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2007.4.24 |
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儒教回帰は可能か中国で、2006年に出版された、「于丹 論語心得」(1)がベストセラー本になっているそうだ。著者(Yu Dan)は美女学者とか文化学者と言われているようで(2)、講義(3)が上手なので全土で人気爆発らしい。 文化大革命期には「批林批孔」だったことを思うと、感慨もひとしおといったところ。 もっとも、後になって考えれば、孔子批判とは単に国民的支持を集めていた周恩来が率いる実務派との政治抗争だったようだが。 しかし、毛沢東が孔子にまつわる施設を徹底的に破壊したことはよく知られている。山東省曲阜市の廟など、帝王が孔子を祀る儀式を行う場だから、帝王を否定する思想家が孔子を肯定する訳がない。 それに、中国は前の為政者が残したものを破壊する伝統があるし。 それにしても、中国共産党とは、訳のわからぬ思想基盤の組織である。 胡錦涛政権は、8つの栄誉と8つの恥辱(「八栄八恥」)という“社会主義的栄辱観”を2006年3月に全国政治協商会議で提起した。そして、今もってこの提唱運動を積極的に繰り広げている。 内容は、儒教道徳観のまる写しと言えるようなもの。なにが社会主義なのかさっぱりわからぬ代物。 格差拡大による対立が顕在化している上、不正腐敗も蔓延しているから、体制維持のための組織引き締めを狙ったとか、北京オリンピックに備えたモラル向上の動きと見る人がほとんどだろう。 それはその通りだろうが、発展途上国的な状況から抜け出す自信が指導部に生まれ始めた点を見逃すべきではなかろう。 胡錦涛はどうみても思想で率いるというより、中華思想のもと、プラグマティズムで動いているように見える。 おそらく、この先グローバル化の波に上手く乗って発展していくためには、世界に散らばる華人の力をまとめる必要があると考えているのだ。その最良のツールが「孔子」ということ。 儒教を通じて中国語と中華文化を広げ、中国の国際的地位を飛躍的に高める目論見と考えてよかろう。 1980年代の日本がどのように見られていたかを考え、中国は儒教的資本主義の国であるとのイメージを打ち出そうということ。 排他的なナショナリズムを鼓舞するよりはましではあるが、国学によって、(4)ナショナリズムを掘り起こそうとしているように見える。 しかし、貧農を基盤とする人民解放軍には毛沢東思想が根付いている可能性も高い。儒学と大きな齟齬が生まれかねない。胡錦涛政権は、乗り切れるのだろうか。 --- 参照 --- (1) http://english.people.com.cn/200703/04/eng20070304_354044.html (2) 「Yu Dan」 http://english.cri.cn/4026/2007/03/03/44@201372.htm (3) 「于丹説話」Lecture Room, CCTV http://discovery.cctv.com/program/bjjt/topic/C16975/02/index.shtml (4) “静かに広がる「国学」ブーム”人民中国 2007年1月 http://www.peoplechina.com.cn/maindoc/html/200701/46zhuanwen46.htm (参考) Richard McGregor: “Why fast-changing China is turning back to Confucius” Financial Times [2007.4.11] http://www.ft.com/cms/s/f9d40450-e84e-11db-b2c3-000b5df10621.html 政治への発言の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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