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2005.8.1 |
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リベラルへの不信感…George Orwellといえば、高校の英語の授業でのテキスト「Amimal Firm」を思い出す。今でも若者の読書文献にあがっているのだろうか。スペインでは、独裁者に対抗して戦った歴史を知らない若者が増えているそうだから、日本ではOrwellの名前など聞いたことのない若者ばかりかもしれない。 ・・・などど考えてしまったのは、The Boston Globeに、夏のビーチで読むのにGeorge Orwellの「1984」を忘れるなとのH.D.S. Greenway氏のコラムが掲載されていたからである。(1) ボストンといえば米国のリベラルの巣窟でもあり、そこに住む人達がお好みの新聞だからありえそうなことではあるが。 コラムを読んでいて、忘れていた単語を思い出した。 “newspeak”、“doublethink”、“the mutability of the past”である。 こんなコンセプトが「1984」で示されたのは、実に1949年のことである。 “Political language . . . is designed to make lies sound truthful and murder respectable, and to give an appearance of solidity to pure wind.”と指摘した言葉が光る。 我々の世界では、これらすべてが現実化していると言われれば、確かにその通りと言わざるを得まい。 墓場から、Orwellの深いため息が聞こえてきそうな気さえする。 こんな状態だと、昔ならすぐに立ち上がり、声をあげる人がいたものだが、今は滅多にいない。 と言うと活動している人達は怒るかもしれない。声を聞こうとしないのはお前だと言われそうである。 確かに、反対運動はある。しかし、残念ながら共感を呼ぶような「声」は聞こえてこない。 正直に語れば、リベラル的な行動に胡散臭さがつきまとうようになったからである。 リベラル的な行動が支持されてきた理由は単純だと思う。 社会の現状維持ばかり考える保守的な動きでは閉塞感しか生まれないからである。沈滞し澱んだ社会は必ず腐敗を招くから、革新は不可欠なのである。そのリーダーがリベラルと呼ばれていたのである。 ところが、今や、リベラルの多数派とは、保護主義を打ち出す現状維持圧力団体と同義になってしまった。その動きには革新性の欠片も感じない。安穏とした生活を守るためのご都合主義的な主張ばかりである。思想性や一貫性は感じられなくなってしまった。 と言うより、革新性発揮の場を道徳や倫理の分野に絞っているようだ。意見が割れそうな分野で、リベラル性を打ち出すことで党派性を示すのである。現実の政策は現状維持である。見方によっては、リベラルは一番の保守層に映るのである。 これは、米国の保守(共和党)とリベラル(民主党)の話に限らない。先進国共通の現象の感じがする。 日本の政治も同じだ。 郵貯や簡保で巨額の資金を集めて国家が管理する仕組みをそのままにしておけば、腐敗の温床であるし、無駄な税金の垂れ流しが続いてしまう。資金不足の時代には意義があったが、とうに役割は終えたシステムが何時までも生き残っている。 しかも、窓口業務はインターネット取引で対応できる時代になれば不要となる。電電公社が電話交換者を配置転換で乗り切るような芸当は無理である。業態転換は緊要な課題だ。 配達事業に至っては、すでの民間企業が好調な業績をあげており、国営の意義など全くない。 民営化以外の道など有り得ないのは自明だと思うのだが。 しかし、既得権益を侵される人達はこまる。 当然ながら、民営化潰しに動く。 ところがよくわからないのが民主党である。 「小泉首相の民営化は本当の民営化ではない」と主張する。口では民営化をとなえるが、どんな民営化なのかも提起しない。民営化する気があるとは思えない。 リベラル臭い風情を醸し出す野党だが、本質的には現状維持派なのであろう。 政権交代で何か変わるだろうか。(2) --- 参照 --- (1) H.D.S. Greenway「The return of '1984'」[2005年6月24日] http://www.boston.com/news/globe/editorial_opinion/oped/articles/2005/06/24/the_return_of_1984?mode=PF (2) 2005年7月26日、PHP総合研究所が「マニフェスト白書 2005」を発表した。 民主党は、マニュフェストのレベルからいえば政権党より明らかに上質であるのは間違いないのだが。 http://research.php.co.jp/seisaku/manifest/manifest20050726.pdf 政治への発言の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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