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2007.7.2
 
 


Hamiltonianの考え方とは

 2007年6月中で、“なるほど”と感じたコラムを紹介しよう。
 ・・・DAVID BROOKS: “Reviving the Hamilton Agenda” NewYorkTimes [2007.6.8]

 その内容に感じ入ったというのではなく、一文にガツンときただけだが。
 ・・・If you are reading this column, you’re keeping company with somebody in (the Hamiltonians).

 最近の政治経済思想には4つの流派があるという。

(1) the limited government conservatives
  課税は低レベルとし、政府はできる限り小さくと主張

(2) the Hamiltonians
  自由市場の資本主義を信条とする。
  政府は人々が競争するために必要な道具が得られるよう助力すべしと主張

(3) the mainstream liberals
  創造的破壊の悪影響をやわらげる必要があると考える。
  政府は経済過程全般に小さく介入すべしと主張。

(4) the populists
  グローバル経済になると、利益は富める者に行くと考える。
  根本からルールを書き換えるべしと主張。

 それでは、それぞれをどう評価するか。

(1) 小さな政府では人的資本は貧しいままで終わる。
  教育制度からの脱落者は増加し、労働者の熟練度低下を招く。
(3) 失業者を再訓練したり、雇用創出を目指した政策を打ち出すが、上手くいかない。
  増税で経済は弱る。
(4) グローバリズムが不平等をもたらしたのではなく、考え違い。
  グローバル経済は劇的に貧困減少をもたらし、生活水準を向上させた。
  不平等をもたらした原因は以下のようなもの。
    ・教育プレミアムの上昇
    ・家庭と家族構成の変化
    ・労働の長時間化
    ・個人業績に連動する給与システム

(2) のHamiltoniansが目指すのは2つ。
    ・ダイナミックな経済の維持
    ・人的資本の蓄積

 この内容を見て、どう感じるかは、人それぞれだろうが、なかなか示唆に富む。
 「人の能力を活かす」仕組みの巧拙で国の将来が決まる時代だ。このような議論をして欲しいものである。

 ただ、「人の能力を活かす」といっても、その感覚には相当なズレがあるのは確かだ。ここが一番のポイントのような気がする。

 反グローバリズム派は、一見、貧者教育に熱心に見えるが、実は全く逆である。自由な交易から、地産地消型の閉鎖経済への移行を狙うのだから、教育で豊かになれる訳ではなくなる。学びは経済的には無駄なものとなる。
 富裕層を許せぬという姿勢を見せつけられると、格差拡大を非難する勢力に見えるが、貧困層を労働力として活用することにも反対する点では、貧困層引き上げをさせたくない勢力でもある。ここだけ見れば、中間層の私利主義的主張と言えなくもない。

 一方、小さな政府派は、すべてを個人に任せることになる。学ばない者は、見捨てられる。

 こんな話をすると、政府介入派が一番まともに映るかもしれない。
 だが、実際に、この手の勢力の政策が効果をあげることは滅多にない。何故かといえば、“創造的破壊”とは言葉だけで、既存の仕組みを破壊するつもりはないからだ。
 “小さな介入”とは、既存勢力のやり方には手をつけないということ。従って、ほとんどの場合、なんの成果も生まない。

 ダイナミックな経済とは、既存の仕組みを再構成することと同義。
 現状の非合理的な部分を変えようと考える勢力が、既存勢力と対等に競争ができるような環境をつくることが重要なのである。
 このための介入でなければ、成果は期待できないということ。

--- 付記 ---
米国の対外政策も4流派に分かれる。
・Hamiltonian: 国内外での経済的成功を重視。
・Wilsonian: 米国の価値観の普及に注力。
・Jeffersonian: 米国の民主主義防衛に集中。
・Jacksonian: 好戦的でポピュリスト。米国の利益と名誉にご執心。
  Walter Russell Mead “Special Providence: American Foreign Policy and How It Changed the World” Alfred A. Knopf 2001年
  http://www.randomhouse.com/knopf/authors/mead/


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