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2007.8.1 |
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変革の時代突入か
結果は、民主50万票、自民36万票、共産28万票。 自民候補は、これでも、2004年より4千票増加しており、集票力が弱体化したとは言えないが、2001年の候補者の父の時は、6万票多かったそうである。強固な地盤を持つ候補とされているが、民主候補を上回った地区はほんの一部でしかない。(1)
保守の堅固な地盤で、ついに流動化が始まったようである。 京都が気になるのは、参議院の「決算革命」を実現した松井孝治民主党議員の選挙区だから。(もっとも、世間的には、村上ファンドの関連会社に秘書給与を肩代わりしてもらったことで有名だが。) 松井議員は、「霞が関=業界団体=族議員」という“鉄のトライアングル”に楔を打ち込もうと、霞が関と対抗できる“真のシンクタンク”通産研究所を立ち上げた人。(3)(現在は、新しい国づくりを語る“熱血政治家”と言われているそうだが。)どのような方かは余り存じ上げないが、青木昌彦氏が提起した考え方(4)を共有しているのは間違いないと思う。 そして、ビジネスマンが民主党に期待するとしたら、この“考え方”しかなかろう。 と言っても、わかりづらいかも知れない。勝手に解釈しておこう。 簡単に言えば、日本経済を立て直すためには、根本的な制度変革が不可欠だが、それは個々の仕組みを変えることでは難しいという指摘。ほとんどの制度や仕組みは相互補完的だから、個々の仕組みを変更しようとすると、矛盾が生じてどうにもならなくなるからだ。法律一本だけ変えたところで、現実の制度は簡単に変わらないし、場合によっては骨抜きどころか改悪になるということ。 それはその通りだが、問題はどこから手をつけるか。 難しいのは、欧米とは体質が違うから、成功例を学んでも、Tipping Point(5)がさっぱり推測できない点にある。 松井議員には、知恵を振り絞って、是非頑張って欲しいと思う。 欧米との違いを少し説明しておく必要があるかも知れない。 日本社会が欧米に比べると変革しにくいのは、個人的権利の拡充ではなく、個人が組織を通じて自己実現できる社会を目指しているからだ。 言うまでもなく、組織を通じた自己実現型の社会は、組織の安定が不可欠である。ここで、もう一つ厄介なのは、日本人は、組織の安定化については、全面的に権力に依存する傾向が強い点。個人的権利を主張しないことの裏返しでもある。 従って、どうしても国家主権を優先させることになる。国家は強くなければならないということだ。 そして、強い国家とは官僚支配型以外にはありえまい。このため、政治的には、与党による安定政権の持続に走る傾向がある訳だ。 そうなると、野党の役割は、政府の政策チェックであり、政権奪取ではなくなる。国民の不安を代弁する役割を果たすことになる。エリート共同体の“鉄のトライアングル”を諸悪の根源と批判するだけで、自動的に一定の支持を集めることができたという訳である。 選挙における、野党の躍進とは、与党の政策の一部是正要求でしかなかった。 この構造を変えるのは大変なことである。 しかし、この構造を支えているドグマが否定されれば、自然崩壊してしまう。ここがポイントである。 言うまでもないが、国家が統制力を持つと経済成長にプラスに働くというドグマである。ただ、ドグマと呼べるのは、マクロで見た時の話。ミクロでは、確かにプラスに働いていたからである。与党に選挙協力した地域には、国からお金が流入し、地域経済は成長したのである。 京都の選挙結果を見ると、ついに、このドグマを間違いと実感する人が多数派になってきた印象を受ける。 自民党も民主党も、大転換を迫られるということだろう。 --- 参照 --- (1) “松井氏、無党派層つかむ 参院選京都選挙区得票分析” 京都新聞 [2007.7.30] http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2007073000042&genre=A1&area=K00 (2) “「年金」に圧倒的関心 参院選京都選挙区出口調査” 京都新聞 [2007.7.30] http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2007073000040&genre=A1&area=K00 (3) 「PROFILE 松井孝治」 ◆通産研究所◆http://www.matsui21.com/sub2.htm (4) 青木昌彦,他: 「市場の役割 国家の役割」東洋経済新報社 1999年 この本の第1部“官僚制多元主義国家と産業組織の共通化” (5) W.C.Kim & R.A. Maubourgne: “Tipping Point Leadership”Harvard Business Review Article 2003年 政治への発言の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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