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2004.8.10



宗教原理主義者の侵攻…

 アテネ・オリンピックの男子マラソンで先頭を走っていた選手が、観客席から飛び出してきた男に妨害された。
 傷害に至らなかったのが幸いだった。

 この後、選手は動揺したのか、力強さが落ち、ペースが遅れて、銅メダルで終わった。
 ところが、当の妨害を受けた選手は、安全管理体制を非難もせず「気にしてない、メダルとれて幸せ」と語ったのである。(1)
 このため、どの報道を見ても、選手の素晴らしい姿勢ばかりを取り上げている。

 確かにその態度は賞賛ものだが、妨害の扱いは軽く済ませるべきではないと思う。
 傷害をあたえなかったからよかったものの、本質的には、恐怖感を与えるテロの手口である。実際、選手はやられるかもしれないと感じたそうだ。
 ここが肝心な点である。

 ・・・と言うと、騒ぎすぎと思われるかもしれない。

 そう考えるのは、妨害男は変わりもの、との印象を与える報道しか見ないからである。

 「アイルランド出身の元司祭」で「意味不明の供述をしている」と記載されれば、誰もそれ以上気にしまい。
 ただ、「昨年のF1英国グランプリでも同じような格好でコースに入り込み、逮捕されていた。 」という点が気になる位だろう。この先何回も試みる、懲りない輩に違いない、と考えるのが普通だろう。
 その通り。この妨害男は、ウインブルドンやクリケットの試合にも乱入しようと試みたのである。
 しかし、思考は、この程度で終わってしまう。

 危険である。

 海外の報道を読むと、問題の本質がわかる。

 例えば、スポーツ専門のFoxSports.comを見てみよう。(2)
 ここでは、選手だけでなく、妨害者についても詳述している。

 この記事によれば、妨害男は、主張を書いた紙を背中につけていたという。思想を広めようと動いた確信犯であることがわかる。
 メッセージは意味不明どころか、鮮明そのものである。但し、聖書を読めない人には全くわからない。
 その主張とは、"The Grand Prix Priest Israel Fulfillment of Prophecy Says the Bible." だ。

 聖書に書かれている予言が成就する、というものである。
 “イスラエルの状況を見れば、聖書の予言通り進んでいるのがわかるだろう。聖書を信じて進め。”とのアジテーションと言ってよいだろう。

 要するに、宗教原理主義者の拡宣を狙ったテロである。
 この妨害者を、一握りの狂信的カルト信者や、滅多にいないとんでもない輩、と見なせるならよいが、そうはいかない。
 というのは、原理主義思想が世界に広がりつつあるからだ。

 イスラム原理主義のテロリストばかり注目しているが、キリスト教圏でも、同様に、過激な原理主義者がいることを忘れてはならない。原理主義の怖いところは、テロを煽る体質がある点だ。原理を共有していると、テロリストの心情に共感を抱くからである。

 従って、この手のテロリストに対しては、断固たる態度をとるべきである。

 --- 参照 ---
(1) http://www2.asahi.com/2004athens/athletics/marathon/TKY200408300272.html
(2) http://msn.foxsports.com/story/2835934

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