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2006.5.16
 
 


ADBの活動に期待したい…

 2006年5月の連休に、HyderabadでADB(アジア開発銀行)総会が行われた。

 IMFでのアジア各国の地位は高まりつつあるが、アジア全体として、協調して政策転換を迫る動きに進むとは、とうてい思えない。ところが、そんな国々が集まったADB総会で、そんな状況を変えようとの方針を固めたのである。

 ADBは、日本の財務省が握る組織と言われているから、ほんとかいな、という感じもするが。

 ともかく、二国間協定ではなく、WTOの包括的な自由貿易協定の精神で、ASEAN+3が主導して、東アジア自由貿易協定に進むべしとの正論が通ったのである。
 つまり、ADBが、為替調整はもとより、金融・経済警戒システム、通貨スワップ、アジア債権市場育成といった、政策全般の立案に積極的に関与すべきというのである。(1)

 国内事情優先で、歪んだ政策や、間違った国内運営を進める各国政府に対し、国際機関として、真正面から批判を行うどの姿勢を打ち出した訳だ。

 日本の新聞を見ていると、ASEAN+3がACU(アジア通貨単位)構築の検討に入るとの話ばかり報道されているが、そんな問題は末梢的なことである。ADBの通貨バスケットを単に一般化させるとも言えるからだ。(オーストラリアやニュージーランドを入れるかもわからない段階で、将来性を検討することができる訳がない。)

 米国が期待するような形で、各国が「改革」へと踏み込めば、通貨統合は、それほど難しいことではないかもしれない。
 アジアが持つ膨大な外貨準備を上手く活用すればよいだけのことだからである。

 言うまでもないが、「改革」の一歩とは、膨大な米国債権を積み上げる外貨準備一辺倒方針を捨てることである。外貨準備ではなく、インフラ整備や教育・社会保障のレベル向上のための投資に使い始めるということである。
 ADBが、警戒システムを完備し、短期資金の異常な流れに対応できるようにしておけば、過度な外貨準備などいらなくなる筈だからだ。

 もし、こんなことができるようになれば、アジア通貨高・ドル安など、総体でみれば、余り問題ではないかもしれない。(2)

 ともあれ、アジア経済圏統合の流れがスムースに進んで欲しいものである。

 期待が膨らむのは、黒田総裁の主張(3)が素晴らしいからである。

 国際機関の役割とは、各国政府に課題を明確に示すことであり、それによって、アジアの政治経済を安定化させることだ、とはっきり言い切っている。

 今回のADBでも、開催地のインドに生産性向上を図るように語ったり、二国間協定を急ぐ各国政府を批判したり、本気である。
 そして、腐敗・汚職をなくしガバナンスを高め、環境を考え、エネルギー需給の均衡化を図る、・・・等々、明確に課題を設定して、解決の道を探ろうというのである。
 それにより、1日2ドル未満で生活する人を減らそうというのである。そう、現在は、19億人にものぼるのである。

 日本にとっては、すでに、G7より、ADBの方が重要な機関になりつつあると言えそうだ。
 おそらく、これは米国にとっても当てはまる。

 --- 参照 ---
(1) http://www.adb.org/Documents/Translations/Japanese/ms2006-jpn-press-club.pdf
(報道) http://www.adb.org/Documents/Periodicals/JRO/jro-mar06.asp
   Reuters News“ADB calls for the unified East Asia free trade pact”
   the Japan Times“ADB to launch ACU to gauge currency moves" article”
   Asahi-International Herald Tribune“ADB head propose G-7 for East Asia”
   Financial Times“ADB chief hits out at noodle bowl trade”
   Japanese Mainichi and Asahi Newspapers“ADB President Kuroda propose the single East Asia FTA”
(2) William Pesek Jr.: “It's Feeling Like 1996 in Asia Once Again”Bloomberg[2006.5.5]
  http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=10000039&sid=aqhi8_YszJ2g&refer=columnist_pesek
(3) Haruhiko Kuroda: “The right kind of growth for Asia”International Herald Tribune[2006.5.2]
  http://www.iht.com/articles/2006/05/02/opinion/edkuroda.php
  (http://www.deccanherald.com/deccanherald/may82006/editpage155457200657.asp)



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