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2008.9.8
 
 


日本の農業問題を考える[3]…

 高齢者が増え、維持が難しくなってきた農業集落が増えているということで、限界集落とか、崩壊集落という用語を見かけることが多くなった。そんなことは、昔からわかっていた話。政治家のせいにしたがるが、農民自らが選んだ道である。水田面積も耕作者も膨大な過剰なのに、票田の力で、合理化阻止・現状維持要求をすれば、どうなるかわかりそうなものだ。

 誰が考えても、離農者を増やしながら、残った農家収入を増やす、微妙なバランス策以外に手段はなかろう。
 そのため、農家援助の仕組みを利用した無駄なビジネスが大発生している訳だ。耕作者より、その支援セクターで食べている人の方が多いと揶揄される状況なのである。しかも、流通業にまで、この非合理的仕組みを浸透させてしまったから始末が悪い。まともな経営者が損をする仕組みができあがりかねないからだ。それでも、たいして気にかけなかったのは、経済発展の牽引車たる産業が意気軒昂だったからにすぎない。社会が安定しているなら、その程度のコストはかまわないと見なしたのである。

 くどいが、日本の農業政策とは産業政策ではなく、集落維持を図る福祉政策だった。ところが、これがついに限界点を迎えた。国力が落ちてしまったからである。

稲作農家戸数推移
1960年 527万戸
1980年 383万戸
2005年 196万戸
[営農] 138万戸
 間違えて欲しくないが、集落維持と言っても、限界集落問題を重大問題視している訳ではない。そのような集落は、都市から遠いところで、素人の当て推量だが、多くても、稲作農家の1割程度である。ただ、日本は山国だから、国土面積からすれば、その数倍に当たるかも知れぬが、消えれば、開墾地が自然に帰っていくだけ。残念な話だが、当事者がその道を回避しようと動かないのだから、いかんともしがたい。
 それよりも問題なのは、大半の水田の方である。すでに、田舎のお墓の都会への移転が始まっているらしいから、集落が有名無実化する可能性がでてきたようである。ここでの問題は、給与所得者と生計を共にする自称農家に、その認識が薄いこと。今後も、なんとかやっていけると考えているようなのだ。今迄も、低収入層が次々と廃業していったように、さらに農家が減るだけと考えてしまいがちなのである。

〜 稲作農家として揃えたい設備 〜
家屋 車庫
農機具類・諸工具・資材保管庫
農機具メインテナンス作業場
籾乾燥精米工場
米用倉庫
車輌 小型トラック
[小型キャタピラー運搬車]
小型3輪荷物運搬車(トップカー)
作業用
(準備)
耕運機(トラクター)
小型耕運機(ティラー)
作業用
(栽培)
田植え機
草刈機
作業用
(収穫)
稲刈・脱穀機(コンバイン)
作業用
(後処理)
リフト
籾乾燥機
籾摺機/選別機(グレーダー)
石抜機
計量機
玄米低温貯蔵庫
精米機
 しかし、おそらく、そうはならない。耕作農家が減るため、“兼業農家・高齢者・中山間地向け”農機具の廉価な補修サービスが成り立たなくなるからだ。(もともと、日本の農業機械は、驚くほど多様な専用機械があるので有名だが、一番の特徴はモデル数がとんでもなく多い点。農家の投資は少なくないのである。)
 もともと、資本効率を上げる経営などしていないから、耕作経費が上昇するとたちどころに、持ち出しになりかねない。そこまでして、耕作を続ける人はいまい。つまり、今まで揃えてきた機械の寿命と共に、耕作は止めるということである。
 この結果、集落は、廃田や委託栽培田だらけになる。これだけ聞けば、表面上は、現在の延長上。しかし、現実には、他地域から耕作者が入ってくることを意味する。今までの農耕ルールは無視され、集落内での諍いも頻発するだろう。耕作者の仕事に合わせて行われてきた地域行事は全廃するしかなかろう。その結果、集落としての一体感は喪失する。集落に住んでいる意義が失われれるから、移転者は増えよう。そして、集落のインフラ維持は難しくなっていく。

 今のままなら、このような集落衰退シナリオしか描きようがないと思う。そして、集落維持政策が不要となる。
 稲作農家は、この道を歩むつもりなのだろうか。コレが日本の農業問題である。

 --- 参照 ---
(地図記号のイラスト) (C) Free-Icon http://free-icon.org/index.html


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