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2006.1.17
 
 


米国流国際政治とは…

 Rice 国務長官の小論を読むと、Bush 政権の考え方がよくわかる。(1)

 短期的にみれば、よくわからないかもしれないが、長期的な大義を目指した動きであることを、知って欲しいというのである。

 “The significance of events, was shrouded in ambiguity. We groped after interpretations of them, sometimes reversed lines of action based on earlier views, and hesitated long before grasping what now seems obvious.”と、半世紀前の国務長官Dean Acheson の言葉を引用する。
 世界大戦後、米国が、確固たる方針に基づいて国際的に活躍したから、その後の平和が確立したのであり、今も同じと言いたいのである。

 言うまでもなく、現時点での大義とは、世界中に民主主義政治を普及させること。平和実現には、これ以外の代替案は無いという主張である。
 “It is the policy of the United States to seek and support the growth of democratic movements and institutions in every nation and culture, with the ultimate goal of ending tyranny in our world.”・・・Bush 大統領の演説が原点なのである。

 従って、当然、Asian values、Latin culture、Slavic despotism、African tribalism といった発想に囚われず動くべきとの主張につながる。
 換言すれば、そのためには、中東での戦争は避けがたいということに他ならない。

 Dean Acheson の行動で、欧州や日本が民主国家になり、平和が樹立された。同じように、現在の国務長官は、中東を民主化すべく行動する、という理屈である。国境を越えた米国の行動こそが、長期的には平和を実現する道に通じると考えるのだ。

 この考え方の背景には、大国間のパワーバランスで平和が保てる時代ではなく、すべての国が民主体制を敷かない限り平和は訪れないとの見方がある。
 非民主的な国家の存在が、世界にテロリズムを撒き散らす根源になっているという訳だ。

 このため、中東各国では選挙を行なわざるを得なくなっている。米国の意向に沿わなければ、経済発展が望めないから、政権としては致し方あるまい。しかし、民衆の支持は宗教勢力や反米勢力に傾きつつあり、選挙を通じて武装勢力の力はますます強まっていると言ってよいだろう。
 各国政権はさらに米国依存を強めざるを得ず、国民から見れば傀儡政権に映るようになる。軍事独裁を敷かない限り、こうした政権が弱体化するのは間違いない。つまり、民主化の旗のもとで選挙を進めれば、中東は、弱体腐敗政権か、反米の宗教政権ばかりになりかねない。
 このままなら、遠からず、中東は、反米一色に染まると思う。そして、反米テロリズムの一大温床ができあがるだろう。

 米国は、よく言えば革新的な国である。一度決めたら、断固として行動するのである。
 “This is admittedly a bold course of action, but it is consistent with the proud tradition of American foreign policy・・・”

 Rice 国務長官の小論は、こうした米国流の姿勢から見ると、実によくまとまっている。しかし、外部から眺めれば、そこに胡散臭さを感じる。
 と言うのは、民主主義の基準は曖昧だからだ。ご都合主義的に民主国家を認定する方針で進むと宣言した論文にすぎない、とみなすこともできるのである。

 これこそが、米国流政治の本質という感じがする。

 グローバル経済化論議とよく似ているからである。
 長期的な見れば、グローバル経済化で世界は発展するのは間違いないと思われる。逆に動けば、ブロック経済化の道を歩みかねないから、理屈ではその通りである。そして、現実に、中国・ロシア・インドがグローバル化の波に乗って成長している。
 しかし、グローバル経済化のおかげで、さらなる貧困に陥っている国も少なくない。悲惨な状況がそこかしこに出現しているのも、紛れも無き現実だ。
 それを生み出しているのは、どう見ても、米国のご都合主義的な政策である。

 --- 参照 ---
(1) Condoleezza Rice: “The Promise of Democratic Peace” [2005年12月11日]
  http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2005/12/09/AR2005120901711.html


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