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2004.3.11
 
 


産学連携特区の危うさ…

-- 核となる参加機関 -- -- 主対象 --
産学連携特区(1/2回認可)
北大北キャンパス
科技振研究成果活用プラザ
産技総研北海道センター
広範
(バイオ、IT等)
兼業
施設
外人
北大/大学院水産
はこだて未来大学
マリンフロンティア施設
外人
弘大 アグリ施設
仙台市内の企業各社研究所
東北大未来科技共研センター
科技振研究成果活用プラザ
健康
情報
環境
ナノ・材料
施設
外人
山形県工技センター
山形大・地域共研センター
超精密テクノロジー
有機エレクトロニクス
兼業
施設
外人
慶大先端生命科学研
山形大農(鶴岡地区)
バイオ施設
外人
メディカル系企業各社研究所
日大次世代工学技術研究センター
会津大コンピュータ理工
ハイテクプラザ
医療福祉機器外人
「つくば」の研究所群
「東海」の原子科学機関群
「日立」の製造業者群
広範兼業
施設
外人
千葉大
東大柏キャンパス
かずさDNA研
放射線医学総合研
企業各社研究所
バイオ
ナノ
兼業
施設
外人
理研横浜研究所
(京浜工業地帯の大企業)
バイオ
IT
外人
国際レスキューシステム研
日中ベンチャー交流促進センター
環境・エネルギー創造研
(川崎臨海地域の企業)
環境
ナノ
IT
ロボット
外人
信州大
デバイス企業各社研究所
ナノテク超微細
高機能部品
施設
外人
岐阜大
メーカー群(航空宇宙/自動車/機械)
IT
ロボット
外人
国立遺伝学研
県立静岡がんセンター
(医薬品医療用具メーカー)
バイオ・癌・医薬外人
静岡大電子工学研
浜松医科大学
(光・電子メーカー)
光・電子施設
外人
名大
名古屋工大
産総研
理研
(自動車・機械メーカー)
新産業創出兼業
施設
外人
京大VBL
京都工芸繊維大
地域共研センター
大学・短大群
バイオ兼業
施設
「けいはんな」の大学・研究機関群 広範兼業
施設
外人
阪大国立循環器病センター
大阪バイオサイエンス研
生物分子工学研
バイオメディカル兼業
施設
外人
大阪府立大
阪大
大阪女子大
府立産総研
科技振研究成果活用プラザ
ナノテク・光技術、等外人
高輝度光科学研究センター
理研
原研
県立姫路工大
(エレ/素材企業群)
光/ナノ/バイオ等外人
神戸大
先端医療振興財団
理研
(既存産業メーカー)
ライフサイエンス兼業
施設
外人
重厚長大型企業各社研究所
産総研尼崎[ライフエレクトロニクス]
近畿高エネルギー加工技術研究所
ライフサイエンス等外人
広大
産総研呉
広島市立大
企業各社研究所
製造業全般施設
山口大産学公連携・創業支援機構 一般兼業
施設
外人
香川大
香川医大
かがわ産業支援財団
希少糖兼業
外人
愛媛大
企業各社研究所
バイオ兼業
施設
九州工大
企業各社
IT兼業
施設
外人
久留米大医
先端ガン治療研究センター
福岡県工業技術センター
肝癌・肝炎/バイオ外人
大牟田市土地開発公社
福岡県環境保全公社
福岡大学
石炭産業関連企業
環境リサイクル土地
施設
外人
熊大
地域共同研究センター
衝撃・極限環境研究センター
半導体兼業
施設
宮崎大
宮崎医大
宮崎産業経営大
IT兼業
施設
(3回認可)
佐賀大海洋エネルギー研究センター 知的リーディング産業兼業
施設
外人
他のタイプの産学官提携(3回認可)
福岡県北九州市/福岡市
(ロボット産業振興会議)
ロボット(1)公道歩行
土地: 開発公社土地賃貸許可
兼業: 国立大学教員兼業許可
施設: 国立施設利用規制緩和
外人: 外人在留活動規制緩和
 大人気なのが、産学提携特区である。

 確かに、誰が見ても、今までどうしてこんなことができなかったのだ、というような規制緩和だ。皆がとびつくのは当然だろう。
  ・ 国立大学教員兼業の許可 (国家公務員法)
  ・ 国立施設利用規制の緩和
 (国有財産法)
  ・ 外人在留活動規制の緩和
 (出入国管理法)

 当然ながら、一部の人を除いて、誰でもが大歓迎の方策だが、これで効果があがる保証はない。

 もともと、この規制で大学発の新産業が勃興しなかったというなら、確実に成果は生まれるが、そうでなければ効果は期待できまい。
 前者でなければよいのだが。

 ・・・と発言すると、烈火のように怒る人々が多い。
 苦労してここまでこぎつけたことを考えれば心情はわかる。しかし、リアリズムに徹すべきだろう。

 リアリズムとは何を意味するか、一例をあげよう。

 大学での研究予算には、制度の縛りがある。これを聞くと、企業人は、産業界での年度予算と同じことと思いがちだ。しかし、似て非なるものである。
 大学に金が入るのは10月頃だ。納品/検収を終えて支払いまで、年度末の3月には終えなければならない。これを守って、特殊な装置の発注契約ができる筈があるまい。しかも、業者との癒着を防ぐために、競争入札を義務つけているところも多い。この制度に現実性など皆無だ。
 「弾力的運営」をしない限り、まともな研究活動はできない。
 しかし、現実には、これで動いているのである。
 (もし、動けなければ、ストライキ突入必至だ。一歩間違えば、こうした仕組みは腐敗の温床になりかねない。しかし、不思議なことに、微妙な倫理観が働くから、大きな問題にならないだけである。)

 それでは、これで問題はないのか。
 そんなことはない。

 突然赴任した人にとっては、過酷な制度である。すぐに仕事は始められない。
 つまり、この制度下では、同じ大学で継続的に仕事をするか、そのような人と一緒に仕事をしない限り、まともな研究活動はできないのである。
 これで人材流動性が生まれる訳がないし、異質な人材が日本逃亡を図るのは当然である。
 日本で、徒弟制から抜け出れば、大変な苦労が待ち構えているのだ。

 制度疲労は限界まできている、と見た方がよい。
 特区は、こうした状況を変える方向に行くか、延命策になるのかはわからない。活用する人達の意識次第である。

 重要なのは、制度改革そのものではない。本気で目標実現に向かって進む人達の集団ができるか、である。
 認可の仕組みを変えたり、ハコものを整備しても、本当に産業を興したい人達が集まる場にならなければ、何の効果もない。

 従って、特区作りの肝は、「苦労しても、挑戦したい」と考える人を集めることができる、「魅力作り」である。

 この観点で、一番分かり易い特区は「希少糖」である。この分野で世界一になるとの構想を打ち出しただけで、インパクトは十分ある。この分野に興味を持つ人は参加したくなるだろう。
 というより、その領域でビジネスを考えれば、なんらかの形で入らざるを得なくなろう。
 先端を走る人が集まり始めれば好循環が生まれ、一気に拠点化する。

 もちろん、全く違う発想もありうる。本当に魅力があるのかわからないが、「リゾートの雰囲気で働こう」との呼びかけも一理ある。

 第一歩は、真似しがたい特徴の明示化と、人材流動性の担保である。

 このような考えに欠ける特区は空しい。
 地域間競争で優位を実現できる根拠がないからだ。

 真面目に特区を追求する姿勢には頭が下がる思いだが、報われそうにない努力は避けるべきだろう。
 やるべきことは、他にいくらでもある。

 --- 参照 ---
(1) 「九州地域ロボット産業実態調査報告書」経済産業省九州経済産業局(2003年3月)によれば、大学や公的研究機関の研究開発が進んでいるが、実用に耐えるための技術開発が遅れている。


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