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2003.9.17
 
 


公取温泉調査の不思議…

 2003年7月31日、公正取引委員会が温泉表示に関する実態調査結果を発表した。
 (http://www.jftc.go.jp/pressrelease/03.july/03073101.pdf)

 温泉表示のいい加減さなど、今や、温泉マニアでなくとも知っている。この当たり前のことを時間をかけて調べたようだ。
 この結果を踏まえて、公正取引委員会はどのような姿勢で臨むのだろうか。少し見てみよう。

 この報告書では、2つの問題が指摘されている。

 1点目は、源泉100%や天然100%との表示が誤認を招く恐れがある、というもの。
 加水なのに100%と呼ぶことが、強調表示に当るそうだ。公正取引委員会の見解は、加水したジュースを、100%と表記しても、間違いではなく「強調表現」なのだろうか。

 2点目は、効能表示が、当該浴槽の湯であることを明瞭にする必要性だ。
 常識なら、虚偽に当ると思うが、公正取引委員会の見解は違うようだ。当該浴槽とは全く違う湯の分析結果を掲げないよう、業界にお願いするつもりらしい。温泉成分が無くても、「効能」を掲げて、何の問題も無いのだ。
 これほど、疾病に対する「効能」を勝手に謳える商売は稀である。他の業界では、少しでも効能を語ると、すぐに「官」から、違法行為との警告が来る。温泉なら、何をしてもかまわないらしい。温泉だけは治外法権と言えよう。

 もともと、湯量不足に直面し、加水が始まったのは、相当昔のことだ。常態化は最近のことではない。なにを今更、というのが業界人の意識だろう。温泉ジャーナリストも実態を知りながら、自分のビジネスを守るために口を閉ざしてきた。このまま何事も無く、進む筈だったのである。
 ところが、業界のなかから、「源泉主義」を打ち出す温泉場が登場した。お蔭で、変化が起きた。
 しぶしぶながら、メデイアも加水の実態を報道するようになった、という訳だ。

 この流れのなかで、愛知県吉良町のリゾート「吉良温泉」の実態が全国紙で報道された。
 源泉枯渇を10年以上にわたって隠し続け、「天然温泉」と謳い、泉質や効能を宣伝していたという。水道水を沸かした湯にもかかわらず、「泉質は放射能泉。神経痛、貧血症などに効果があります」「こんこんとわき出る吉良のお湯が、身も心もときほぐしてくれる」と記載していたのである。
 (http://www.mainichi.co.jp/eye/kishanome/200309/11.html)

 しかし、業界にしてみれば、源泉0%と、源泉1%の浴槽とどれだけ違うの、といった所だろう。
 正に、その通りである。日本全国、加水タイプだらけなのだから。

 昔は鉱泉と呼ばれた沸かし湯も、今は正真正銘の温泉である。しかも、源泉からの水が1滴でも入っていれば、源泉になる。
 公正取引委員会は、この状態を虚偽表示とは見なさない。

 このような現状追認姿勢は当然といえよう。この調査は、「今後とも,事業者及び事業者団体の温泉に関する適正表示への取組を支援していく」ために行われたからである。委員会は温泉業界のために働きます、と宣言した訳である。

 公正取引委員会は、いつまで、このような対応を続けるつもりなのだろうか。
 本当のことを知らせない「温泉」を守ったところで、なんの意味があるのだ。潰れるべき温泉場の寿命を長引かせれば、伸びるべき温泉場の成長が落ちるだけのことである。
 歴史の教訓からいえば、このような産業は必ず衰退する。

 公正取引委員会は温泉業に衰退の道を推奨するつもりらしい。


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