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2003.7.27
 
 


ゴルバチョフ型政治…

 日経が、規制緩和に逆行して、「逆特区」を進める政治への批判記事を掲載している。
 2003年9月には酒類販売店間に一定の距離を置く距離基準を撤廃することになっていたにもかかわらず、「規制緩和凍結」議員立法が、2003年4月に、全会派の賛成を得て成立した点を問題視した意見である。
 (深掘純編集委員署名記事 http://www.nikkei.co.jp/neteye5/fukabori/20030715n467f000_15.html)

 全会一致の法案だから、政治ジャーナリストなら、法案通過時に問題点を一寸指摘して、後は、素知らぬ顔を決め込む方が得策だから、勇気ある発言といえよう。
 [ちなみに、日経の署名記事はほとんどが編集委員である。]
 [尚、東京新聞でも「改革への抵抗も根強い中、小さな話で済ませてよいものか。」との論説が掲載された。]

 (http://www.tokyo-np.co.jp/00/ronsetu/20030521/col_ronsetu_000.shtml)

 公正取引委員会の竹島一彦委員長も、「参入障壁は良くない」「規制改革の流れと同一方向でない」と批判しており、誰が考えても、おかしな法案である。
 (時事通信社:2003年04月17日)

 この「酒類小売業者の経営の改善等に関する緊急措置法案」は、税務署長が指定する緊急調整地区では新規の小売免許付与、他地域からの移転は許可しない、というものである。
 酒類小売免許の実質自由化(1998年閣議決定)は既定路線とされていたが、「一時凍結」に変わった訳で、規制緩和取りやめと同義と言って間違いない。

 具体的に該当する地域とは以下の内容だ。
 ・需要に対して供給能力が著しく過剰、販売数量の減少が著しい、等により販売業継続が困難
 ・販売場の過半数について、経営改善計画が税務署長に提出済
 (http://www.shugiin.go.jp/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g15401045.htm)

 どう考えても、該当するのは都市部である。規制撤廃により、経済を牽引する都市部を活発化すべきにもかかわらず、全く逆の政策を始めるつもりなのだ。

 政治家の姿勢とは、この程度だ。

 「構造改革特区」でも、こうした後向きの姿勢が如実に表れた。規制緩和の対象項目は少ない上、緩和レベルも低調そのものである。

 それだけではない、およそ規制緩和と呼べないようなものまで、入れこんだのである。

 まず驚ろかされたのは、すでに実行中の案件が入っている点だ。
 [どう見ても、大和市の「みんなで進める地域福祉特区」は
 「NPO法人 ワーカーズコレクティブ ケアびーくる」の活動を公認しただけの話しだ。
 規制緩和による新産業振興の思想とは無縁である。]
 (http://www.city.yamato.kanagawa.jp/kouhou/HTML/p1092.html)

 さらに、呆れるのは、ワーキングアワー外の港湾物流を、国際物流特区と名付ける発想だ。
 今や、世界中、どの貿易港でも、ハブを狙うつもりなら、「24時間通関可能、安くて便利」は当たり前である。いまさら規制緩和と語ること自体が時代錯誤である。こんなことさえできない港湾は世界貿易から見放されるだけの話しである。
 (税関の取り組み http://www.mof.go.jp/jouhou/kanzei/ka150417.htm)

 もともとしなければならないことを、特区に入れて水ぶくれさせているのだ。

 結局のところ、特区構想とは、小さな緩和を全国にばら撒く施策に過ぎない。
 早い話が、各地域を喜ばす集票手段に利用されたのである。公共事業誘致と全く同じ発想と言えよう。

 要するに、現政権は、構造改革のスローガンを掲げるだけで、実際は、構造改革遅延を狙っているのだ。

 ということは、守旧派を擁護しながら、「改革」の旗だけを振り続け、足元から崩れ去ったゴルバチョフ政権と同じ役割を果たすつもりなのだろう。


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