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2004.3.3
 
 


ビジネス特区で新風は吹くか?

訳のわからぬ幼稚園特区…

 中央教育審議会幼児教育部会という組織がある。

 2003年12月1日付けの資料を見ると、ここでの議論状況がよくわかる。「1. 幼児教育の問題」をそのママ引用しよう。(1)

 民間等の調査結果より、幼稚園教育の現状における問題点は以下に示すように整理できる。
 しかしながら、幼児期における言語リテラシーの習得が小学校以降の教育において
 どのようなメリットとデメリットがあるのか(例えば、表現力の欠如との関係など)に関する研究調査がみられない。
 また、小学校教育における幼稚園教育と保育との相違点も明らかになっていない。
 幼児教育あるいは幼稚園教育の問題が必ずしも明確に同定されていないのではないだろうか。
  調査等の結果にみる現実の課題
 (1) 自己統制力の欠如、協調性等の幼児の実態 → どのような問題を引き起こしているのか(キレル子どもの調査等)
 (2) 親および家庭の実態 → 家庭との連携は何を明らかにしたか
 (3) 幼小連携/幼保連携(カリキュラムの連続性)→幼小連携の研究開発からの提言
 (4) 幼保の行政上の問題(所管等)
 (5) 幼稚園教諭の養成および現職研修(資質の向上)→協力者会議の報告から何が実現され、何が実現されていないのか、という評価研究の必要性

 残念ながら、いくら読んでも全く理解できなかった。
 問題は判明しているのか、そうでないのかさえ判然としない。どのような問題があるのかに至っては、皆目分からない。

 これで議論しているのだろうから、不思議な組織である。

 議論のポイントをまとめたもの(2)をみたが、思考パターンが違うようだ。

 冒頭に、「幼児教育の意義及び役割」と記載されているので、教育の本質論を議論していると思ったが、実はそうではない。
 先ずは、環境変化等による問題点を踏まえ、課題を明かにするのだという。
 課題が提起されたら、それを踏まえて教育の意義と役割を決めるらしい。

 教育の役割を明確化し、それが果たされているかを検証し、上手くいっていないところを探し、その根源を探る、との流れになっていないのだ。従って、何をしようとしているのか、外部の人間にはわからない。

 なんといっても圧巻は、「意義及び役割」の議論のなかに、唐突に、別な視点が入ってくることだ。発達段階に応じた教育・保育のあり方と、地方(自治体)の役割を明確にすることに留意せよ、と言うのだ。教育の役割を考えるのに、何故地方の役割を明確にする必要があるのか見当もつかない。

 こうした論理展開には頭がついていけない。どのようにして議論しているのか、想像もつかない。
 ここは恐ろしく特殊な社会だ。
幼稚園に関係する特区(1/2回認定)
幼保連携 茨城県金砂郷町
群馬県六合村
岐阜県端浪市
早期入園 岩手県一関市
埼玉県北本市
福井県丸岡町
山梨県富士吉田市
長野県
京都府長岡京市
京都府大山崎町
鳥取県米子市
山口県防府市
(3回認定)
幼保連携 北海道東川町
秋田県千畑町
神奈川県箱根町
静岡県掛川市
三重県藤原町
兵庫県加西市
和歌山県太地町
香川県池田町
早期入園 北海道恵庭市
北海道北広島市
埼玉県秩父市
佐賀県
長崎県

 このような社会では、特区制度は機能するかもしれない。理屈などなくても、ともかく、個別に新しい取り組みが可能だからだ。

 といっても、この分野の特区とは、幼稚園と保育園の合同と早期入園だけである。学校教育法と幼稚園設置基準に関する規制緩和である。

 教育の本質とは全く関係ない、些細な問題の規制緩和でしかないが、おそらくこの程度でも重大問題なのだろう。
 というより、どんな問題でも、まともな議論はできそうにない、と言った方が正確だと思う。

 --- 参照 ---
(1) http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/siryo/008/03120501/005.htm
(2) http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/siryo/008/03120501/003.htm


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