↑ トップ頁へ

2006.10.12
 
 


北朝鮮問題は米国にとって正念場…

  連日、北朝鮮の核実験問題がトップニュースになっているようだが、予想通りのことであり、冷静に世界情勢を見つめる必要があろう。

 先ず、世界経済全般からいえば、順調に拡大基調であると言ってよいだろう。結構なことである。これが、世界の戦乱を防ぐ上で一番大切である。
 しかしながら、細かく見れば、順調でない国々も多々見かける。つまり、経済拡大の裏で、不均衡は広がっているのである。しかも、WTO ドーハ・ラウンドは完全な失敗に終わったから、発展途上国が貿易で発展を狙うのも難しくなった。と言って、最大輸入国の米国との自由貿易協定締結はできかねる。セーフティネットなどが無く、公的支援余力もほとんどない状態だから、労働市場に政府が介入せざるを得ないからだ。貿易自由化で失業者が溢れる状態は政権転覆を意味するかも知れず、自由貿易どころではないのが実情だろう。

 早い話、貧国から見れば、米国は世界の指導者として映らないということである。

 と言って、こうした問題解決に、国連がリーダーシップをとれる立場にはない。その上、国連組織自体が、官僚風土に蝕まれており、非効率極まりない。汚職の防止さえできない状況で話にならない。
 それに、もともと、国連は、米国の方針に逆らえる組織ではない。米国が絡む問題での解決は至難の業なのである。しかも、権力を発揮できる安全保障理事会にしても、世界のパワーバランスを反映していない。現実に、安保理決議があったところで有名無実状態だ。
 長らく国連改革は叫ばれているが、口だけ。会議は踊る状態としか思えない。機能不全状態と言って間違いなかろう。

 そもそもこうなるのは、米国が、冷戦後の政治構造をはっきりさせず、成り行き任せにしているからである。  典型はNATOの処遇である。一体、この組織に何の役割があるのだろう。誰にも、さっぱりわからぬまま放置され続けているのだ。
 米国とソ連で世界を安定させる構造がなくなってしまえば、核拡散防止条約の意味もなくなる。実際、ダブルスタンダード化しており、なにがなんだかわからぬ条約になり下がっている。

 そんななかで、北朝鮮が米国に対して挑発を始めたのである。

 単純に見れば、キューバ同様、反米国として、米国から生存の保証を得る腹積もりの行動に映るが、発展途上国の米国離れを鼓舞する効果も生まれることに注意した方がよい。
 先進国の視点では、北朝鮮問題は、北東アジアの安全保障問題だが、発展途上国から見れば、それだけではあるまい。米国の単独覇権主義が最終的に破綻したように映るのではなかろうか。結局のところ、米国は北朝鮮に対して何もできないし、行動する気もない、という風に解釈することもできるからだ。
 そうなると、発展途上国では、米国離れが進むことになろう。米国政権との友好を続ければ、政権転覆になりかねない情勢が到来するということである。

 NATO傘下のトルコや、アラブのリーダーと自負するエジプト、米国と連携するパキスタン、さらには米国軍の駐留を認める宗教国サウジアラビアといった面々まで、大挙して米国離れを始めるかも知れない。米軍は排除され、自衛力(国軍)強化が図られることになろう。
 こうなると、米国は、覇権国としての地位を失う。

 北朝鮮問題は、米国にとって正念場である。
 言うまでもないが、それは日本にとっても同じこと。

(参考)
“Strategic Survey 2006”The IISS Annual Review of World Affairs
http://www.iiss.org/publications/strategic-survey


 政治への発言の目次へ>>>     トップ頁へ>>>
 
    (C) 1999-2006 RandDManagement.com