← トップ頁へ
2004.7.29
交通インフラ投資のデメリット…
地方では、古い言葉がまだ生きている。「○○建設期成同盟」なる組織が動いているのだ。
○○には、飛行場、新幹線の駅、高速道路インターチェンジといった交通の要所が入る。
これが、僻地の悲願ならわかるが、それなりの産業基盤がある地方での話しなのである。30年前の発想が未だに力を持つから驚きである。
国土の均衡ある発展路線を捨て去った、と思っていたが、亡霊のように、この政策は生き続けているのである。
・・・と言うと、当該地方の人から猛反発を食らう。
言うことは決まっている。東京の住民には、地方の悩みなど理解できまい、と語る。
実は、実態を理解していないのは、このような人達の方である。
東京で、なにがおきているかわからないのである。
すでにビジネスマンのソウル日帰り出張が始まっている時代なのだ。
国内にしても、北九州は日帰り圏とは呼べなくなった。羽田-博多がほぼ1時間半だから、午前中に北九州で仕事を済ませ、すぐに戻って午後は東京で仕事、とのスケジュールが普通になってきた。ちょっと行ってこい、という地域なのである。
こんな話しをすると、だからこそ、交通至便な地にしたいのですよ、との反応が普通だ。その通りである。但し、それは東京側の見方である。
一方、地方側で考えても、同じことが言えるだろうか。
都会からの交通が便利になるということは、その地域は一時立ち寄り地になるのと同義である。都会のビジネスマンなら、コスト削減のチャンスとばかり、当該地域の「出張所」廃止に動くだろう。
これが、地方にとって歓迎すべき動きとは思えない。
交通至便にすれば、人は「都市」に流れる。もともと魅力があって、集積が進んでいる地域に人が集中するのは自然なことだ。今まで交流が難しかった地域の人々にとっては、交通至便化とは、「都市」への門戸が広く開かれたことを意味する。当然、「地方」から「都市」へと、人が流れる。
「地方」は、人を失うことになりかねないのである。そうなれば、住民/企業の数も所得も減る可能性が高い。繁栄どころではないかもしれない。
一方、観光業にしても、交通至便にしたところで、プラスに働くとは限らない。もちろん、交通が便利になれば旅行客が増える可能性はある。しかし、交通の要所にお金が落ちる訳ではなかろう。要所といっても、旅行客にとっては、単なる通過地点でしかないからである。
観光産業の隆盛は、交通よりも、観光内容で決まる。魅力があれば、遠路はるばる顧客は集まってくる筈だ。この逆はあり得まい。
実際、温泉ブームにもかかわらず、熱海は東京から交通至便の地にもかかわらず、観光地としては、繁栄から程遠い状況にある。この例を見ればわかるように、他の観光地に勝てる魅力を持つことが重要で、交通の課題は二の次の問題なのである。
もともと「地方」から「都会」へと人は流れるものである。
しかも、「都市」に比べて、地代が安く、労賃も低い、といった「地方」のメリットは、現在の製造業にとっては魅力は薄い。コストが嵩んでも、「都市」の方がビジネスチャンスが多いし、低コストを目指すなら海外の方が魅力的だからである。
つまり、「地方」は、人口規模で「都市」になれる目論見がない限り、交通至便策を追求すれば、衰退を招きかねないのである。
要するに、交通至便策とは「都市」間の競争政策なのだ。従って、「都市」になれきれない「地方」にとっては、「都市」との連携体制ができていなければ、デメリットばかり大きい政策といえよう。
政治への発言の目次へ
(C) 1999-2004 RandDManagement.com