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2007.6.13
 
 


核武装論議が引き起こす問題

 北朝鮮の核実験は、どう見ても、プルトニウム型の失敗作だった。しかし、その政治的効果は大きく、核の威力をまざまざと示す結果となった。米国国内での、核武装を許した無策な大統領との批判がきいたようで、北朝鮮政策変更を余儀なくされたのは間違いない。
 ただ、これは瀬戸際外交の勝利というよりは、予想された展開だ。

 なにせ、北朝鮮とは、大国から見捨てられた国なのだ。
 最初は、反米帝国主義一辺倒に見えた毛沢東の仕打ち。突如、敵国のニクソンとの握手を見せつけられれば唖然となったに違いなかろう。
 次が、ゴルバチョフ。突然、ソ連時代の約束すべてが反故にされたのだからたまらない。
 クリントン政権にしても、交渉とは名ばかり。経済崩壊までの、時間かせぎ策だったのは見え見え。
 こんな状況で生き残ろうと思うなら、軍事優先は当然。膨大な数の通常ミサイル配備だけでは安心できまい。核武装化に進むのは、自然な流れだろう。これ以外に方策があるとは思えない。
 驚く点といえば、貧困な国家にしては、思ったより核実験が早かったというだけのこと。韓国の援助額が大きく寄与したのだろう。

 しかし、核実験の影響で日本国内の流れは、向きが180度変わった。平和主義的な言辞をふりまくだけの政治家の信用失墜である。
 軍隊を保有しながら、軍隊無しと称する自称平和国家が抱える矛盾が露呈してしまったとも言える。
 こんな時は、原則論から始めて、今後どうするか決める必要があろう。表面だけ取り繕った対応をすると、取り返しがつかなくなりかねないからだ。

 そう思うのは、外からみれば、これほど訳のわからぬ国はないから。
 宗教性希薄に見えるだろうから、無原則な動きをする国とみなされる可能性は高い。簡単に言えば、自国の利益になりそうならなんでもやる、姑息な国とされかねないということ。間違った方向に進むと、孤立しかねないのである。そうなってしまったら、いかんともしがたい。

 従って、そんなイメージを増幅させないように注意すべきだろう。
 その観点で、特に気になるのが、ここのところの核武装論議だ。国内論議だから、致し方ない点もあるが、世界の仕組みなど無視してかまわぬと主張しているように聞こえる意見も結構多いようだ。そんな意見も、時として海外紙に取り上げられることになる。発言は事実だから、バイアスがかかった解説が付随すれば、とんでもない国に映ってもおかしくない。
 そんな引用が続けば、日本では、世界秩序を壊そうと、コソコソと胡散臭い話をしているようだ、ということになろう。

 これを避けるためには、核武装の議論に当たっては、一般的な意義を問う話から始めたほうがよかろう。
 例えば、米英仏露中による核独占は世界安定化に寄与しているのか? という議論。
 裏返せば、印パ/イスラエル/北朝鮮にとって、核保有はどうして安全保障の要件になるのか? ということでもある。
 核抑止力は本当にあるのかを語らず、近視眼的に武力でのバランス論を語るのは危険である。こうなるのは、平和希求とか、核廃絶を叫ぶ勢力が、まともに議論をしようとしないからだ。

 こうした論議ができるようになれば、日本の安全保障はどうすべきかという、根本的な問題をどう検討すべきかが見えてくる。そんな方向に進むような議論が欲しいものだ。

 厄介なのは、このような本質的な話無しで、核武装を求める主張。内容が軽薄なのはしかたないとしても、聞き方によっては、現在の世界の仕組みを壊せと語っていることになる。
 早い話、日本はNPTから脱退せよ、という主張に近い。しかし、NPTを脱退すれば、取り決めに従い、即時、核燃料禁輸。エネルギー不足でお手上げとなる。その一方、保有プルトニウムはウラン混入の低濃度品 (1)だから、潜在的な核保有国としての象徴でしかない代物。実がある方策ではない。
 つまり、日本は現在の世界の仕組みを根本から壊そうとしていると見られるということ。異質な国が、胡散臭い陰謀でも図っているとされかねない。

 そうでなければ、米国によって利用されるだけの話。日本の核武装化を中国操縦の道具にできるからだ。実際、中国政府が朝鮮半島非核化に本腰を入れたのも、米国がこれをカードにしたかも知れないのである。

 こんなことをされかねないのは、日本の安全保障の大原則がはっきりしていないからだ。曖昧なままにしておけば、他国はそれを利用することになる。

 --- 参照 ---
(1) 兵器用はすべて専用炉で製造されており, プルトニウム239が9割以上含まれていると言われている.
  一方、燃料用の含有率は6割程度. これを用いた兵器は実用化されていない.
  兵器転用防止を図った原料を処理するのは無理筋. 低濃度物質の核弾頭開発ができるとも思えない.


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