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2007.11.5
 
 


民族紛争から大戦争への道

 極右政党SVPがスイス総選挙で圧倒的勝利を収めた。(1)
 SVPはスイス国民党(Schweizerische Volkspartei)という名称が示すように、民族意識が強い。その姿勢から、ファシストの集まりと見なす人もいる位だ。しかも、今回の選挙では、センセーショナルな外人排斥ポスターで挑発的な選挙運動を繰り広げた。(2)

〜スイス総選挙 政党議席推移〜
SVP[極右] 62←55←44
社民SP 43←52←51
ラジカル民主FDP[右寄] 31←36←43
キリスト教民主CVP 31←28←35
緑Grune 20←14   
他(右派系) 9←6   
他(左派系) 4←5   
 このため、欧州のメディアはいつになく、スイスの選挙に関心を示した。(3)・・・みかけより錯綜した選挙システムらしいから、議席数だけで状況判断すると間違うらしい。極右に流れたが、右と左での得票率バランスが一変した訳ではないようだ。

 まあ、グローバル経済の歪が襲っているため、世界中が似たような流れであり、格段驚くことではない。
 それに、スイスは日本のマスコミが流すイメージとは大きく違い、もともと排他的な風土で変革を嫌う国である。(4)有名な金融業にしても常に胡散臭さがつきまとう。小国が、権謀術数の嵐のなかで生き延びるには、奇麗ごとではすまないから当然といえば当然だが。
 そのなかで、既成政党は理想論を語りながら、現実の政策は特定支持層相手の功利的なものになりがち。グローバル経済が進展するなかで、ローカルな生活を続けてきた人達に不安感が広まっているが、こうした政党はこの層に対応できないのである。そこで、難民存在への不快感を正直に吐露する、しがらみが少ない極右政党へと票が流れたということだろう。

 民族主義は一度勃興してしまえば、抑えることはできない。理屈など無いから、過激な意見ほど力を持ち易いからだ。結局のところ、行くところまで行くしかない、というのが過去の教訓である。
 それでも、スイスでは、意見の違いを乗り越えた大連立内閣が政治をとりしきっていくことになるのだろう。ただ、いつまでも続けられとは思えないが。

 これはスイスだから成り立つ話。オット、日本の話をしたい訳ではなかった。

 中東となれば、こうはいくまい。ここで民族主義の嵐が吹き荒れ始めると、大変なことになる。
 ついに、その危険が迫ってきたようだ。

 イラクがついに連邦制へ動くことにきまり、実質的にクルド国家が生まれそうだからだ。
 自治政府といっても、軍隊を持ち、クルド国旗がはためいている。オイルマネーも入ってくるし、イラク戦争を通じて米国との協力関係を構築しているから、政治基盤は強固そのもの。
 しかし、周辺のトルコ、イラン、アフガニスタン、アゼルバイジャン、シリアは穏やかでいられまい。国内のクルド族住民に動かれてはたまらぬから、クルド独立絶対阻止である。
 すでに、NATO加盟国でもあるトルコが対クルド戦争を始めた。これが限定的行動で済む訳がなかろう。

 それで、米国はどう動くつもりだろう。

 “What will the United States do if Iraq's neighbors fail to contain the ethnic conflict that is now consuming Iraq?”
 “The simple answer would be to leave the people to kill and displaxe one another until ehtnic homogeneith has been established in the various states.”(5)

 そんなことができるだろうか。
 それなら、どうする。
 と言うより、どうなるかだ。・・・

 “The really sobering lesson of the twentieth century is that some civil wars can grow into more than just regional wars.”
 “If the stakes are high enough, they have the potential to become world war too.”

 そういえば、Bush大統領も、初めて、世界大戦の危機を表立って語った。(6)
 と言っても、イランの大統領は、イスラエル消滅を公言する位だから、イランとイスラエルの核戦争というイメージを打ち出しただけと読むこともできるが。
 厄介なのは、イスラエル問題も、民族紛争の一種でしかないという点だ。クルド問題と本質的には同じことである。錯綜した民族紛争が一気に勃発したら、誰も手をつけられなくなる。
 かつての米v.s.ソの危機のように、核ボタンを押すぞといったブラフは全く効かない世界だ。経済制裁も火に油を注ぐようなものになりがち。解決の手立てがないから、どうにもならない訳だ。

 従って、中東大動乱まで行ってしまう可能性は否定できない。
 もし、それが避けられないと判断したら、米国はイラン爆撃を始めるに違いない。それしか選択肢は無いのではなかろうか。
 Niall Fergusonは、Navy Timesの“Around the Navy”を見て、空母の位置を確認しておいた方がよいとアドバイスをしてくれているのだが。(7)

 --- 参照 ---
(1) Haig Simonian(Zurich): “Far right gains in Swiss election” Financial Times [2007.10.21]
(2) Imogen Foulkes: “Swiss row over black sheep poster” BBC [2007.9.6]
  http://news.bbc.co.uk/2/hi/europe/6980766.stm
(3) Haig Simonian and Adrian Michaels: “Pragmatism behind shock tactics of Switzerland's SVP”Financial Times [2007.10.22]
  http://us.ft.com/ftgateway/superpage.ft?news_id=fto102220071506539760
(4) 福原直樹: 「黒いスイス」 新潮新書 2004年
  「BOOK」データベースより---「優生学」的立場からロマ族を殲滅しようと画策、
  映画“サウンド・オブ・ミュージック”とは裏腹にユダヤ人難民をナチスに追い返していた過去…
(5) Niall Ferguson: “Wars to Start All Wars” Atlantic Monthly [2007.1/2]
  http://www.niallferguson.org/publications/War_to_start_all_wars_as_published_in_the_Atlantic_Monthly_Jan_07.pdf
(6) 米大統領記者会見 [2007.10.17] http://www.whitehouse.gov/news/releases/2007/10/20071017.html
“we got a leader in Iran who has announced that he wants to destroy Israel. So I've told people that if you're interested in avoiding World War III, it seems like you ought to be interested in preventing them from have the knowledge necessary to make a nuclear weapon. I take the threat of Iran with a nuclear weapon very seriously.”
(7) Niall Ferguson: “ One strike, Iran could be out” Los Angeles Times [2007.10.22]
  http://www.latimes.com/news/opinion/la-oe-ferguson22oct22,0,1458042.column?coll=la-opinion-center
(Niall Ferguson) Harvard大学教授(歴史), a contributing editor of Financial Times, Scottish. http://www.niallferguson.org/index.html
(国旗のイラスト) (C) National flag & Road sign Mt. http://nflagrsign.xrea.jp/

 --- 附記 ---
こんな話を書きたくなったのは、不可思議な動きが続いているから。
●Jerusalem Postの記事によれば、シリアの建設中の核施設を爆撃したのは米空軍だと、Al Jazeeraが、2007年11月2日にウエブ報道したという。しかも、戦術核爆弾を使用したというのだが。限りなく作り話臭い。イラン爆撃の予行演習だったと言わんばかり。
“'USAF struck Syrian nuclear site'” Jerusalem Post [2007.11.2]
http://www.jpost.com/servlet/Satellite?cid=1192380718519&pagename=JPost%2FJPArticle%2FPrinter
●シリアに施設があって、爆撃で破壊されたことは事実。場所と状況から考えて、核施設だった可能性は高い。
“Syria air-raid site 'cleared' ” Al Jazeera [2007.10.26]
http://english.aljazeera.net/NR/exeres/2819EA89-C97F-4950-8738-D83A7B584CC9.htm
●核施設だとすれば、北朝鮮からの技術導入以外は考えにくい。両国は親密である。2007年10月22日、シリアのOtri首相が北朝鮮の最高人民会議議長Choi Tae-bokと会合をもった。
http://www.sana.org/eng/24/2007/10/22/144714.htm
●しかし、ステルス爆撃機でもないのに、ロシアのレーダーが装備されている防衛網を簡単に突破できるものなのだろうか。Aviation Weekは、クエートのAl Watanの記事(米軍が支援と報道)を注目している。ともかく、これは、紛れも無くcyberwarだったようだ。
David A. Fulghum /Douglas Barrie: “Israel used electronic attack in air strike against Syrian mystery target” Aviation Week [2007.10.8]
http://www.aviationweek.com/aw/generic/story.jsp?id=news/aw100807p2.xml&headline=Israel%20used%20electronic%20attack%20in%20air%20strike%20against%20Syrian%20mystery%20target&channel=defense
●空爆の時期は2007年9月6日。シリアは即時非難。アラブ諸国はだんまり。イスラエルは爆撃を認めたが、詳細は開示せず。ただ、軍事協力関係を結んでいるトルコには、領土侵犯について謝ったようだ。
“Israel admits air attack on Syria” Al Jazeera [2007.10.2]
http://english.aljazeera.net/NR/exeres/6DA7E774-C34E-4E3A-87EB-929260D7D292.htm
●騒ぎになったのは10月半ばになってから。米国で核施設だとの報道が相次いだから。Bush政権が意図的に流した可能性は高い。しかし、議会側からのコメント要求には応じようとはしない。


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