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2006.4.10
 
 


平和主義勢力の問題…

 日本には、平和主義という、定義が曖昧な言葉がある。

 第二次世界大戦の惨禍を二度と招かないようにとの反省を出発点にした思想潮流だが、どのように反省したのかは、人によって変わる点が特徴と言えそうだ。

 ビジネスマン的リアリズムに徹すれば、単純化だけなら簡単である。

 平和維持の成功の鍵は2つに集約することができよう。

 なんといっても重要なのは、できる限り世界中の国から嫌われないようにして、孤立化を避けること。このためには、まず、信用されることだ。
 2つ目は、覇権を目指している国が何を考えているか、洞察力を発揮して、対立を避けること。覇権国との友好関係なくして、平和が成り立つ訳があるまい。

 この観点で眺めると、日本の自称平和勢力は、本気で平和を追求しているのか、疑問を抱かざるを得ない。正直なところ、逆回転を画策しているのではないかと思ったりする。

 そう思うのは、最近は、米国の言いなりになるなとの雰囲気が強いからである。独自の主張をせよとの、ナショナリズムを煽っているようにも映る位だ。
 但し、ナショナリズムに依拠した運動とは大きく違う点がある。米国占領下で決められた憲法は守れとの主張は堅固だからである。
 首尾一貫していない主張にもかかわらず、そんな主張が妥当かもしれないと感じている人が多いようだ。ブッシュ政権の外交政策が全く機能していないからそうなるのだが、危険な兆候である。
 孤立化に進みかねないからである。

 そもそも、日本には巨大な軍隊がある。しかも、日米軍事同盟が締結されている。これが現実である。
 従って、独自路線を貫けとの主張とは、軍事同盟を破棄して、自前の軍備増強路線に突き進む道をとれということに近い。そちらの方がよいのだろうか。

 あるいは、どちらに進もうが、平和から離れるから、どうでもよいということなのか。
 理解できない主張をすれば、信用を失うだけである。

 と言うより、国外からは、もともと日本の「平和主義」など全く信用されていないと思う。独りよがりの思想でしかなないからだ。

 なにせ、軍隊がありながら、軍隊を認めない憲法を守れと言うのだ。しかも、世界に誇れる憲法と言い放つ人までいる。
 国外からどう映るか考えてみないのだろうか。民主主義国では、守られない憲法とは“恥”以外のなにものでもないと思うが。
 都合に合わせて、軍隊はあったり、無かったり、言い換えるのだから、ずるくて信用できない奴等の集まりと映るに違いない。平和勢力とは、そうした態度を是とする人達と見なされかねないのである。

 圧巻は、イラク侵攻に対して、仏・独が反対しているから、日本もその勢力につけという主張をしたこと。最悪の主張である。
 反米3国同盟の発想に近いからだ。

 そもそも、仏は、世界の意向に反して、核実験を続行した国である。軍隊を保有する国にとって、敵国を破壊する点で、一番安価な武器は核爆弾だ。手放す訳があるまい。
 そんな仏が平和を追求しており、米が反平和と見なせる訳があるまい。反仏・反米ならまだしも、ともかく、米国の政策を阻止するなら、どんな勢力でも組むとの発想に近い。恐ろしく、思慮を欠く人達である。

 仏とは、エネルギー源は原子力と決めた国である。独は、もともと、豊富な石炭を持つ国だ。環境政策上ロシアの天然ガスに転換してはいるが、中東の石油に依存する必要などないのである。中東の原油に依存している日本とは違う。
 日本経済にとって、中東の原油は生命線である。そして、中東の安定は米国に100%頼っている。
 そんななかで、仏・独と連携して、米国の施策に反対すれば、米国から見れば、ご都合主義的に日本に利用されたということになろう。

 それでも、中東原油依存から脱却を図ろうとしているなら、少しは理解できるが、そんな話は全くでていないから、信用度ゼロである。
 一体、平和勢力は、どのような方向に進もうと主張しているのか、理解のしようがないのである。

 第二次世界大戦前の日本政府の動きを想起させられる。おそらく、海外から、当時の日本の姿勢は理解できなかったろう。それに、日本は、嫌われていた。
 そして、資源の取り合いで孤立を深める。しかし、孤立は国内から熱狂的に大歓迎されたのである。

 方針なき平和主義も同じようなものに映る。
 海外からは、極めて理解しにくい思想である。しかし、国内からは大歓迎。
 どこからも信用されず、孤立を深めることになりかねない。

 米国の中東政策に反対するつもりなら、まずは、中東への原油依存を止めるしかないのである。

 現実的には、原子力発電主体への大転換を図るしか道はなかろう。
 そのような主張ができないなら、ご都合主義的な、胡散臭い民族運動と見なさざるを得まい。


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