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2006.10.16
 
 


北東アジア問題とは結局のところ中国問題…

 北朝鮮の核実験をきっかけとして、北東アジアの政治状況が一気に変化し始めた。

 ことの発端は、安倍首相が就任後直ちに中国と韓国を訪問したことにありそうだ。
 ロシアを除けば、どの国にとっても、豊富な地下資源の魅力を除けば、金政権の北朝鮮は厄介者でしかない。そのため、金政権は、日中韓米が協力して北朝鮮に対応するような体制を作らせないことが重要課題となる。できる限り、4カ国が反目しあうように画策し続けるしかない。今回の核実験にしても、騒動を発生させ、4カ国が、意見の違いでゴタゴタすれば大成功。そして、韓国や日本の金政権支持者が動き易くなれば、万々歳ということになろう。

 言うまでもないが、安倍首相訪問とは、靖国参拝問題を棚上げして非政治化することを意味する。3ヶ国は、思想信条にこだわらず、問題を曖昧にするとの政治的な決断に踏み切った訳である。要するに、プラグマティズムで進む姿勢を鮮明にしたと言える。
 日中の経済的連携を緊密にできない限り、世界経済の成長基調は不安定要素を抱えることになるから、当然と言えば当然だが、その埒外におかれ、未だに戦争状態にある北朝鮮にとっては面白い筈がない。
 ここで動かなければ、政権が保てるとは思えない。核実験以外に手はなかろう。

 しかし、プラグマティズムの協調体制とは、時代の流れに乗って、成り行きまかせになることを意味するかもしれない。従って、将来のあり方を考えながら、進めていく必要があろう。

 長期的に見れば、問題は中国という点を忘れる訳にはいかないと思う。

 今もって、中国は、共産党の軍事独裁政権下にあり、民主化の動きはほとんど見えない。植民地を抱え、世界の大国化の道を邁進している。レーニンが描いた帝国主義時代の体制が延々と続いているとも言えよう。
 大陸間弾道弾で他国を核攻撃する体制を整えているだけではなく、海洋国家でもないのに、海軍力も着々と強化し続けるという、不気味な方針を進めている国なのだ。
 この状況を眺める限り、北東アジアの安全保障問題で留意すべきは、北朝鮮の核そのものより、中国がこれに対してどう動くかである。

 特に、経済制裁が行き過ぎて、金政権が倒れた場合どうなるか、考える必要があろう。

 韓国の国力を考えれば、民主主義的に、最貧状態の軍事国家を統合するなど理想論にすぎない。流入する難民を抑えることができなければ、大混乱に見舞われること間違いなしだからである。
 もしそうなった時、日本政府は、韓国の民主主義体制を維持するために、徹底的な支援をする腹つもりがあるのだろうか。北朝鮮の経済制裁を進めるということは、そういうことならよいが。
 この点をはっきりさせずに、北朝鮮問題での日韓協調など夢物語でしかないと思う。

 もし、そんなことが無理というなら、中国に下駄を預けるしか手はあるまい。
 要するに、中国が北朝鮮軍をコントロールし、軍事的な平定により難民発生を抑えるという話。朝鮮民族分断が固定化する上、民主主義から遠ざかるから、賛成する人は少ないだろうが、戦乱や大混乱よりはましな気がする。

 こんなことを考えると、北東アジアの最大の問題とは、中国と今後どう付き合っていくか、ではないかと思われる。
 韓国にしても、遠からず、中国との間で政治的なコンフリクトが発生すると思われる。
 そして、中東で泥沼に引きずり込まれている米国には、アジアの安全保障を約束できる力は無くなってくる。

 そうなると、中国と軍事バランスをとるために、日本に期待が集まる可能性もある。アジア諸国が、日本の再軍備反対から、賛成へと一変する訳である。
 アジアの安全保障に日本が係わらざるを得なくなるかも知れない。
 その準備が必要になってきたようである。

 --- 参考 ---
Philip Bowring: “Asia will welcome a more outgoing Japan” the International Herald Tribune [2006.10.1]
http://www.iht.com/articles/2006/10/01/opinion/edbowring.php


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