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2005.11.15
 
 


鳥インフルエンザ情報を眺めて…

 ついに欧州で、本格的に、鳥インフルエンザが発生し始めたようだ。
 ブルガリアでは、いち早く“crisis task force”が発足したところを見ても、ただならぬ状況のようだ。(1)

 欧州の全体像はよくつかめないが、かなり広範囲に広がっているようである。

 フランスでは鳥インフルエンザの脅威の話がとびかっている。様々な産業に影響が発生し、一気に世界経済が萎むかもしれないと見ているようだ。(2)

 それも当然だろう。
 抵抗力の差はあるが、鳥類なら感染する。そして、感染した鳥の糞がウイルスを媒介するのも間違いない。ウイルスは水中でも数日は生きているそうだし、糞なら相当長期間生きている筈だ。しかも、そこいら中で見かける鴨が感染する。
 欧州は、野生の鳥の来訪を歓迎してきた国々ばかりだから、遠からず欧州全土に広がると考えざるを得まい。
 欧州で、鳥から人への感染でも発生したら、それこそパニック状態に陥り、人の動きも止まってしまうかもしれない。

 すでに、鶏肉の消費が急激に落ちこんでいるそうだ。
 遠く離れたアフリカでの感染者発生のニュースまで流れたりするのだから、致し方あるまい。(3)

 加熱すれば、ウイルスは消滅することを理解しても、欧州は酪農国の集まりでもあるから、こうしたリスクには敏感だと思う。おそらく、鶏の羽を効率的にむしるための湯煎シーンを思い浮かべる人も多い。感染鶏の糞が湯に混じったら、と考えるだろうから、鶏の生肉購入が敬遠されるのは止むを得まい。

 しかし、この程度の話で終わっているのならよいが、鳥インフルエンザの変形版が生まれ、人から人へ感染するようになったら、大事である。
 その時はいずれやってくる。避けることはできない。

 毎年流行るインフルエンザなら、乳児と老人を除けば、死亡する可能性は低いが、この変形版はそうはいかない。
 健常人すべてを巻き込む。

 驚くほどの死者数に達するのは間違いない。ワクチン開発には最低半年はかかるし、抗ウイルス剤はとても足りない。
 しかも抗ウイルス剤とは、抗生物質が細菌を殺すような効果を発揮できる訳ではない。

 “Tamiflu”の場合、ウイルスを細胞膜表面に留め、体に広がるのを防ぐ作用があるだけの話だ。従って、効果が期待できるのは、発症初期数日だろう。それを過ぎれば、なんの意味もない。

 従って、発症と認定したら“Tamiflu”をすぐに投与できる仕組みが必要なのである。それには、医師の訓練が必要だ。
 2005年冬からのインフルエンザを通じて“Tamiflu”投与の予行演習はできるだろうか。
 (耐性菌発生のリスクを考慮すれば、むやみに投与するのは避けるべきだが、訓練には必要だと思われる。)

 そして、膨大な量の薬の備蓄も不可欠である。
 5日間分で約60ドル程度で、政府には半額で販売するというが、お金より、供給キャパシティ不足の方が問題である。
 いまや取り合いに近い。

 こうなることは、ずっと前からわかっていた筈だから、対処していれば問題はないのだが。
 日本の場合、マスコミが騒がないと、小さな対応でお茶を濁すことが多いので、どうなっているのか心配だ。(4)

 ということで、調べかけて、すぐにやる気が失せた。
 日本の感染症情報センターが熱心に更新している感染図を先ず眺めたからである。(5)  この図には、到着した公式情報のみしか掲載されないとのこと。

 香港の「20件発生、7人死亡」情報は掲載しない方針だそうである。常識からいえば、間違った見方を流すために、故意に作成した図と云わざるを得まい。

 湖南省で鳥インフルエンザが発生し、感染による死者が発生している可能性が高いのに、未だにこの姿勢を変えようともしない。ほとんど役にも立たない図を頻繁に更新して、一体、何をしたいのだろう。(6)

 こんな組織の活動を眺めたところで時間の無駄だ。

 --- 参照 ---
(1) ewsweb.bta.bg:8080 2005年10月17日
(2) http://www.iht.com/articles/2005/10/21/business/wbflu.php
(3) Reunionnaisで旅行で感染が疑われる患者発生との報道[2005年10月26日]
  http://www.lemonde.fr/web/articleinteractif/0,41-0@2-3214,49-703711@51-644973,0.html
(4) Dr. Sherry Cooper:“Don't fear or panic an economist's view of pandemic flue” Oct. 11, 2005
  http://www.bmonb.com/economics/reports/20051011/dont_fear_fear.pdf
(5) http://idsc.nih.go.jp/disease/avian_influenza/toriinf-map.html
(6) http://www.chinadaily.com.cn/english/doc/2005-11/06/content_491675.htm


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