↑ トップ頁へ

2004.2.6
 
 


危険な食糧自給政策とは…

 北朝鮮を飢餓状態から救うため、人道的見地での食糧援助が行われてきた。内乱がある訳でもないのに、気候問題だけで、ここまで悪化するというのは信じ難い。
 戦火に見まわれたとはいえ、食糧自給率はかなり高い国だった筈である。それが、国が成り立たないところまで、食糧生産が落ち込んだのである。

 もちろん、これを、独裁政権がもたらした問題として片付けることもできる。
 どこまで本当かはわからないが、滅茶苦茶な方針で農業生産拡大が図られたとの話しは多い。例えば、山を切り開いて棚田を造成したが、土留めを作らせなかったため崩壊した。これが原因で洪水が多発している、といった類の話しである。
 しかし、同じような独裁国だった、かつての中国本土も農業は不調だったが、ここまでは悪化しなかったと思う。
 どうしてここまで来たのか不思議だった。

 しかし、実態分析を読むと、極めて単純な原因で破綻したと言えそうだ。
 農業技術革命に失敗したのである。
  (http://www.ier.hit-u.ac.jp/COE/Japanese/discussionpapers/DP98.3/kimura2.htm)

 大規模機械化と、工業製品(農薬/肥料)の投入で、農業の飛躍的な生産性向上を狙ったのだが、これが、大失敗したのである。
 歴史的には、1970年代から徹底的な機械化を進めたようだ。同時に、化学産業を興し、農業生産増強策を展開している。

 ところが、この農業の工業化が裏目に出たのである。

 農業機械は揃ったが、稼動したのは最初のうちだけだった。
 部品や燃料が欠乏し、機械の稼動率が急低下した。ソ連製機械が中心だったため、ソ連崩壊以後は、壊滅的状況に陥った。
 機械化を前提とした仕組みの生産体制を組んでしまったのに、機械が使えないのだから、悲惨だ。

 化学製品も、原油欠乏で生産できなくなった。
 肥料投入で徹底的な増収路線に走ったため、農地は限界まで痩せている。この状態で、肥料の供給が止まれば、まともな収穫は期待できない。といって、地力の回復は、簡単にはできないから、低迷から逃れることは無理である。その上、農薬もない。病害虫で全滅の可能性さえあるのだ。

 原油入手ができなくなると、工業化農業は壊滅的被害を受ける訳だ。

 政治がもたらした悲劇といえよう。

 しかし、これは他人ごとではない。
 日本も、30年先は、どうなるかわかったものではない。

 そもそも、日本の農業の存立基盤は脆弱である。
 日本の農家とは、小規模農地で、高齢化した人達が、小型の高性能農機具を用いて、購入した種苗に、化学肥料を与え、農薬を散布して、どうやら育てあげる、零細企業である。こうして作られて農産品の質は高いと言えなくもないが、コストパフォーマンスから見れば、とてつもなく悪い商品ばかりだ。金持ちの自国民に買わせることで、どうやら成り立っている産業である。
 しかし、高度な農業機械と高機能化学製品投入が進んでおり、工業化された農業である。

 このタイプの農業は、原油が入ってこなくなれば、すぐに立ち行かなくなる。原油が切れれば、今の北朝鮮農業とたいして変わらない状態に陥るのだ。

 従って、現在の農業の仕組みを変えず、食糧自給率の向上を図ったところで、「食糧の安全保障」には繋がらない。

 本気になって、食糧の安全保障を考えるつもりなら、石油入手を前提とした、工業方式農業を変えるしかない。
 先ずは肥沃な農地に変え、有事の際は、高度な機械に頼らなくても生産可能な体制を準備すべきなのである。

 これができないのなら、「エネルギーの安全保障」に徹するしかない。この観点で、原油市場をオープンにさせたいなら、食糧自給率向上は貿易阻害になりかねない。かえって、安全を脅かすことになるのだ。


 政治への発言の目次へ>>>     トップ頁へ>>>
 
    (C) 1999-2004 RandDManagement.com