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2008.1.9 |
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ミサイル防衛をどう考えるべきか…2007年12月、ミッドコース段階の弾道ミサイルの弾頭を、洋上の自衛隊のイージス艦から発射したSM-3が破壊した。ただならぬ軍事能力を見せつけた試験と言える。(1)これに対する反応といえば、ただただ大喜びするだけの人と、これまた無視を決め込む人の、両極端が目立つ。まともな議論はまずもって無理なようだ。 それにしても、技術の進歩は著しいものがある。正直のところ、ここまで早くこんなことが実現できるとは、思わなかった。 ブースター切り離し後の、小さな弾頭を直撃して破壊したのだ。 とてつもない高精度な制御が可能になったということ。赤外線センサーによる標的捕捉・識別とそれに対応した姿勢制御能力が飛躍的に向上した訳だ。コンピュータ性能向上と、それを活用した航空力学的ソフトの工夫だけでは、とても無理だから、ハードとそれを直接制御するソフト部分で日本企業が頑張ったに違いない。 国土防衛のためとなれば、底力がでるということかも知れぬ。 1999年から始まった日米共同技術研究(2)の成果である。 だが、米国からすれば、そんなことより、ロシア・中国に対するデモンストレーション効果が嬉しかった筈。日本の米軍基地への先制攻撃回避能力を誇示できたからだ。(3)東アジアでの、米軍の支配的な地位が続くということ。 従って、日米軍事同盟強化には相当寄与したのは間違いなが、日本本土の防衛能力が高まったとは言い難い。 日本国内の主要機能は拠点に集中しているから、弾道ミサイル迎撃試験に成功したからといって、防衛できるとは思えないからだ。 複数弾頭や衛星軌道にのせることで迎撃を回避するとか、発射ミサイル数を増やせば簡単に防衛網を突破できるという話ではない。すでに「巡航ミサイル」時代に入っているからである。 トマホークを見ればわかるように、巡航ミサイルは地上すれすれに飛ぶこともできるから、遠距離からレーダーで捕捉しにくく、対空砲火網を構築しない限り防ぐのは至難のわざだと思う。 しかも、こちらは安価だ。 隣国が、東京を標的にして数百本を配備していてもおかしくない。 この脅威から防衛するにはどうすべきかが、緊要なのではないかと思うが。 厄介なことに、巡航ミサイル技術は拡散一方。要素技術で見れば、GPS/慣性誘導と地形相関評価装置を搭載した無人の小型ジェット機にすぎない。レベルを問わなければ、作るのが難しい兵器ではない。そのため、そこらじゅうの国がこのミサイルを保有している。核爆弾がなくても、化学・生物兵器が搭載されるだけで皆殺し兵器になるから、この脅威を過小評価するのは危険である。 それに、ソ連時代のトマホーク模倣兵器が、ウクライナから流出したと言われている。(4)従って、イランを通じて北朝鮮にこの技術が流れ込んでいてもおかしくないのである。 米国にとっては、本土への脅威は、潜水艦発射巡航ミサイルだけだから、ほとんど気にかけないだろうが、北東アジアのような狭い地域では、各国に巡航ミサイル配備が広がれば、地域は一気に不安定化しかねない。 そんなこともあるからだろうか、ミサイル技輸出規制の枠組み(5)だけは出来上がった。だが、インド、パキスタン、イスラエル、イラン、北朝鮮は未加盟。これでは、効果のほどは疑問。 実際、世界の大国を目指す韓国は、東京や北京をカバーする「玄武3」を開発したそうだし、(6)台湾も、上海から香港までを射程内に収めることができる「Hsiung Feng(雄風) 2E(7)」を完成したようだ。 台湾がこの巡航ミサイルを本格配備でも始めたりすれば、人民解放軍の体質からして、動かずにいられなくなる。台湾海峡に一気に緊張が走ることになろう。(8)配備予算が否決され、今のところ落ち着いてはいるが。(9) 北京オリンピックと上海万博までは、中国共産党は現状の安定を最優先するだろうが、その後はどうなるかわからない。 もともと、人民解放軍は毛沢東の軍隊。国家から独立した存在であり、常に権力闘争の中心にいる。この組織が今後どう動くか、じっくり考えておくべきだろう。 --- 参照 --- (1) “「こんごう」SM-3発射試験後の日米共同記者会見における江渡防衛副大臣演説(仮訳) http://www.mod.go.jp/j/news/2007/12/18a.pdf” “Japan/U.S. Missile Defense Flight Test Successful” MDA [2007.12.17] http://www.mda.mil/mdalink/pdf/07news0053.pdf (2) 「防衛白書 2005年度」“ 第3章第1節1項 米国のミサイル防衛と日米BMD協力など” http://jda-clearing.jda.go.jp/hakusho_data/2005/2005/html/17311300.html (3) 米国ミサイル防衛庁戦略関係担当副長官: “弾道ミサイル防衛”[U.S. Foreign Policy Agenda 2002年7月号 仮訳] http://tokyo.usembassy.gov/j/p/tpj-j20030530d2.html 注: 中国,北朝鮮から米国本土へのミサイル飛翔コースは,日本上空を通過しない. (4) “Iran, China reportedly got Ukraine missiles Nuclear-capable weapons have the range to reach U.S. allies” NBC News(msnbc) [2005.3.18] http://www.msnbc.msn.com/id/7229637/ (5) 外務省: 「ミサイル技術管理レジーム」 [2007.11] http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/mtcr/mtcr.html (6) キム・ミンソク(軍事専門記者): 「1500キロの巡航ミサイル開発推進」 中央日報 [2007.11.10] http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=92749&servcode=400§code=400 (7) Wendell Minnick: “Taiwan produces three LACM prototypes” JDW [2006.1.10] http://www.janes.com/security/international_security/news/jdw/jdw060110_1_n.shtml [globalsecurity.org] http://www.globalsecurity.org/military/world/taiwan/hf-2.htm (8) David Lague: “Taiwan develops missiles designed to reach targets in China”International Herald Tribune [2007.9.28] http://www.iht.com/articles/2007/09/28/asia/taiwan.php (9) Wendell Minnick: “Taiwan President Denies Nuclear Weapons Research” DefenseNews [2007.10.9] http://www.defensenews.com/story.php?F=3144179&C=asiapac (毛沢東時代の位置付け) ぶ厚い筑摩叢書,松岡洋子訳「中国の赤い星」を読んだ覚えはあるが,農民軍の迫力以外の内容はすでに忘却のかなた.毛沢東からすれば,日本による植民地化失敗を願う欧米向けのプロパガンダという位置付けだった可能性が高いが,この本以外に毛沢東の肉声を感じさせる本はない.この本のなかで,毛沢東は,中国の植民地だった朝鮮は中国に含まれず,台湾も同様と語っているそうだ.一方,中国人も住んでいる内モンゴルは,自治国を目指す訳だ.--- しかし,植民地闘争の時代が終わると,大国ロシアとインドとの対立が主軸におかれる.ポルポト政権支援と称しソ連圏と目されたベトナム侵攻に踏み切った位だ. (ICBMの写真) [Wikipedia] Minuteman3launch.jpg http://en.wikipedia.org/wiki/Image:Minuteman3launch.jpg 政治への発言の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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