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2005.7.25
 
 


Gleneaglesサミットを振り返る…

 2005年7月6〜8日に開催されたGleneagles サミット(1)では、、アフリカの貧困問題と環境問題で大きな一歩が記されたとされている。

 そんなものだろうか。
 暫くたってからじっくり考えると、色々なことが見えてくる。

 さまざまな論評を読むと、突如発生したテロは別にして、この2つの課題に議論が集中している。前進と見るものと、見せ掛けだけのショウに終わったとの意見に分かれる。

 当然だろう。

 貧困問題とは米仏の国内農業保護策撤廃問題に他ならないし、環境問題は米中露のエネルギー消費抑制問題である。どちらも大国の国内経済問題そのものだ。各国政府が解決に動けば政治基盤が崩壊しかねないから、動ける筈はない。
 (欧州が二酸化炭素排出問題に熱心に見えるのは、仏は原子力発電産業振興、独は東独の発電所閉鎖、英は天然ガス転換といった既定路線に乗れるからである。)

 従って、解決の道筋をつけないサミットの論議は時間の無駄と見なす論評も結構多い。

 一方、こんなことは開催前からわかっていたから、議論が始まっただけでもプラスだという見方もできよう。

 ・・・しかし、プラスかマイナスかなど実につまらぬ議論とは言えまいか。

 こんな論評を読むより、自分の頭で考えた方がよい。

 そう思うのは、このサミットが、今までとは相当違うからである。

 特に目立つのは、Blair英首相/EU議長の活躍である。一人舞台に近かった。
 逆に言えば、米国はこの会議でリーダーシップを発揮する気がなかったということである。
 そのため、日本は蔭が薄かった。日米の緊密な連帯を誇示していた今迄とは大違いだ。

 このことは、グローバルなルールの決め方が変わり始めたということではないのか。

 そんな問題意識で集合写真を見ると面白い。(2)

 アングロサクソン国家と、古い欧州が精神的主柱となり、中国・インド・ロシアという大国と共に世界の方向を決めていこうという意志が現れているように映る。
 日本は意思決定に無縁な周辺国ということではないだろうか。

 これは、米国に対抗する欧州の思想的基盤だった社会民主主義が沈没したということと同義である。欧州はアングロサクソン国家のルールを受け入れざるを得なくなるのだろう。
 “Paris? Yes, it's beautiful,” “But it's a museum, or maybe a mausoleum. It's dead. It hasn't changed in years. I prefer London. It's dynamic and it's vibrant.”ということである。(3)

 欧州で生まれた民主主義は、結局のところファシズムとスターリン主義を生み出してしまった。この失敗を教訓化したのが社会民主主義だろう。ところが、これも機能不全であることが確認されたのだ。

 この状況を確認できたから、米国は外交姿勢を転換し始めたのではないかと思う。

 米国は、他国すべてを合わせてもかなわない程巨大な軍事力を持つ。今まではその力を背景に、正面きった覇権を求めていた。
 米国の方針に合わなければ、国際機関であっても、全く協力しないという姿勢がはっきりしていた。これが変わってきた感じがする。
 軍事力一辺倒の直接的圧力の覇権は非効率ということで、間接的なコントロールに変えていくつもりかも知れない。

 言うまでもなく、間接的手段とはマネーと石油である。

 世界のマネーの流れは、シティとウオールストリートが押えている。中国政府も、不良債権処理では、ウオールストリートのアドバイスに黙々と従ったというのが実態だ。資金の流れを決めるアングロサクソン国家に従わざるを得ない体制が出来上がっている。
 この体制をさらに強化すれば十分という自信があると思われる。
 唯一反撃できるとしたら、中国政府の米国債売りだけだろう。

 エネルギーについても、アングロサクソン国家が生産と輸送の急所を押さえた。イラク戦争で、中東の石油利権が、仏露中の手中に落ちないような仕組みがほぼ完成した。
 さらに運搬ルートもおさえた。
 露を経由しない石油パイプライン敷設は着々と進展中。そして、大消費国日中への海上輸送ルート(インド洋、マラッカ海峡、台湾周辺海域)を制圧できる体制も整備した。中国への陸上ルートにあたる国家にも軍事拠点を設置済みで抜かりはない。
 この動きに対抗する唯一の動きは、CNOOC(China National Offshore Oil Corporation)のUnocal買収位だ。(4)
 (この流れからいえば、天然ガス資源がたいしたことがないのなら、米国にとって、北朝鮮問題はさぼどの問題ではなくなる。)

 ついに、アングロサクソン型グローバル化に対抗する国がなくなったという訳である。
 今回のサミットはそれを確認する場だったということではないのか。

 --- 参照 ---
(1) http://www.g8.gov.uk/servlet/Front?pagename=OpenMarket/Xcelerate/ShowPage&c=Page&cid=1078995902703
(2) http://www.fco.gov.uk/Files/kfile/PostG8_PIC_G8andOutreachBig,0.jpg
  http://www.economist.com/images/ga/2005w28/SummitLeaders.jpg
(3) http://news.bbc.co.uk/2/hi/programmes/from_our_own_correspondent/4105412.stm
(4) http://news.bbc.co.uk/2/hi/business/4621161.stm


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