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2007.9.21 |
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自民党総裁選挙報道を眺めて日本の新聞は、毎日、自民党総裁選挙の話で持ちきり。スポーツ観戦さながらの記事だらけだ。日本の新聞は、両候補の考え方の違いをはっきり報道したくないようで、こまったものである。 新聞社は政策論争せよと言うが、実は、そんな選挙はお嫌いなのではと疑うほど。 こんな記事ばかり読み続けていると、思考能力が失われるのではなかろうか。 本気で政策論争化したいなら、簡単である。新聞上で、評論家に両候補の考え方の違いを整理させればよい。その見方が間違っているなら、候補者に訂正させればよいだけのことだ。 こんなことを感じるのは、海外紙や雑誌を眺めていると、小泉路線と安倍路線の違いが見えてくるが、日本の新聞を読んでいると、さっぱりわからないからである。 自分の国のことを、他国の新聞記事から推定せざるを得ないなど、どうかしているが、それしか手はない。 小生の印象からいえば、小泉政権の政策上の特徴は、竹中路線だと思う。ただ改革とは名ばかりの施策も少なくないから、この路線を徹底して追求した訳ではない。それでも、地方への公共事業費はカットし続けたし、政府が経済活動を指導するやり方から、民間主導型へと姿勢も変えた。 こうした政策転換を図るために、ナショナリズムに依拠して、リーダーシップを発揮したと見ることもできそうだ。と言うのは、小泉政権は、象徴的なナショナリズム昂揚の動きにはあくまでもこだわったが、国内に大きな影響を与える施策は打たなかったからである。 一方、安倍政権は、小泉路線を引き継ぐと称したが、それはもっぱらナショナリズム。この具体化で頑張った。但し、経済成長を阻害しかねない中国との摩擦を避けるべく、象徴的な動きだけは自粛した。小泉政権と、国内と国外への対応が全く逆なのである。 その一方、肝心な経済政策では鵺的な動きだった。竹中路線反対論者を重用しているのに、小泉改革続行というのである。 安倍型ナショナリズムは国家権力強化志向なので、民間主導経済政策を志向した小泉路線とは相容れないのだが、広言できなかったということだろう。 例えば、イノベーション促進と言っても、その方向を政府が決め、それに沿った形で民間が一体となって進むべしという発想だ。 早い話、通産省型産業政策を復活させるということ。 そんな官民一体型を好む企業経営者も少なくないから、企業が潤っている限り、経済界から路線変更に反対者はでてこないから、一見蜜月状態に見えるが。 この姿勢は、早晩、公共事業費増大路線に転換することを意味する。 言うまでもなく、麻生候補は、こうした路線を体現する政治家である。小泉路線とは水と油。 一方、福田候補は記事に余り取り上げられたことがないので、よくわからない。ただ、グローバル経済のなかで日本が上手く生きていくことを重視する、ビジネスマン的な政治家に映る。小泉路線堅持なくしては、日本経済は危うくなりかねないと見ている可能性は高そうだ。 こんな見方が当たっているなら、今回の選挙は、国家主導経済路線と民間主導経済路線がぶつかりあっているということ。 ・・・というのが、素人なりの勝手な見方。 専門家による、このような話を、新聞で読めるようにならない限り、日本の政治は変わるまい。 今の新聞記事はひどすぎる。 ○○県は麻生候補支持で3票、といった情報のオンパレード。だから何なんだ。 安倍政権の組閣でも、参議院側が大臣2名要求などといった話ばかり続く。 こんな記事ばかり読まされたところで、政治の流れを考える上では、何の助けにもならない。 こんな不満をつい言いたくなったのは、APECの新聞報道が、“APEC首脳会議 温暖化防止へ一歩前進だ”(1)というトーン一色だったこともある。 そんな見方でよいのかね。 ちなみに、Los Angeles Times の論説にはこんな小論が掲載されている。・・・“Bush and other APEC leaders talk a good game on climate change, but it amounts to little more than theater.”(2) 要するに、環境問題で国際舞台で議論することが大流行だが、政治家にとって、これほど便利な題材はないという指摘。都合のよい部分だけ主張して、スポットライトが当たれば大成功。 豪のHoward首相の政治センスはそんなところだと見ているのである。 Bush大統領もそれに応えて演説しただけのこと。一方、Hu主席は、これは国連で検討すべき問題であり、環境問題の責任を負うべき国が対応するのが筋と主張。 なんのコミットメントも無いのだから、効果があがる訳はない。当然ながら、こんなものは“little more than theater”と言うのである。 日本の新聞は一歩前進と正反対の見方。“難航の末、特別声明「シドニー宣言」をまとめ、京都議定書に代わる2013年以降の枠組みづくりに向け、積極的に取り組む姿勢を打ち出した”(3)ことを高く評価するそうだ。 洞爺湖サミットでは環境問題で指導力を発揮すると語っていた日本の首相を応援したかったのかも知れぬが、海外紙と余りにスタンスが違うので驚きである。 日本の新聞は、政治家が何を考え、どのように世界を導こうとしているのか、そこにはどんな危険があるのかを語ることは非常に稀。 こんな毒にも薬にもならない話を読み続けていれば、洞察力を失いかねない。日本の新聞は読まない方がよいのかも知れぬ。 だいたい、今回のAPECほど無内容な会議も稀だ。21ヶ国もの首脳が集まって、なにも方向が決まらない。 WTO(ドーハ・ラウンド)については、ただただ、早期の合意を望むという声明だけ。何回同じような声明を出してどうするつもりなのだろう。 米国流のFTAの方もさっぱり進展がなく、議論は先送り。 もともと、APECとは、貿易・投資の自由化の促進を図るための組織ではないのか。その交流の土台として、地域の安全保障が揺るがないように議論するための場だろう。これだけ首脳が集まって何一つまとまらないのである。 ひどいものだ。 素人には、「会議は踊る」に映る。 真面目な日本の首相にとっては耐え難かったかも知れない。 --- 参照 --- (1) 徳島新聞 [2007.9.9] http://www.topics.or.jp/index.html?m1=10&m2=33&eid=news_118929822623&vm=1 (2) “Posturing on climate” Los Angeles Times [2007.9.8] http://www.latimes.com/news/opinion/la-ed-sydney8sep08,0,649699.story?coll=la-opinion-leftrail (3) “APEC声明 温暖化対策に弾みを” 信濃毎日新聞Web [2007.9.12] http://www.shinmai.co.jp/news/20070912/KT070910ETI090003000022.htm (首相官邸の写真) (C) 東京発フリー写真素材集 http://www.shihei.com/tokyo_001.html 政治への発言の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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