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2008.4.14
 
 


中国の労働市場が変わる…

 2008年の春節を目前に、中国は50年ぶりの大雪。交通は完全に麻痺。
 それでも、都市に働きに出ていた人達が、なんとしても故郷に戻ろうと駅にあふれかえった。そのため、温家宝首相自が、湖南省長沙駅頭にたち、で万全の対策をとると帰省客に語りかけねばならなくなった。(1)
 こんなことを2ヶ月もたっても忘れられないのは、趙紫陽首相の天安門登場の姿とダブったせいでもある。
確か、当時は、首相側近として、学生との交渉窓口を勤めていた筈。
 中国民衆の故郷への思いの強さに驚かされたが、それ以上に驚いたのは、指導部がここまで動く必要がある重大問題でありことを示した点。

 天安門とは違い政治的自由問題ではなく、今度は、労働場問題に直面していると言えそうである。
 中国は早くも、時代の転換点を迎えたということ。

 わかり易く言えば、沿海部の労働集約型産業が変身を迫られているということである。
 低労賃の労働力は無尽蔵ではなくなってしまったのである。農村における余剰労働力は言われているほどではないらしいのだ。人口動態上からそうならざるを得ないようだ。
 こうなると、対応には、2つのオプションしかなさそうである。

 1つ目は、内陸部への工場移転。
 2つ目は、労働集約型から、高付加価値型への転換。

 さあ、中国指導部はどうするつもりか、などと、他人事を言っている訳にはいかない。
 この流れにあわせて日本企業も動かざるを得ないということ。(中国のデータは素人には手がおえないから、包括的にまとめたレポート(2)に目を通しておかれることをお勧めする。)

 ともかく、先進国の生活水準に達する前に、老齢人口が重たくのしかかるのが見えている。2010年代初頭には生産人口の減少が始まると見てよいらしい。
 労働力不足で成長が止まるということだ。

 この状況下でも、巨大国家全体の政治的安定を考えれば、政策課題は以下の優先順位になるのではないか。

(1) 未だに地方では人口約4割が第一次産業労働者。
  この労働力を、第二次、第三次に移行させる。
  (産業構造の改革を進める。)
(2) 都市部失業者発生を抑えるために、再雇用促進と雇用拡大を図る。
  (かつてのようなレイオフ発生を阻止する。)
(3) 大卒の就職浪人の求人状況を改善する。

 おそらく、大卒の就職浪人問題は一番後回しになると思う。
 だが、これは、ただならぬことではないか。
 大卒者をとんでもないスピードで増産してきたのはよいが、需要を大幅に上回ってしまったのである。就職率は公式データでは7割程度らしいが、実感では5割という人も多い。それに、すでに、“16〜35歳のニート人口が約1,216万(3.2%)”に達したとか。
 今後数年で、供給過剰は大問題化せざるを得ないということでもあろう。

 海外から見れば、この余剰労働力を利用しない手はなかろう。

 --- 参照 ---
(1) 温家宝首相、雪害対応で湖南省を視察 China Radio International [2008.1.30]
  http://japanese.cri.cn/151/2008/01/30/1@111553.htm
(2)日本総合研究所[日銀外部委託]:「中国労働市場における労働力移動と 需給ミスマッチの現状と展望」2008年2月
  http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/itaku0804a.pdf
(地図) http://www.freemap.jp/index.html


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