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2004.4.28



民主主義の危機…

 2004年4月25日、衆議院補選が行われた。35%という、驚くべき低さの投票率の選挙区もある。(1)
 民主主義の危機と考えて間違いなかろう。

 川口外務大臣が、2002年11月11日に韓国で行われた「第2回民主主義閣僚級会合」でスピーチ(2)を行ない、「透明性、責任、参加というのは、民主主義の3つの重要な柱」と発言している通り、参加なき民主主義などあり得ない。
 そもそも民主主義の柱が折れている状態なら、テロと闘う決意を語ったところで、たいした意味はない。

 政治もひどいものだ。国民としての責任を果たさない閣僚がいる。しかも、与党議員が、野党にもそのような人はいる、と平然と言い放つ。「責任」が重要とは考えていないことがよくわかる。
 「透明性」も無い。米国なら、国会(両政党対応)と政府それぞれに優秀な予算編成担当部隊がおり、現実ベースと政策実行ベースでの予測がつくらる。根拠も含めて公開されるのが普通だ。ところが、日本では、何がなんだかさっぱりわからないものばかりだ。議員が内容公開されていない、と語るのだから驚きだ。「透明性」以前の問題である。

 川口外相が海外でいみじくも語った、民主主義の基盤が足元で崩れかけているのだ。

 この状態で、老後のサービスをいくら議論しても、砂上の楼閣を築くだけに終わろう。

 最近、充実した介護体制を持つ北欧諸国を語る人が多いが、日本の将来像と見なすのは間違いだと思う。真似できる前提条件が揃っていないからだ。

 例えば、デンマークの消費税率(付加価値税)は25%、所得税率(3)は50%と、とび抜けて高い。公共および個人サービスに従事する人は就労人口の35%を占める、「大きな政府」の国なのである。
 こんなことができるのは、国の成長余力が高く、生産性も高いからだ。日本の遥か上を行く。日本は追いつくどころか、地位は低下しているのが現実である。

 しかし、問題は、これだけではない。民主主義が浸透しているから、「大きな政府」が可能なのである。
 実際、投票率は、80%とか90%に達すると言われている。もちろん、政治の透明性確保は言うまでもない。
 ここまで民主主義を進めない限り、「大きな政府」など目指すべきでない。

 民主主義が機能しない国は、間違いなく腐敗が発生する。「大きな政府」など、腐敗の温床となるだけである。
腐敗認知指数(4)
-- 国 -- 点数
シンガポール 9.4
香港 8.0
日本 7.0
台湾 5.7
韓国 4.3
中国 3.4
タイ 3.3

 そもそも、日本は、清廉な国ではない。
 と言うと、怒る方も多いだろうが、現実に、日本の腐敗認知度の点数(4)は高いとは言い難いのである。シンガポールや香港の方が清廉、とみられているのだ。
 (10点が最高に潔白で、0点が最低な腐敗との基準。1位はフィンランドで9.7 点。日本は21位で7.0点。ちなみに、米国7.5点、カナダ8.7点、英8.7点、独7.7点、仏6.9点だ。右表は近隣諸国との比較。2004年には、台湾や韓国がどう評価されるだろうか。)

 この状態で、「大きな政府」を維持すれば、民主主義の基盤が崩れる可能性が高いと思う。

 --- 参照 ---
(1) http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/senkyo/news/20040426k0000m010094000c.html
(2) http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/enzetsu/14/ekw_1111.html
(3) 税の課題は単純ではない。http://www.rieti.go.jp/jp/events/bbl/020730.pdf
(4) http://www.transparency.org/cpi/2003/cpi2003.en.html

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