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2003.9.18
 
 


保育所分析レポートの不思議…

 「Quality Adjusted Cost Function in Japan's Child Care Market: Evidence from Micro-level Data」という題名の「報告書」が2003年8月付で発表された。ミクロレベルのデータを用いて、品質調整をした上で、日本の保育サービス市場を効率性を議論したものである。シリーズとしては第4報目である。
 (http://www.esri.go.jp/jp/archive/e_dis/e_dis060/e_dis057a.pdf)

 「報告書」と括弧付きにしたのは、、内閣府経済社会総合研究所の部内参考資料にすぎず、公式の資料ではないという但し書きがついているからだ。

 このレポートは、論旨がすっきりしており、読めば、だれでも納得するのではなかろうか。結論も明瞭だ。

 このなかでは、次ぎの2点が指摘されている。
 ・ 保育所レベルでは、公立保育所が1割から2割程度コスト高である。
 ・ 保育所運営費に占める補助金の割合が高いほど、コスト高である。
 [尚、2002年3月末で、公立利用者数は968,190、私立利用者数は911.159、未認可施設利用者数は221,022である。]

 保育所の最新データを駆使した、このようなコスト・ベネフィット研究結果の公開は初めてと思われる。

 公立や、補助金獲得施設が、高コストであることは、誰でも感じていたことだが、どの程度なのかの定量データがはっきりせず、常に議論が空回りしてきた。ようやく、数字が明確に示された。これだけでも価値ある。

 本来なら、このようなレポートは政策議論活発化のために使われるべきだ。
 コスト高の部分がどこに使われたのか見極め、そうなるマネジメントの仕組みの欠陥を探した上で、コスト削減施策提案に繋げるのが筋である。
 しかし、そのような道を辿る可能性は極めて低い。

 というのは、この報告書が英文だけで、邦文が無いからである。・・・国内での議論の糧として、利用されたくないのだろうか。

 財政・金融や、老齢化への政策対応なら、国際的な議論の意義は極めて高い。この分野は、邦文レポートも多い。従って、英文報告書だけでもかまわないかもしれない。
 しかし、保育分野は全く異なる。日本は、幼児のおかれた状況も相当違うし、少子化で世界の先頭を走っている。このような国の保育サービス分析結果を、海外の研究者と討論しても、たいしたメリットがあるとは思えない。
 費用便益効果測定の手法研究なら、国際議論に向く題材はいくらでもある。
 従って、このようなレポートを英文だけで公開する意味は理解し難い。

 何故、邦訳を掲載しないのだろうか。


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