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2003.7.24
 
 


ベビーブーマー政治…

 民主党クリントンから、共和党ブッシュに変わって、米国は大きく変わったという人が多いが、ビジネス戦略策定の実務家から見れば、その政策の本質はたいしてかわらない。

 どちらも、コア顧客はベビーブーマーである。両政権とも、この顧客の満足度を最高に高める経済繁栄施策を打ち出しているにすぎないといえそうだ。

 資本主義経済である以上、経済繁栄とは、換言すればバブル創出でもある。バブルが破裂したら大変だが、繁栄を目指すなら、バブルは必要なのである。
 両政権とも、顧客満足度を高めるためのバブルを考案し、そのための仕掛を揃えることに注力してきたのだ。

 この発想は、日本とは根本的に違う。日本ではバブルは悪徳である。
 未だに、資本主義対社会主義時代のイデオロギーに振り回されているといえる。そもそも、計画経済が提起されたのは、バブル破綻後の大不況による労働者の惨状を防止できると考えたからだ。しかも、惨状克服に、戦争が利用されかねないから、社会主義がもてはやされたのである。しかし、そのような仕組みが全く機能しないことが、はっきりした。
 にもかかわらず、日本は、今もって計画経済至上主義者が跋扈している。

 クリントン政権の特徴は、米国株バブル創出による繁栄政策だ。グリーンスパンもこの方針にのって、ITによる生産性の上昇を語り、株価上昇を煽ったといえる。バブル警告は口だけである。
 要するに、ベビーブーマーの年金資金を株式市場に流し込ませて、一気にバブル化を図った訳だ。
 ブッシュ政権は、今度は、債券市場バブルに賭ける。グリーンスパンもこの方針にのって、デフレの足音を語り始めた。株価さえ落ちなければ、デフレも、当座、債権バブル創出には好都合といえる。そのシナリオは完璧に近い。
 配当課税を撤廃したのだから、当然ながらベビーブーマーは喜んで株式を保有し続ける。十分な配当さえあれば、引退を考えている層には十分な見返りといえる。売りが出なければ、株価の低下は防げる。
 同時に、減税も実施する。これは、退職を控えている高収入のベビーブーマーにとっては、恵の雨である。ここから新たに生まれた原資は、債権投資に回ることになろう。

 クリントン政権と、ブッシュ政権のお蔭で、ベビーブーマーの老後資金は正に万全になった、といえよう。ベビーブーマーは大満足である。
 蛇足だが、両者ともに、抜本的な医療改革など進める筈がない。ベビーブーマーの満足を高める施策なのだから、間違いなく赤字は膨らむ。赤字削減とは、非ベビーブーマーの医療水準低下を意味するだけの話しだ。

 これこそが、選挙による「民主主義」の基盤の脆さである。票数を考えれば、7,600万人のベビーブーマーの満足度向上至上主義の政治は、誰も止められないのである。

[silence+selfishness+ignoranceのベビーブーマー世代に属す57才のコラムニストRobert J. Samuelsonの"Burdening Our Children" (Washington Post July 2, 2003 A23)に触発され記載]


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