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2004.3.21



国会の鶏肉安全性論議の質…

 鶏インフルエンザ騒動も一段落したようなので、政治家の動きを見てみた。
 まずは、第159国会 参議院予算委員会の議事録(2004年3月9日)を眺めたのだが、驚いた。というより、呆れたと言った方が正確かもしれない。
 卵や鶏肉の安全性についての質疑だが、なんと言っても、質問者の発言が圧巻である。

 まずは、そのママ引用しよう。読めばすぐわかる。(1)(ゴシック部分は引用者)

 ○福山哲郎君 例えば、卵の場合にはGPセンターで洗浄することによってウイルスが除去されると私は聞いているんですが、
  農水大臣若しくは食品安全委員会、事実をお答えいただけますか。
 ○委員長(片山虎之助君) 中川消費・安全局長。おい、早く出ろ。
 ○政府参考人(中川坦君) お答え申し上げます。
  基本的にGPセンターで処理をしますと卵の殻の表面に付いているものは清浄化されるというふうに理解をしておりますが、
  一部の科学的な研究者の知見でありますけれども、
  卵の中に入っている例もあるというふうに聞いております。
  ですから、完全かどうかという点につきましては少し精査をする必要があるかというふうに思います。
 ○福山哲郎君 安心なのか不安なのか全然分からないんですけれども、
  そこはっきりしてもらわないと国民の不安は広がるだけで、
  でも、そこで、中に入っていても加熱をすれば大丈夫だとさっき言っていたわけですから、
  そこはっきりしていただけますか。
 ○政府参考人(中川坦君) 私が申し上げたのは、家畜の防疫上の視点から申し上げたので、
  人が食べる場合の話ではございません。あの農水……
 ○福山哲郎君 人が食べる場合の話を今していたんじゃないか。
 ○政府参考人(中川坦君) いえ、そこのところは言葉が足らなかった。
  それはおわびを申し上げます。
 ○福山哲郎君 もう一度答弁をしてもらいたい。
 ○委員長(片山虎之助君) 局長、もう一度答弁。はっきり最初から。言い直さないで。
 ○政府参考人(中川坦君) 食品としての卵の安全性という点につきましては、これは問題はございません。
  私どもがやっているのは家畜防疫上の措置ということでございます。
 ○福山哲郎君 食品の安全性の議論を今しているんじゃないですか。
  農水大臣、どうですか、今の話は。
 ○国務大臣(亀井善之君) 先ほど申し上げましたとおり、鶏肉並びに鶏卵、
  卵につきましては、これを消費者の皆さん方お食べいただくにつきましては、
  先ほど食品安全委員会からも答弁ありましたとおり、安全で、
  人に感染する例は世界的にないわけでありますので、是非御理解をいただきたいと思います。
 ○福山哲郎君 少し具体的なお話にします。

 引用した後の「具体的なお話」の内容は、対策費用の話しだ。安全性についての質疑はここで終わる。
 一番呆れるのは、「農水大臣、どうですか、今の話は。」との質問だ。
 一体、大臣に、何を尋ねたいるのだろう。質問になっていない。具体的に、不明な点を質すつもりは全く無いのである。
 しかし、それでもかまわないのである。

 どう見ても、安全性について質問した記録を残すことが目的である。

 そもそも、この質問者は、自分が勉強してきたことを、わざわざ冒頭で開陳している。
 鶏肉と卵を食べて安全と知っているのだ。にもかかわらず、わざわざ安全性について、国のお墨付きを求めている。
 しかし、その意図は果たされていない。返って、疑問を誘発させた。

 1 卵内部にウイルスが入ったとの報告がありそうだ。 (消費・安全局長は「ある」と示唆した。)
 2 生卵の安全性ははっきりしていない。 (消費・安全局長は「加熱すれば安全」とだけ答えた。)
 3 洗ってない卵は安全とは言い難いようだ。 (無洗浄卵が売られている。平飼いなら、殻に鶏ふんが付くだろう。消費・安全局長は洗えば「ウイルスが除去される」と発言しただけである。)

 本当に、「安全」を確認したいなら、こうした疑問に丁寧に答えることである。(2)

 ところが、質問者の姿勢は正反対である。

 ウイルス除去について、消費・安全局長は「少し精査をする必要がある」とはっきり「事実」に基づいて回答した。ところが、質問者は、完璧にその発言を無視する。
 調べなければわからない、と言っているにもかかわらず、突然、安全かはっきり答えろ、と畳み掛ける。まさか、卵にウイルスが入っても安全です、と言える訳があるまい。

 とんでもない質問者である。

 これこそ、日本の政治文化そのものである。
 こんなことが行われる限り、正直に答える官僚がいなくなって当然である。

 解説の要は無いと思うが、質問者は与党ではない。

 --- 参照 ---
(1) http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kaigirok/daily/select0114/159/15903090014006a.html
(2) 役に立つ質疑とは次のようなものである。
 「−鶏肉や卵を食べ続けても大丈夫なのか。
 大丈夫と思われる。
 人のインフルエンザと同じく、気道を通した飛まつ感染や接触感染が基本なので、
 通常の清浄な環境で生産された製品で、排せつ物や血で汚れていない限り食べても感染しない。
 WHO(世界保健機関)によると、
 中心温度が70度以上になるように加熱処理したものを食べるように薦めている。
 今のところ、食べ物を介して感染した報告例はないので、
 毎日食べ続けたとしても心配する必要はほとんどない。」
 http://www.kyoto-np.co.jp/kp/topics/2004feb/27/W20040227MWH1K000000173.html

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