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2004.1.13
 
 


BSE対策でわかる畜産行政の現実…

 米国でBSEが発生し、未感染の先進国はノルウエー/スエーデンとオーストラリア/ニュージーランドだけのようだ。
  (http://www.oie.int/Cartes/BSE/a_Monde_BSE.htm)

 日本での感染も未だに抑えられていない。
 2003年10月18日以降、全頭検査が実施されているが、厚生労働省のレポートによれば、BSE感染牛は8頭発生している。検査結果によれば、陰性2,730,325頭に対し、陽性は113頭と2桁である。
  (http://www.mhlw.go.jp/houdou/0110/h1018-6.html)

 この数字を知ると、BSE発生国から、全頭検査しない牛を輸入することなどできまい。

 そんな状況下で、2004年1月2日NYTimes に「The Cow Jumped Over the U.S.D.A.」(Eric Schlosser)が掲載された。米国ならではの鋭い指摘の論評だ。
  (http://www.nytimes.com/2004/01/02/opinion/02SCHL.html)
  [Eric Schlosser氏はベストセラーになったファーストフードの問題を抉った本「Fast Food Nation」(楡井浩一著「ファストフードが世界を食いつくす」草思社 2001年)の著者]

 冒頭から、米国農務省の報道官Alisa Harison の話しだ。狂牛病(Mad Cow Disease)は消費者にとってはリスクではない、と語った人だが、前職は、National Cattlemen's Beef Association の広報担当だったという。
 この他にも、Veneman長官のチーフスタッフに業界ロビイストが採用されているし、National Pork Producers Councilの元代表も働いている。

 米国でも、農畜産分野の生産団体と担当省庁の繋がりが、とてつもなく強いことがよくわかる。

 産官の繋がりが強いというのは、産業振興という面から見れば、必ずしも悪いとは言えないが、こと安全性に関しては逆作用になる。
 監督される側の業界から、監督する側の農務省へ人が移る体制では、安全性が担保できるか疑問だからだ。生産者のための安全性になりかねない状況と言えよう。

 農畜産分野は、どの国もこうしたな仕組みになり勝ちである。

 BSE対策で見る限り、圧巻は英国だった。政府はクロイツフェルト・ヤコブ病がはっきりするまで、ずっと牛肉の安全性を強調し続けていた。
 一方、独、仏、伊、日本は、英国からの牛肉輸入を禁止したが、自国の牛肉は安全と主張した。
 しかし、現実には、検査を徹底した結果、この主張になんの根拠もなかったことがわかった。肉骨粉は製造されており、混入しない保証がない状況だった。

 米国は同じことを繰り返すつもりのようだ。

 NYTimes の評論が本当なら、米国は笊規制状態である。
 コロラド州の飼料製造業者の1/4以上が肉骨粉禁止対策を、実施4年後でも知らなかったというから驚きである。混入防止の仕組みを取らない企業もあったという。
 しかも、管理していない海外から生牛が輸入されている。カナダからは年170万頭、メキシコからは100万頭だという。
 BSE牛はカナダ生まれだったとされているが、だからといって米国牛が安全とは考えにくい。
 にもかかわらず、米国は全頭検査を行うつもりはないようだ。

 米国から輸入解禁の圧力がかかっているが、少しでも輸入すれば、一大混乱必至だろう。


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