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2004.3.11 |
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産学連携特区の危うさ…
確かに、誰が見ても、今までどうしてこんなことができなかったのだ、というような規制緩和だ。皆がとびつくのは当然だろう。 ・ 国立大学教員兼業の許可 (国家公務員法) ・ 国立施設利用規制の緩和 (国有財産法) ・ 外人在留活動規制の緩和 (出入国管理法) 当然ながら、一部の人を除いて、誰でもが大歓迎の方策だが、これで効果があがる保証はない。 もともと、この規制で大学発の新産業が勃興しなかったというなら、確実に成果は生まれるが、そうでなければ効果は期待できまい。 前者でなければよいのだが。 ・・・と発言すると、烈火のように怒る人々が多い。 苦労してここまでこぎつけたことを考えれば心情はわかる。しかし、リアリズムに徹すべきだろう。 リアリズムとは何を意味するか、一例をあげよう。 大学での研究予算には、制度の縛りがある。これを聞くと、企業人は、産業界での年度予算と同じことと思いがちだ。しかし、似て非なるものである。 大学に金が入るのは10月頃だ。納品/検収を終えて支払いまで、年度末の3月には終えなければならない。これを守って、特殊な装置の発注契約ができる筈があるまい。しかも、業者との癒着を防ぐために、競争入札を義務つけているところも多い。この制度に現実性など皆無だ。 「弾力的運営」をしない限り、まともな研究活動はできない。 しかし、現実には、これで動いているのである。 (もし、動けなければ、ストライキ突入必至だ。一歩間違えば、こうした仕組みは腐敗の温床になりかねない。しかし、不思議なことに、微妙な倫理観が働くから、大きな問題にならないだけである。) それでは、これで問題はないのか。 そんなことはない。 突然赴任した人にとっては、過酷な制度である。すぐに仕事は始められない。 つまり、この制度下では、同じ大学で継続的に仕事をするか、そのような人と一緒に仕事をしない限り、まともな研究活動はできないのである。 これで人材流動性が生まれる訳がないし、異質な人材が日本逃亡を図るのは当然である。 日本で、徒弟制から抜け出れば、大変な苦労が待ち構えているのだ。 制度疲労は限界まできている、と見た方がよい。 特区は、こうした状況を変える方向に行くか、延命策になるのかはわからない。活用する人達の意識次第である。 重要なのは、制度改革そのものではない。本気で目標実現に向かって進む人達の集団ができるか、である。 認可の仕組みを変えたり、ハコものを整備しても、本当に産業を興したい人達が集まる場にならなければ、何の効果もない。 従って、特区作りの肝は、「苦労しても、挑戦したい」と考える人を集めることができる、「魅力作り」である。 この観点で、一番分かり易い特区は「希少糖」である。この分野で世界一になるとの構想を打ち出しただけで、インパクトは十分ある。この分野に興味を持つ人は参加したくなるだろう。 というより、その領域でビジネスを考えれば、なんらかの形で入らざるを得なくなろう。 先端を走る人が集まり始めれば好循環が生まれ、一気に拠点化する。 もちろん、全く違う発想もありうる。本当に魅力があるのかわからないが、「リゾートの雰囲気で働こう」との呼びかけも一理ある。 第一歩は、真似しがたい特徴の明示化と、人材流動性の担保である。 このような考えに欠ける特区は空しい。 地域間競争で優位を実現できる根拠がないからだ。 真面目に特区を追求する姿勢には頭が下がる思いだが、報われそうにない努力は避けるべきだろう。 やるべきことは、他にいくらでもある。 --- 参照 --- (1) 「九州地域ロボット産業実態調査報告書」経済産業省九州経済産業局(2003年3月)によれば、大学や公的研究機関の研究開発が進んでいるが、実用に耐えるための技術開発が遅れている。 政治への発言の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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