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2007.9.10 |
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イスラム宗教国家化が進むかイラクは国家の態をなさなくなってきたようである。すでに難民は420万人に達しているという。毎月6万人増加しているそうだ。(1)すでに内乱状態ということ。 汎アラブ民族主義を掲げ、世俗主義の巨大国家への道を歩んでいたフセイン独裁政権が倒れたため、アラブの普通の国と同じように、分裂と内紛でまとまりがなくなってしまった訳だ。 世俗主義は、宗教勢力とは相容れない。従って、世俗主義者の重しがとれれば宗教勢力が急速に勢いを持つのは必然である。世俗主義でないのだから、宗教対立があれば、まとまりようが無かろう。 特に、米国の傀儡政権とみなされたら、住民の支持なと得られる訳がない。貧困層が多いのだから、腐敗から遠そうで、身近な宗教政党に票が集まるだけ。対立の解決方法は宗教分離しかなかろう。 もっとも、イラク国民は世俗主義に慣れているし、生活レベルもそれなりのレベルに達していたから、国としてもう少しはまとまってもよさそうなものだが、世俗主義のバース党を否定してしまったから、どうにもならなくなったということだろう。 それにしても、アラブの国はどこを見てもひどい状況である。 西欧がイスラム圏で強国が登場しないように図った結果とはいえ、自滅的な動きばかりだ。中東から北アフリカにかけ、どのアラブの国をとっても、国内の異民族(クルド人やベルベル人)対立と宗教分派との紛争が常態化しており、安定している国とは、米国の庇護下か、強固な軍事独裁体制下のどちらかしかない。 これはアラブ特有の現象と思っていたが、そうでもなさそうだ。 宗教(聖)と政治(俗)が分離できないイスラム教が支配的な国では、世俗主義は無理なのかも知れぬ。 と言うのは、非アラブのトルコでも世俗主義の崩壊が始まったからだ。
AKPのNo.1はカリスマ的指導者のErdogan首相だが、もともとは、イスラム復興を目指す政治家だ。経済運営に長けており、NATOの一員として欧米協調路線を進めた。そして、EU加盟交渉を担当し、穏健で海外に知己が多いNo.2の外相を大統領として推した訳だ。 西欧は新大統領を穏健イスラム指導者として歓迎する以外に手はなかろう。それは宗教政治志向の指導者による世俗化により、トルコが安定化するという理屈がつくのだろうが、逆に働く可能性もある。 と言うのは、西欧の姿勢にある。オスマントルコ時代の記憶が残っているから、国粋主義的なトルコ思想は受け入れがたいし、軍隊の政治への関与も毛嫌いせざるを得ないからである。このことは、宗教原理主義を抑えてきた2つの力を弱めるということ。原理主義はこれに乗じて伸張すると思われる。 それでも、トルコをEUに迎え入れる気があるなら、宗教政治指導者が国内を上手く収めることができるかも知れないが、その路線は消えてしまった。 従って、宗教原理主義化を抑えることはできないのではなかろうか。 人口の過半を占める貧困層の立場に立って考えてみれば、宗教権利主義しか選択肢はなさそうだし。 リアリズムに徹すれば、この層が、先進国の民主主義を信頼することなどありえまい。 民主主義といっても、所詮は、個人の人権重視を前提とした、「普通選挙代表制+多数決」による権力委譲にすぎない。結果的には、組織化された少数の集団が権力を握ることになる。しかも、その権力は極めて強固で、任期期間ならほぼ自由裁量で動いける。国民の意思に反した動きをすることさえ可能である。 おそらく、そんな仕組みが貧困層を守ってくれると感じる人などいまい。 貧困から脱することができそうな予感がしない限り、イスラム圏が民主主義に向かうことは考えにくい。にもかかわらず、イスラム圏の国々に対して、民主主義のドグマを掲げ続ければ、宗教国家がますます増える結果を招くことになりそうである。 --- 参照 --- (1) “Iraq: Rate of displacement rising” [2007.8.28] http://www.unhcr.org/cgi-bin/texis/vtx/iraq?page=briefing&id=46d3f68f4 (2) http://www.cankaya.gov.tr/eng_html/gul.htm (3) SABRINA TAVERNISE and SEBNEM ARSU: “Turk With Islamic Ties Is Elected President”NewYorkTimes [2007,8.29] http://www.nytimes.com/2007/08/29/world/europe/29turkey.html (電球のイラスト) 素材のプチッチ(C) http://putiya.com/ 政治への発言の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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