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2007.5.8
 
 


仏大統領戦を眺めて

 米国も注視していた、2007年フランス大統領選の行方だが、予想通りSarkozy候補が53%の票を獲得して決着した。
 この選挙には当初12人が立候補。(右4、左6、中道1、エコロジー1)
 それからの報道の様子を見ていて、フランスの国となりがよくわかった。株式市場の相場予想と変わらないノリ。
第1回大統領選投票結果(1)
保守 [UMP] Nicolas Sarkozy 31.18%
社会主義 [PS] Segolene Royal 25.87%
穏健 [UDF] Francois Bayrou 18.57%
極右 [FN] Jean-Marie Le Pen 10.44%
トロツキスト [LCR] Olivier Besancenot  4.08%
反EU・右派 [MPF] Philippe de Villiers  2.23%

 これは、オピニオン調査が好きな国民性もあるのかもしれない。世論調査には、実に、熱心なのである。(2)おまけに、大統領選への関心もやたらに高そう。
 日本のように、政治無関心層ばかりという状況とは逆。

 こんな風潮は、2大候補の挙動にも影響を与えることは言うまでもない。決戦投票に臨んだ両者ともに、大衆政治家の面目躍如。
 フランスの従来型政治家とは違う異端が表舞台に出てきた感じを受ける。
 換言すれば、現大統領も含め、従来型タイプは信頼感を失ってしまった、ということ。
 日本も同じ流れだと思うが、これを理解していない政治家も多い。

 報道を眺めると、大衆政治とはどんなものか、すぐにわかる。
 Sarkozy氏は移民の徹底管理するとともに、暴動を起こすような移民層は社会のゴミとの意見まで述べ、強硬そのもの。そんな姿勢の一方で、左派票獲得を狙って、昔の人民戦線内閣を持ち上げたりする。
 一方、社会主義者のRoyal氏も負けていない。集会で国家を歌い、国旗掲揚を推奨する。これがフランス左翼代表の姿。
 そして、票を集めるために、個人攻撃は辞せずの精神で戦う。

 TV放送は国営中心だし、番組もニュース偏重だから、政治家の言葉や動きは広く伝わる。従って、目立つ発言で人々の関心を集める手法を多用するのだ。
 そのためか、放送番組の視聴率獲得競争同様に、支持率を見て発言をコントロールする手法をとっているようだ。
 ただ、日本とは違い、フランスでは雑誌がよく読まれているから(3)、基本的な問題にどんなスタンスかはよく知っている人が多そうである。
 知っていても、誰に投票するかの決断は難しいだろうが。

 と言うのは、右派は伝統重視の保守、左派は文化的な改革を主張するリベラルという、かつての常識が通用しないからだ。
 右派Sarkozy氏の主張は改革。左派Royal氏は福祉型国家の枠組み維持。
 革新のスローガンは右派に移ったのである。

 右派Sarkozy氏は米国型の経済運営を進めようというもの。これに対して、左派Royal氏は反グローバル主義。経済活動においては保護主義の道を歩もうというもの。
 両極端だが、この2名から選ぶしかない。極めて厄介である。

 どうしてこんなことになるのか。

 失業率の高止まり、治安の悪化、国際社会におけるフランスの地位低下、等を実感している国民に対して、イデオロギー的な話をしても受けないということだ。中途半端な施策を提起して誤魔化せなくなってしまったのである。票を得るためには、徹底的に進めるとの姿勢を見せないと信用を失ってしまうのだ。
 そして、もう一つは、国全体としての右傾化に対応せざるを得ないという点。社会には大国フランス没落の危機感が広がっているのだ。

 この国の一番の問題は、大国意識を捨てきれないことにつきる。
 お隣の英国が、左派も右派も巻き込んで、国民が望む結果を出すことに注力することで政権を維持してやり方を学ぶべきだろう。
 Bayrou候補は穏健・中道と紹介されているが、その本質は大国主義的なナショナリズムに依拠した左右の発想を捨て、問題解決志向で行こうというものだと思う。

 解は、中道・穏健とか、左、右の選択ではなく、面子と大国主義から離れ、イデオロギーに固まらず、実生活を考えたプラグマティズムで進むことではないのか。

 --- 参照 ---
(1) http://elections.lesechos.fr/elections2007/presidentielle/flash/fr/2007/index1.html
(2) http://www.ifop.com/europe/index.asp
(3) http://www.aepm.fr/


リンク集[フランス]

【仏】 [2006.10.18]
 [保守的自由主義] Le Figaro >>>
 [自由なジャーナリズム] Le Monde >>>
 [グローバルクオリティペーパー] International Herald Tribune >>>英語

〜追加〜 [2007.5.8]
    Liberation >>>
    Les Echos >>>
    LaTribune >>>
   [Le Mondeの国際誌] Le Monde Diplomatique >>>
   [雑誌]
    Le Nouvel Observateur >>>
    L'Express >>>
    Le Point >>>
    Marianne >>>
   [TV:娯楽性が薄い印象]
    TF1 >>>
    France 2(全国ニュース中心) >>>
    France 3(ローカル重視) >>>
    Arte(文化:独仏) >>>
    Public Senat(公共) >>>



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