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2004.3.8
 
 


ビジネス特区で新風は吹くか?

IT特区は動いてはいるが…

 「おかやまIT特別経済区(eトップ・エリア(1))」は情報ハイウェイ整備を掲げる岡山県が主体の特区である。
  (1/2回に認可された他のIT特区としては、岡山と同じ5GHz帯の無線インターネット網構築を進める北海道岩見沢市と、光ファイバー/CATVのインターネット網構築を図る兵庫県洲本市がある。)

 岡山県は、1998年に「岡山情報ハイウェイ」を提起した。その後、2001年には「おかやまIT戦略プログラム」や「地域からIT戦略を考える会」、2002年には「GOOD連合(3府県のIT産業振興の連携)」と積極的に動いてきた。もちろん、電子自治体化でも先頭を走っている。

 特筆すべきは、県内プロードバンドカバー率100%を自らの力で進めている点だ。基幹回線を県が、支線を市町村が、最後の到達回線を民間企業が担当する仕組みで動いてきた。(2)

 その観点では、市内全域をカバーできる無線は便利な技術である。そこで、5GHz帯の規制緩和を利用することになったようだ。
 早速、2002年9月に、ブロードバンドコムが、インターネット無線接続(5GHz帯)サービスを始めた。月額基本料金3,880円で、上り下りともに最大54Mbpsだ。(3)

 しかし、これはインフラ構築の話しだ。
 確かに、地域100%カバーを、地域内回線だけで実現できれば、トラフィック上の利点は大きい。大量情報が流れても、障害が発生する可能性は小さいからだ。しかし、それだけである。
 この利点を活用すれば新事業の試行が便利だ、という以上ではない。

 新事業が直面する現実とは、お金を払ってくれる顧客の獲得の困難性である。
 言うまでもなく、ここで重要なのは、インフラではなく、事業コンセプトである。

 そのため、「eプラザ岡山」(4)と、「岡山リサーチパーク・インキュベーションセンター」(5)が開設されている。どちらも事業環境はよさそうである。
 インターネットビジネスの事業モデル構築、技術検証、評価環境ができるという点でも、優れた施設だ。

 しかし、このような立派な施設を提供することが成功に繋がる証拠はない。と言うより、ハコものだけのインキュベーション政策なら、奏効するとは思えない。
 本来なら、既存の不用施設を転用したりして、安価に、できる限り、様々な挑戦者に自由に使わせる機会を増やすべきだろう。これこそが、意味ある規制緩和だと思う。

 もちろん、「eトップ・エリア(1)」の施策は施設だけではない。補助金や融資も用意されており、起業化しやすい体制はできあがっている。
  ・ おかやまIT特別経済区通信経費補助金
  ・ ITベンチャー創出促進事業費補助金
  ・ IT活用資金融資
  ・ 創業支援資金融資

 しかし、このような補助金施策はいつまでも続けられるものでなかろう。
 岡山県の2004年度の歳入不足は、なんと377億円にのぼった。破綻目前と感じる額だ。電子自治体化投資も続けていけるか疑問さえ湧く。
 高額な施設への投資と運営費用、補助金や融資を行って、育った企業からの税収増や雇用増が見込めるならよいが、現行体制では難しい感じがする。

 今必要なのは、当座の補助金でなく、リスクマネーを投資できる地元篤志家をつのる仕組み作りではないのか。遠回りだが、長期的に見れば、効果は大きいと思う。

 今のままなら、頼れるのは政府の補助金、ということにならざるを得まい。
  ・ 地域新生コンソーシアム研究開発事業
  ・ 地域新規産業創造技術開発費補助事業
  ・ 創造技術研究開発事業
  ・ 中小企業・ベンチャー挑戦支援事業
  ・ IT活用型経営革新モデル事業

 財政支援をしないのが特区政策の良い点だったが、結局は補助金型に舞い戻りかねない。

 --- 参照 ---
(1) http://www.pref.okayama.jp/kikaku/joho/e_top/index.html
(2) http://www.pref.okayama.jp/kikaku/joho/okix.htm
(3) http://www.broadbandcom.co.jp/project_info/BWave_index.html
(4) http://p-sym-sv02.e-plaza.or.jp/
(5) http://www.oric.ne.jp/~oric/index.html


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