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2007.7.30
 
 


自民党の参議院選敗退は当然の帰結

 2007年7月29日の参議院選は、予想通り、自民党の大敗。

 この理由は、年金問題と住民税/保険料負担の増大感だけではなかろう。

 致命傷は、首相のパフォーマンス活動ではないか。

 新潟県中越沖地震発生当日の総理大臣現地視察のこと。
 首相は遊説をキャンセルして、陣頭指揮にあたった。マスコミを通じて、トップがリーダーシップを発揮する姿をみせたかったのだろうが、これが全くの逆効果。

 柏崎刈羽原発の現場で安全確認をしたが、それに何の意味もないことがすぐにわかってしまったからである。
 周囲の住民が一番神経をとがらせている、放射能漏れが、その後、続々と報告されたからだ。
 首相の現地訪問は一体何なのか、との声があがるのは当然。これで、政府は、事態の把握能力さえ欠くというイメージができあがってしまった。

 一方、企業の救援対応は早かったし、的確だったから、その差が目だった。
 例えば、イオンは、16日の午前11時、対策本部を立ち上げ、正午には水やお茶、パンなどを被災地へ送り出したそうである。(1)

 そもそも、巨大施設被害では、状況調査だけでも膨大な人手が必要となるのは、当たり前。
 しかも祭日だから出勤していた社員など僅かの筈。突然呼び出されたところで、すぐに行ける状況でもないだろうし、集まったところで、混乱下ですぐに動けるとは思えない。
 その上、火事の事後処理など、猫の手も借りたい状況だったに違いない。
 そこへ、こともあろうに総理大臣が出かけたのである。点検を後回しにして、訪問対応するしかない。
 この訪問は、不具合情報は後から小出しに、と指示したのと同じこと。

 それでも、政府が本気で安全確認にあたっている姿勢を見せることさえできれば、プラスに働いたのだが、なんの根拠もないのに「安全」と言ったのだから、信用を失うだけのこと。

 新潟県知事の批判がすべてを物語る。(2)
 報道陣を前にして、政府はIAEA調査に非協力的だと指弾したのである。しかも、「防火の専門組織がない」と改善を求められながら、専門組織を設置しなかったと言い切った。
 その通りだから、政府はコメントのしようがない。

 IAEAによるレビューを受けたばかりなのに(4)、政府はIAEAの現地調査受け入れ表明を出す以外に道はない。
 そして、これに対する知事の言葉で、状況が明らかになってしまった。
 「保安院の顔が見えない。県民は東電が信頼できなくなっている。安全か危険か、事業者任せでなく保安院がコメントしないと、住民は安心できない」(3)というもの。

 一体、総理大臣現地視察とは、何だったのか。
 おそらく、原発での首相の映像は、トップのリーダーシップの重要性を学ぶためのケース・スタディとして、これから使われていくことになろう。

 ともかく、柏崎原発は断層地震源の巣窟上に立地していることがはっきりしてしまった。(5)
 柏崎市長ができることは、消防問題を理由にした、使用停止命令しかなかろうが、「活断層存在の議論を含め、安全性にどう問題があるのか、揺るがせにはできない」(6)と主張することはできる。
 この声が通れば、世界最大規模の発電所が廃炉になる可能性大ということ。

 今度は、総理大臣は、この問題に関してどのような形でリーダーシップを発揮するつもりなのだろうか。

 --- 参照 ---
(1) http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20070719/130174/
(2) “IAEAに非協力の政府批判”新潟日報2007年7月22日
  http://www.niigata-nippo.co.jp/pref/index.asp?cateNo=1&newsNo=1342
(3) “保安院長が謝罪と調査で説明”新潟日報 2007年7月23日
   http://www.niigata-nippo.co.jp/pref/index.asp?cateNo=1&newsNo=1380
(4) http://www.meti.go.jp/press/20070620003/irrs_press.pdf
(5) http://www.gsi.go.jp/WNEW/PRESS-RELEASE/2007/0726/0726-5.pdf
  http://www.hinet.bosai.go.jp/hypo/hinet/map/7days/CHUETSU.png
(6) “市が柏崎原発に使用停止命令”柏崎日報 2007年 7月18日
  http://www.kisnet.or.jp/nippo/nippo-2007-07-18-2.html


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