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2007.10.11
 
 


国際協調・民族協調主義の胡散臭さ

 ミャンマーが、大国インドの近辺ではなく、黄金の三角地帯もないなら、国内でなにがおころうが、放置されていたかもしれない。

 現に、国連加盟国の大半は、ミャンマーとたいして変わらぬ独裁国だ。一部の国だけ目立つが、残虐な民族浄化や宗教弾圧は珍しいことではない。しかも、腐敗した政権が多い。この状態で、国連で人権問題を云々してもほとんど効果は期待できない。
 しかも、こうした国に対して、国連を通した人道援助や経済支援を行っても、お金が支配層に回るから、末端の貧困層の生活状態が好転することは稀。境遇が悪化する可能性の方が高かろう。おそらく、現地では、国連の援助機関とは独裁政権維持の組織に映るだろう。
 それに、国連関連組織自体の腐敗も抑えられないようだし。

 これが世界の現実政治状況である。
 民族的協調とか宗教の自由といった話は理想論でしかない。
 決して発展途上国だけに限る話でもない。

 ベルギーはついに分裂かとの見方もある。言語は仏・蘭・独と厄介なだけではない。FlemishとWalloonがすでに水と油状態なのである。従って、FlemishチョコレートとWalloonビールと呼んだ方がよいというのも、冗談ではすまされない。(1)

 それでも、どうやら国の態をなしているのは、王室があるからに過ぎないようだ。
 協調とは程遠い世界である。
 これが、EUの首府が設置されている国の実像である。(2)

 従って、民族的協調・宗教の自由といった思想だけを振りまく国際政治家には十分注意する必要があろう。
 リアリズムに基づかない発言をする政治家の真意を見抜かずに動くと、とんでもない道に入り込んでしまうからだ。
 いうまでもなく米国の揺れ動く方針の話である。

 イラクに石油なかりせば、そして、イスラエルに脅威を与えないなら、どんな悪辣な政権だろうと無視されていた筈である。
 どう見ても、焦点は石油権益。

 KRUGMANは事実を淡々と語る。
 “To understand what’s really happening in Iraq, follow the oil money, which already knows that the surge has failed.”(3)
 米国ダラスの石油企業Hunt Oil Companyがイラクのクルド地区で石油開発に乗り出しており、この企業のCEOはBush政権のForeign Intelligence Advisory Boardのメンバーだそうである。
 言うまでもないが、Nuri Kamal al-Maliki政権に、イラクの石油収入配分方針を決める力など無い。すでに、国家は事実上3分割されており、交渉力喪失状態に陥っている。
 おそらく、こうなることが、Bush政権の真意だったということだろう。

 --- 参照 ---
(1) Aaron Timms: “Belgian schism is no laughing matter”Sydney Morning Herald [2007.9.24]
   http://www.smh.com.au/articles/2007/09/23/1190486132057.html
(2) Robin Shepherd: “Lessons for Europe if Belgium fails”Financial Times [2007.9.18] 有料
(3) PAUL KRUGMAN: “A Surge, and Then a Stab” NewYorkTimes [2007.9.14]
  http://select.nytimes.com/2007/09/14/opinion/14krugman.html?hp
  PAUL KRUGMAN: “[2007.9.14] The President Who Cried Peace” NewYorkTimes-The Conscience of a Liberal[PAUL KRUGMAN's blog]
  http://krugman.blogs.nytimes.com/
(国旗のイラスト) (C) National flag & Road sign Mt. http://nflagrsign.xrea.jp/


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