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2004.2.28
 
 


水支援の意味…

 イラク南東部サマワ(Smawah)での、陸上自衛隊の主要任務は飲料水の提供とのことだ。
 約30人の給水隊が1日に70〜80トン(約2万人分)を浄水する計画だという。(1)

 実際に飲料水の提供とは何なのか、関心を払う人は少ないし、調べる気力も湧かないから、そんなもんか、と見過ごしてしまいがちだ。しかし、この業務は思っている以上に重要だと思う。

 といっても、「市民に水を配る」だけなら、ほとんど意味など無い。
 サマワの人口は諸説あるようではっきりしないが、10〜30万人の範囲だろう。2万人分では、とても対応できる数字ではない。特殊施設への配給しかできない量である。

 そもそも、軍隊は、水道施設業者とは全く違うのだから当然である。
 (但し、イラク人道復興支援特措法に基づく対応措置に関する基本計画によれば、「河川等の水を浄水し、生活用水の不足する地域の住民に配給する。 」ことが任務である。(2))

 一般に、軍隊が運営する水道は極めて重要な役割を担う。駐屯兵力や現地兵站部門へ安全な水を安定的に提供できるかは軍事組織の存立基盤そのものだからだ。特に、安全な水が乏しい地域では、水道運営能力が現地活動のレベルを左右することは間違いない。
 この点では、自衛隊の能力は極めて高いようだ。

 このような、余計なことを考えてしまうのは、自衛隊活動が毎日のようにニュース報道に登場するからである。

 報道を見る限り、イラクの水に関する状況はとてつもなく悪いことがわかる。

 場所によっては、砂漠に囲まれ、日中40℃になるという。ここで安全な水が無ければ、壮絶な状況だろう。
 そうなれば、汚染されている水を飲むしかあるまい。何時、感染症患者が数万人規模で発生してもおかしくない。
 (実際、南アフリカでは貧困のため安全な水を飲めずにコレラが蔓延した。(3))

 これが戦争の現実だ、と考えるべきでない。
 人的被害を最小限に抑え、短期間終結を目指した、米国の「戦争遂行方針」の結果にすぎない。

 ハイテク兵器と、大量の高性能弾薬の投入で、イラク軍を放逐したように報道されているが、「水」状況のニュース報道が本当なら、おそらく、そうではない。

 どう見ても、米軍が水道施設を破壊したのである。当然のことだが、飲料水補給ができない軍隊など、すぐに消滅する。
 フセインの指示でイラク軍が隠れた訳ではない。水が無くなって、軍隊の存立基盤が崩れたにすぎない。
 (戦闘の過程で水道機能が破壊されただけであり、米軍が故意に水道を破壊した訳ではない、というのが公的見解である。・・・水道破壊はジュネーブ国際条約違反)

 このお蔭で、米軍への憎しみがイラク中に満ち溢れてしまった。
 (反米軍の動きは、米国が持つ傲慢な態度とか、宗教や文化上の問題と見ない方がよい。もともと、フセイン独裁政権は、独裁にマイナスにならない限り、異文化を容認していた。)

 フセイン独裁政権は水を手中に治めて国内を統治していたに違いない。米軍は、この権力基盤を崩したのである。しかし、一向に水道復興の兆しはない。
 水なしに生きていける人などいないから、フセイン独裁の方がましだった、と考えるのは極く自然な流れである。

 水の入手難がどのような結果をもたらすかは、米国はボリビアの水道問題ですでに勉強済みの筈だが。(4)

 --- 参照 ---
(1) 図解 http://www2.asahi.com/special/iraqrecovery/TKY200312190388.html
(2) http://www.kantei.go.jp/jp/fukkosien/iraq/031209kihon.pdf
(3) http://news.bbc.co.uk/1/hi/world/africa/1113995.stm
(4) http://www.pbs.org/frontlineworld/stories/bolivia/links.html


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