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2003.12.9 |
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***イラクに関する政策論議が盛んだが、大きな流れを見て対応を考える必要があろう。その場しのぎや、情緒的対応だけは避けて欲しい。*** 戦争の時代 1:米国の方針…2003年11月23日付WashingtonPostによれば、英国を訪問したブッシュ大統領が米国の3原則を語った。・Force when necessary in the defense of freedom ・The strength and effectiveness of international institutions ・An ideal of democracy in every part of the world (「Vision and Reality」 http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/articles/A7259-2003Nov22.html) 現実には、米国は、自国の地位と利益を守る方針を露骨に貫き通して来たが、このような発言があったということは、イラク政策転換の兆しと見ることができるのではないだろうか。 と言うより、現行政策の失敗が指摘されており、転換せざるを得ないのだろう。 米国のマスコミの論調を見ていると、論点は様々だが、イラク戦争は上手く行っていないという点で、見方が一致してきたようだ。 第1の失敗は、テロとの戦いだ。どう見てもテロ撲滅どころか、テロ活動の活発化を招いている。施策にほとんど効果がないことが明白になってしまった。 もともと、ビン・ラディン一派がここまで力を持った遠因は、反ソ連ゲリラ闘争を支援した米国の政策にあることは明白だ。しかも、反ビン・ラディンのフセイン独裁政権を打倒したため、かえってテロ組織の暗躍を招いている。 第2の失敗は、軍事統治である。フセイン政権は打倒したが、米軍の被害は増す一方であり、誰も、全土の軍事的安定を実現できるとは思わなくなった。 そもそも、米国は、イラン軍をすべて解体した上、官僚組織まで完全瓦解させる方針をとったのであるから、当然の結果である。 大量の失職軍人を野に放てば治安悪化は自明だ。しかも、統治に最重要な官庁保有情報の壊滅も黙認した。これでは統治機能復活は夢に近い。結局のところ、豊富な情報を持ち、組織力が発揮できる組織が残る。テロと陰謀に長けたフセインの諜報機関の暗躍は約束されていたともいえる。米軍周囲はスパイだらけ、かもしれない。 しかも、国民の生活実態は悪化の一途だ。これで、反米ナショナリズムに火がつかない訳がない。 治安がさらに悪化し、これ以上反米色が強まれば、米軍によるイラク全土統治の破綻は時間の問題だろう。 第3の失敗は、欧州の中核国との政策乖離を招いてしまった点だ。「大義」論争をしてしまい、米国文化そのものに対する嫌悪感を作りあげてしまった。 ・・・といった見方は、実は一面的かもしれない。 どう見ても外交的には失敗だが、米国のエネルギー安全保障上は大成功とも読めるからだ。ブッシュ政権が狙ったのは、イラクの軍事力を消滅させて地域の不安定要因を消すことと、イラクの石油資源を米国管理下におくこと、の2つと考えれば、その目標はほぼ実現したのである。 イラク国内がいくら混乱しても、原油生産と周辺国に影響が及ばないなら、なんの問題もない。今のところは、目論み通りなのである。 もしも、サウジアラビアへの脅威が薄れ、原油生産地域が安定すれば、全土統治の意義などなくなる。面倒な部分は、「大義」を感じ、イラクの民主化と安定化を語る国々や国際機関にまかせてしまえばよいのだ。といっても、米軍が消えれば、間違いなく独裁政治がそこここで復活する。イラクは民主主義どころではなくなろう。 こうなれば、周辺の独裁政権は、米国のメッセージを読取り、その流れに乗ってこよう。米国の方針に沿って石油資源を提供し、国外に手を出さなければ、存在を認めてくれると判断する。この一帯の民主主義浸透は望み薄である。 しかし、米国にとって一番重要な、エネルギー安全保障は達成される。 この観点で見ると、米軍がイラク全土統治を放棄する環境は整いつつあると言えそうだ。 治安悪化にもかかわらず、イラクの石油生産は順調に回復している。 BBCの2003年11月25日付報道によれば、イラクの石油生産は日産220万バレルになったという。2004年3月には戦争前の280万バレルを越える模様だ。そして、少額投資で、2005年には400万バレルを達成できるという。 (http://news.bbc.co.uk/2/hi/business/3236304.stm) すでに、イラクには危険な兵器が存在しないことはほぼ確認済みだし、巨大な軍事脅威復活の可能性も摘み取った。 全土の治安悪化と反米感情高揚が誰の目にも明らかになれば、米軍統治は無意味に映る。そうなった時、原油生産地域以外から米軍が撤退する可能性は高い。 政治への発言の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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