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2007.2.7 |
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同一労働同一賃金へ進むのか“所謂「格差問題」或いは、所謂「ワーキング・プア問題」といった問題については、正面から取り組んでいく”ということで、『成長力底上げ戦略構想チーム』が、2007年2月1日に発足したという。(1)実に唐突だ。 しかも、このような課題を緊急対策として扱うというのだから、その発想にはついていけない。 内閣支持率が下がる一方で、「格差問題」が、迫り来る選挙の争点にされそうな雰囲気なので、浮き足立っているようだ。支持率低下緊急対策なのだろう。 そもそも、所謂と連発していることでもわかるように、政府は所謂「格差」の実態を全く把握できていない。 統計データ解析によれば、格差増大の主要因は高齢化と単身/夫婦のみ世帯の増加だというのだから(2)、ワーキング・プアはどこに何万人いるのかさえわからないだろう。それでどうやって「ワーキング・プア問題」の緊急対策を作るつもりなのだろう。 官僚に頼んで、なんとか格好をつけるつもりなのかも知れぬ。 「格差問題」を指摘したのは、政府ではなく、OECD報告書(3)である。 『所得不平等と相対的貧困の縮小』では、人口高齢化も一因だが、労働市場における二重性も重要な要素と指摘。“1980年代半ば以降大幅に上昇し、OECD平均をやや上回るまでに上昇し、日本の相対的貧困率は今やOECD諸国で最も高い部類に属する”とはっきりと言い切った。 そして、正規労働者に対する雇用保護の緩和などの包括的アプローチにより、非正規労働者の使用の増加を反転させ、社会的弱者への公的社会支出を重点すべきだと提言。 要するに、生産年齢人口での所得格差の拡大を注視せよということだ。 そんな話が出ているのに、半年もたってから検討するという。 一体、何を考えているのかと言いたくもなるが、政府のやりたいことは明確だから、そんなものは気にしていなかったということだろう。 “同一労働、同一賃金の考え方を目指していく”政策を打ち出すつもりらしい。“自由化ということではない”(4)のである。 口では、イノベーション創出を目指すために、大胆な起業を勧めると言いながら、実際はスエーデンやドイツの協調的な政治へと進むのでなければよいが。 厄介なのは、街並み観光付の、スエーデン福祉実態視察旅行が流行っており、感激して帰ってくる人が多い点。税金は高くても、手厚い看護で、素敵な町と美しい自然を維持しており、素晴らしい国との声があちこちであがっている。支持者も増えているようだ。
現実には、2006年、スエーデンで12年間続いた社民政権が選挙で敗北。(5) ようやく、時代に合ったやり方にかえようと動き始めたところなのに、日本では、それを羨望の眼で見る人続出なのである。 2006年の選挙でModerate Party(保守)への投票率が、2002年の15%から26%へと急上昇したが、要するに“jobs and benefits”政策への支持が激減したということ。 政府が市場経済に深く関与する“同一労働同一賃金”政策は、プラスには働かないとの見方が広がったのである。一見、公正な制度に見えるが、給与は上がりもせず、下がりもせずという硬直したシステムでもある。つまり、ダイナミズムを殺す仕掛けでもある。沈滞に入り込むと、抜け出すことが難しいのである。 スエーデン型が成り立ったのは、早い話、雇用状況が悪化したら、福祉サービスセクターが大量のパートタイマーを雇っていただけのことである。(要するに公務員の大増員) こんなことを続けていて、経済が伸びるのか、ようやく目が覚めたというところだろう。 Edmund Phelps(6)にノーベル経済学賞が回ってきたのもたまたまではなかろう。 協調的な政治は心地よい響きだが、革新を殺す仕組みでしかないという主張に耳を傾けよということである。 【ビデオ】→ Edmund S. Phelps: Prize Lecture “My Kind of Macroeconomics: Modern Economies and their Policy Choices” (C) Nobel Web AB 核心は一つ。 企業家精神なくしては、経済発展は無いということ。 福祉国家の仕組みを即刻壊す訳にはいかないが、市場のダイナミズムを取り入れる工夫をしないと、腐敗と沈滞を招くしかないということだ。 スエーデンはそのための改革の一歩を踏み出したところである。(7) “同一労働同一賃金”など、まさに政治が市場をコントロールする仕組みづくり。そんなやり方から、社会不安無しに、どうやって脱出するか模索しているのだ。 その一方、市場ダイナミズムが欠落しているにも係わらず、これから“同一労働同一賃金”方式を導入して、労働規制強化を図ろうと画策するのが日本の政府。 ここまで支持率が低くなり、首相にもさっぱり人気がなくなれば、政権維持にプラスになるなら、どんな政策でもかまわないということなのだろうか。 --- 参照 --- (1) http://www.kantei.go.jp/jp/tyoukanpress/rireki/2007/01/31_p.html (2) 財務省財務総合政策研究所: “「我が国の経済格差の実態とその政策対応に関する研究会」報告書” 2006年6月 http://www.mof.go.jp/jouhou/soken/kenkyu.htm (3) “OECD対日経済審査報告書” 2006年7月 http://www.oecdtokyo2.org/pdf/theme_pdf/macroeconomics_pdf/20060720japansurvey.pdf (4) 動画でみる大田大臣諮問会議後記者会見(第2回) http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2007/0129/movie.html (5) http://www.sweden.se/templates/cs/Article____15415.aspx (6) Edmund Phelps: “Europe's stony ground for the seeds of growth” Financial Times 2000.8.9 http://www.columbia.edu/~esp2/FT2000.pdf (7) “The Swedish Reform Programme for Growth and Jobs 2006 to 2008” [20006.11.4] http://www.sweden.gov.se/content/1/c6/07/32/17/1786efff.pdf 政治への発言の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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