに過ぎない。

 ところが、米国の予想は外れた。経済不振は予想通りだったが、軍事独裁政権は倒れるどころか、一層、挑発を繰り返している。ソ連崩壊モデルは全く通用しなかった訳だ。
 ということは、対北軍事作戦「OP 50-30」も、読み違いに終わる可能性がある、と言えそうだ。


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