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2004.3.1
 
 


ビジネス特区で新風は吹くか?

魅力なき農業特区…

 農業特区とは何なのか、1/2回の認定内容を見て、がっかりした。

 企業が農業分野に入るきっかけができると考えていたが、全く違うものだ。

 喧伝されているのが、カゴメが県の持つコスモパーク加太を借りて、20haの温室を作り6000トンのトマト栽培を行うというもの。(和歌山県・新ふるさと創り特区)(1)
 そのため、企業が農業に入ってくるという印象を受けてしまう。

 政府は、特区の成功例の目玉にしたいようだが、このケースも実態も、よく見ればお粗末この上ない。規定上販売が義務付けられている自治体所有の「お荷物」を、メーカーに使ってもらうだけの話しである。今のままなら、寝かし続け遊休地になってしまう土地を、定期借地権で貸すだけにすぎない。

 もともとカゴメは茨城県美野里町(1.3ha)、広島県世羅町(3ha)、高知県幡多郡三原村(1.5ha)に生鮮トマト栽培の現地農業法人を持っている。(2)コスモパーク加太に増設したからといって、格別新しい動きが始まった訳ではない。
 経営戦略に沿って進めてきた事業であり、「ふるさと創り」のコンセプトとは無縁である。トマト温室のどこが「ふるさと創り」になるのか、さっぱりわからない。
 (この事業は技術的に独自性が発揮できにくい。おそらく、メーカーにも農家も、栽培技術(ロックウール養液栽培)はなかった。基本技術はオランダからの導入だと思われる。)

 と言っても、農業分野への企業参入はポツポツながら現れてはいる。
 ワタミフードサービスは千葉県山武町と群馬県倉渕村で、10ha規模の契約農場(ワタミファーム(3))を設立し、無農薬有機野菜の栽培を行っているし、メルシャンは長野県小県郡丸子町で5.4haの農園で高級ワイン用葡萄の自社栽培事業(ラ・ヴィーニュ(3))を行う。
 (尚、ワインに関係しそうな特区としては、山梨市笛吹川右岸地区で三セクのフルーツパークが葡萄/桃で体験農家のような試みを行なるようだ。)

 文字通りポツポツだ。

 それでは、特区でさらに変わる、と言えるだろうか。
 ざっと見てみよう。

 消費財産業の企業名が見えるのは、長野県梓川村(発芽玄米生産)のファインフーズ梓川、香川県小豆島(オリーブ栽培)の内海町のヤマサン醤油/ヤマヒサ位だ。

 遊休地の農地化を目指すものも多い。

 典型は土建業の参入である。市場が狭くなり、労働者が余る業界から、老齢化して人手不足の農業へと労働力の移転を図ろうとの試みなのだろう。どうして可能なのかは全くわからない。
 単なる農業では生きていけないから、労働力が入ってこないのだ。労働力を投入し易い仕組みを作ったところで、機能するとは思えないのだが。

 なかには、都市の遊休地を農地化する試みもある。都市で生産性の低い農業を行って、どのような意味があるのだろう。
 都市近郊には、十分な利益をあげている農家も多い。農業にこだわるなら、特区に関心を示す筈がないと思う。腑に落ちぬ特区構想だ。

 グリーンツーリズムを掲げているものもある。題名はお洒落だが、早い話が、民宿規制の緩和を活用して、観光化しようという企画だ。
 そもそも、農村は、長らく地場産業興しによる村づくりを続けてきた。観光も含まれていた筈だ。しかし、民宿規制があったから、上手くいかなかった、と総括できるのだろうか。そうでなければ、特区で、どうして興隆可能なのか聞かせて欲しいものだ。
 土地の貸し付けを簡素化するだけで、起死回生のチャンスが生まれるとは思えないのだが。

 産業振興のアイデアは自ら考え出すしかない。これなくしては、なにも生まれない。

 眺めると、相変わらず、官から与えられたアイデアや仕組みで発展を図ろうと考えているように見える。・・・これでは真似しかできまい。成功例を真似て、一生懸命仕事に励めば生きていける時代は終わったのではないのか。

 そもそも、ほとんどの特区の遂行者は、官の色合いが濃い振興組織や、利益を追求しないNPOである。このような組織が、もともと官頼みで生きて来た産業の再興を図ることができるものだろうか。

 NPOも、自分の力で生きてきた農家と組むなら、農家側が利益確保を考えて行動するからプロジェクトは上手く進む。しかし、日本の農家は、利益は必ず確保してくれる、との前提で動く。こうした人達と組むのは至難の技だろう。

 参入者に企業が並ばない限り、農業特区を続けても成果は生まれないのではないか。

 --- 参照 ---
(1) http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kouzou2/kouhyou/031222/117toke.pdf
(2) http://seisen.kagome.co.jp/seisen/seisen.html
(3) http://www.watami.co.jp/ir/jigyou/0312wfsjigyo.pdf
(4) http://www.mercian.co.jp/release/2003/0325.htm


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