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2006.6.8
 
 


韓国政治の体質を眺める…

 韓国が貿易黒字基調を実現したのは、確か2000年頃だと思う。経済成長を輸出で支える体制ができあがったのは最近である。
 それが、再び、赤字に戻りつつある。

 2006年第1四半期の貿易赤字額は史上最高だそうである。(1)

 従来型の為替介入によるドル高では乗り切れないだろうし、この先、原油高が消えるとも思えない。もともと、自動車やエレクトロニクス製品はキーとなる部材や設備機器は日本から輸入するしかなく、輸出増は自動的に輸入増に繋がるので、そう簡単に大幅黒字化できない体質だ。しかも、輸出先はもっぱら中国と米国であり、特定分野以外の競争力は弱く、そこでは、中国が競争相手として台頭している。
 と言う事は、この先、大きな改善は難しいと言うことである。

 貿易赤字化は問題だが、よく考えると、これは韓国が抱える問題の一つでしかない。そもそも、国内経済が低迷一途なのである。
 もっと大きく見れば、韓国は時代の転換点を迎えているとも言える。大げさな表現かもしれぬが、国家としての浮沈がかかる意思決定に迫られていると言ってもよいだろう。

 ところが、韓国国内にはそんな感覚を持つ人は少ないようだ。新聞を見る限り、議論もされていない。驚きである。
 政治の中心課題も、内輪もめの乗り切り策のようだから、為政者には危機感は全く無い。それに加え、日本との関係を悪化させたいらしいから、全くもって驚きである。この国の政治家は、大国然として振る舞いたいのである。国際舞台で目立つことがなによりも嬉しいし、それが国内人気に繋がるようである。

 この点では、北朝鮮のトップの発想と、瓜二つと言えよう。南北の波長は合うに違いない。

 日本流ならこんな動きはとるまい。まずは、無理せず分相応で行こうということになる。
 韓国とは正反対である。
 韓国が反日運動を始めると、キョトンとして傍観者的に眺めるだけの日本人が多いのは、こうした文化が理解できないからだろう。

 と言っても、理解できないのも当然かもしれぬ。
 日本の場合は、黙っていても、「独立」など当たり前だからである。わざわざ、大国と対立してまで、独自色を打ち出して、ことを荒立てるのは大損と考える人の方が多い社会でもある。
 「独立」自体が並大抵なことでは実現できない韓国はそう考えないようだ。発露の場がなければ、埋もれてしまう感じがするのだろう。こうした環境の差が価値観の差となって現れるのだと思われる。

 韓国はそれなりの大きさの国ではあるが、大国ではない。ところが、周囲といえば、北はロシア、西南は中国、東は日本なのだ。そして、これに米国がからむ。この他に隣国は無いから、小国連合もなりたたない。
 大国しか無いから、このすべてと友好関係を結ぶとの理想論は無理だ。どちらに軸足をかけるか、常に考える必要がある。従って、「独立」を維持するためには、露・中・日・米のどれかを選ぶことになる。いつも意見は分かれる。国内政治勢力はまとまらない。強行に進路を決めたりすると、反対勢力は、海外の大国の力を借りようと動くことになる。
 お蔭で、政治の内紛が無くなることはない。

 内紛を避けようと思えば、反日といった、民族「独立」的なイデオローギーを振り撒いて、国内をまとめる以外に手はないのである。
 南北統一にしたところで、離散家族、拉致、等の現実的な問題解決には興味などない。それこそ、北朝鮮の核が韓国の核となる道を探しかねない。要するに、南北統一運動とは、大国化の夢の裏返しにすぎない。現実性はゼロでも、夢が嬉しいのである。
 ほとんど得るところが無い対立を煽ったり、夢を語ったところで、何の解決策にもならないのは明らかだと思うが、それでも追求するのが、この国の特徴である。

 日本流なら、先ずは、どこに軸足を置くか決めることになる。その意思決定に基づいて、メリットの極大化を図ることこそ、「独立」を守ることになると考えると思う。一方、この国はそうは考えない。従属の道は歩まないと叫び続けることで、「独立」が守れると考えるのだ。
 飢餓が発生する政治しかできない北朝鮮政権支持を打ち出すのも、心根では強いシンパシーを感じているからに違いない。

 ようするに、この国は、現実を見て考え抜いて自ら動くのではなく、民族イデオロギーに耽溺するのである。これが、楽しいのだろう。
 どこまで本当か疑問な点もあるが、優秀な人が海外から戻らなくなりつつあるとか、在日組織の運動に関心を持たない人が増えているとの話を耳にする。若い人がそんな態度を示すものわかる気がする。偏狭なイデオロギーで国を救える筈がないからである。

 前置きが長くなったが、リアリズムに徹して状況を眺めると、韓国は大変な状況である。

 国内経済は、はっきり言って、悪い。これから良くなる理由は見つからない。
 そんななかで、周囲を眺めると、つらい状況にあるのがわかる。

 先ず、中国だが、経済発展が続いている。ところが、韓国にとっては、重要な市場が好調でも喜ぶ訳にもいかない。日本の場合は、中国の安価な労働力を利用しても、それは輸出拡大にも繋がるからWin-Winの関係にもできるが、韓国の場合はそうはいかないからである。日本と違って、研究開発力で食べていける産業は極く僅か。中国の労働力利用は、国内投資減少と、国内雇用喪失に繋がる。しかも、これから先、中国製品が韓国市場に怒濤のように入ってくる。貧困層はますます苦しくなるだろう。

 一方、もう一つの主要輸出先の米国は、在韓米軍再編を急いでいる。遠からず、朝鮮半島での展開を止めることになろう。この流れは、韓国への投資も鈍ることを意味するかもしれない。
 すでに、投資先は限定されてきた。
 韓国の巨大企業の外資比率はすでに5割を超えているようだ。株主からの収益向上要求は益々厳しくなる。どう考えても、国内雇用拡大方向には進むまい。その上、配当として海外へと流出するお金も増える。巨大企業は好調でも、国民所得が増えるとは限らない。

 次が、日本。韓国経済危機の際には、すぐに援助の手を差し伸べた国である。今後は、このようなことはなくなるだろう。政治家が世代代わりし、日本にプラスにならない施策は見向きもされなくなるからである。
 韓国にとっては、経済発展のためのシーズの役割を果たしてきたが、今後も利用できるかは疑問である。

 そして、ロシアはプーチン政権が強力な指導力を発揮している。韓国弱体化を予想し、その過程でメリットとなりそうなタネを探しているに違いない。

 もう一つは、北朝鮮である。
 韓国からすれば、北政権支援は大前提だろう。北政権が破綻でもすれば、膨大の数の貧民が南に流れ込んできて、国家運営どころではなくなるからだ。東西ドイツ統一のようにはいかないのである。南北分断の続行しかないのだが、それは口が裂けても言えない。

 ・・・となるが、韓国の現政権もそう考えているとは限らない。

 現政権は、先ずは、北に本格的投資を進めるつもりなのだ。大国が行うような施策を展開しようというのである。韓国規模の経済で行うのは、冒険的政策と言わざるを得ないのだが。
 投資と言っても、その中味は、中国より圧倒的に安い北の労働力を使える工場団地を作るだけのこと。北の政権を支える点では価値はあるが、工場が稼動し始めれば、確実に韓国国内の底辺層の雇用を奪うことになる。
 国内投資に回すべき資源を北に回し、雇用も失うのだから、国内経済は悪化一途だろう。

 北朝鮮経済振興のために、どのように大国の資金を流入させるか頭をひねるのならわからないでもないが、韓国企業のために低賃金労働者確保策を提供する施策を打つのだ。
 不可思議な政権である。高所得者負担増で、低所得者層への配分を図ると聞いていたが、現実は、低所得者層の一層の貧困化政策の展開である。一体、どうなっているのだろう。

 どの大国に軸足を置くかは、えらく難しい決断だから、旗色を鮮明にせず、とりあえず北政権支援だけ進めるということかも知れぬ。

 親中路線は、疎米化に繋がるから、無理筋に見える。と言って、親米、疎中にしたから道が開ける訳でもない。と言って、親露でメリットが生まれるとは思えまい。
 そして、親日は、舵取りが難しい。国内の反日気分を言っているのではない。日本から見れば、親韓の経済的メリットが少なすぎるため、無視されかねないからだ。といって、疎日や反日を進めたら、没落の道を進みかねない。
 もともと、日本の産業のコピーで経済発展を図ってきた国である。日本との関係悪化は、発展の原動力を弱めることに繋がりかねないのだが。

 こんな状況を考えると、緊張関係を作りだして、問題先送りをする方針なのだろう。

 北も南も、政治体質はかわらないようである。

 --- 参照 ---
(1) http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/06/03/20060603000019.html


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