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2004.3.7
 
 


ビジネス特区で新風は吹くか?

にぎわい特区の苦悩…

 「中心市街地活性化に係る構造改革特区」が登場した 。
 「宇都宮にぎわい特区」、「岐阜市中心商店街再生特区」である。

 どのようなものか、前者の例で見てみよう。
 「宇都宮の中心商業地域において、大規模小売店舗立地法の手続きを簡素化することで、集客の核である大型店の空き店舗状態の解消を図り、中心商業地の賑わいを回復する。」(1)これにより、空き店舗状態の3店を解消し、新規雇用800人を創出するとの目論みである。[平成19年度まで](2)

 お蔭で、2003年11月、西武百貨店跡地(斎藤会館)に「ラパーク長崎屋宇都宮店」がオープンした。(3)
 コンセプトから見て、中心商業地域での華やかな販売拠点と言うより、食料品を中心とする最寄り品の販売拠点である。

 宇都宮の中心商業地域の問題は、都会的な雰囲気を狙って、大型デパートを作った点にあるのではないだろうか。
 長崎屋の方針はこれとは全く違う。ビジネスマンなら当然の方針だと思う。
 しかし、周囲も同じ考えかというと、そうとも言えないようだ。相変わらず都会的な雰囲気を狙っているように見える。

 100万都市なら、黙っていても、都会的な雰囲気が生まれる。というより、現実に都会なのである。
 例えば、2004年2月に開店した小倉伊勢丹(そごう跡:そごうは3万uを約7億円で借りていたらしい。)は、センスをウリにしている。(4)この地域は、都市としての人口基盤は十分だから、都市型消費を狙う商業地域構築が可能である。といっても簡単に作れる訳ではない。黒崎駅再開発ビル「コムシティ」は破綻している。(5)

 しかし、その人口規模に達しない地域では、革新的な方策を考えつかない限り、都会的な雰囲気の商店街が成り立つ根拠は薄い。
 しかも、宇都宮の特徴が外部の人に知られているとは思えないし、商店街のコンセプトもよくわからない。これで100万都市と同じような集客を狙うのは無理だろう。
 都会的な雰囲気を追求する限り、成功確率は低いと言わざるを得まい。

 そもそも、この特区の申請主体は、宇都宮市ではなく、栃木県である。
 不思議な仕組みである。県民を宇都宮に集めようと考えているのだろうか。あるいは、県の政治的威力で市外のテナントを呼び寄せようというのかも知れない。
 その地域の人達が将来を考える体制を作らないで、上手くいくとは思えないのだが。

 地方経済にとっては、確かに、宇都宮中心部の商店街の盛衰は死活問題だ。従って、「なんでもアリ」の不退転の決意で動くつもりなのだろうが、危うさを感じる。

 報道によれば、平成16年度から、宇都宮市中心市街地(商業地のみ)の固定資産税/都市計画税の減税を行う計画があるそうだ。(6)テナント料値下げを狙う訳だ。
 確かに、賃料が坪3万円の場所で事業を進めようと考える起業者は稀だろう。しかし、これは減税で解決できるものではなかろう。
 もちろん、特区が解決できる問題でもない。

 地域経済活性化の決意は美しいが、成功する根拠が薄弱なままで、深追いすべきではなかろう。傷を深めることになりかねないからだ。

 --- 参照 ---
(1) http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kouzou2/sankou/030829/7.pdf
(2) http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kouzou2/kouhyou/030829/siryou2.pdf
(3) http://www.nagasakiya.co.jp/topicks3.html
(4) http://www.kokura-isetan.co.jp/icm2/jsp/store/kokura/site/index.jsp
(5) http://kyushu.yomiuri.co.jp/spe-3/comcity/comcity030717.htm
(6) 朝日新聞 2004年2月4日


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